ジャン=リュック・ナンシー
ジャン=リュック・ナンシー(2006年) | |
生誕 |
1940年7月26日 フランス ジロンド県コーデラン(現ボルドーの一地区) |
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死没 |
2021年8月23日(81歳没) フランス ストラスブール |
出身校 | ソルボンヌ大学 |
研究分野 | 哲学 |
ジャン=リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy、1940年7月26日 - 2021年8月23日[1])は、フランスの哲学者[2]。1973年に出版されたナンシーの最初の著書は、フランスの精神分析学者ジャック・ラカンの作品を読み解いた『文字の資格』(Le titre de la lettre)で、フィリップ・ラクー=ラバルトとの共著である。ヘーゲルに関する1973年の『思弁的注解』(La remarque spéculative)など、多くの思想家に関する著作がある。カントについては『失神のディスクール』(Le discours de la syncope, 1976年)、L'Impératif catégorique(1983年)、デカルトについては 『エゴ・スム』(Ego sum, 1979年)、ハイデガーについては『声の分割』(Le partage des voix, 1982年)がある。
ナンシーは Le titre de la lettre 以外にも、いくつかの著書や論文でラクー=ラバルトと共同研究を行っている。またナンシーが論文「無為の共同体」(La communauté désoeuvrée)を1983年に発表したことにより、ブランショがこれに応えて『明かしえぬ共同体』を発表。アガンベンが『到来する共同体』(1990年)で両者に反論し、これらは共同体と政治の地盤の問題を再び開く手助けをしたと評価されている。ジャック・デリダが現代の哲学者について書いた数少ない単行学術論文の一つに『触覚、ジャン=リュック・ナンシーに触れる』がある[3]。
生涯
[編集]フランス南西部ジロンド県コーデラン(現ボルドーの一地区)出身[4]。ジャック・デリダとその脱構築の手法の強い影響を受けつつ独自の哲学を展開しており、いわゆるポスト構造主義以降のフランス現代思想の重要人物の一人と目されている。ラクー=ラバルトやジャン=クリストフ・バイイらとの共同研究でも知られる。
主な著作
[編集]単著
[編集]- La Remarque spéculative (Un bon mot de Hegel) (1973)
- Le Discours de la syncope (1975)
- Ego sum (1979)
- Le Partage des voix (1982)
- La communauté désoeuvrée (1983)
- L'Impératif catégorique (1983)
- Hypnoses, en collaboration avec Éric Michaud et Mikkel Borch-Jacobsen (1984)
- L'oubli de la philosophie (1986)
- 大西雅一郎訳『哲学の忘却』(松籟社, 2000年)
- Des lieux divins (1987)
- L'expérience de la liberté (1988)
- Cahiers confrontation 20(1989)
- Une Pensée Finie (1990)
- Le poids d'une pensée (1991)
- Corpus (1992)
- 大西雅一郎訳『共同-体(コルプス)』(松籟社, 1996年)
- Le sens du monde (1993)
- The birth to presence (1993)
- Les Muses (1994)
- Être singulier pluriel (1996)
- 加藤恵介訳『複数にして単数の存在』(松籟社, 2005年)
- Hegel. L'inquiétude du négatif (1997)
- L'Intrus (2000)
- 西谷修訳編『侵入者――いま「生命」はどこに?』(以文社, 2000年)
- Le regard du portrait (2000)
- La pensée dérobée (2001)
- L'Evidence du film (2001)
- 上田和彦訳『映画の明らかさ――アッバス・キアロスタミ』(松籟社, 2004年)
- Visitation (2001)
- 西山達也訳『訪問――イメージと記憶をめぐって』(松籟社, 2003年)
- La création du monde ou la mondialisation (2002)
- Au fond des images (2003)
- 西山達也・大道寺玲央訳『イメージの奥底で』(以文社, 2006年)
- Noli me tangere (2003)
- 荻野厚志訳『私に触れるな――ノリ・メ・タンゲレ』(未來社, 2006年)
- Chroniques philosophiques (2004)
- 大西雅一郎訳『哲学的クロニクル』(現代企画室, 2005年)
- La déclosion (2005)
- Tombe de sommeil (2007)
- Maurice Blanchot, passion politique, Paris, Galilée (2011)
- 安原伸一朗訳『モーリス・ブランショ:政治的パッション』(水声社〈批評の小径〉, 2020年)ISBN 978-4-8010-0486-3
- Identité: fragments, franchises,Galilée, (2010)
- 伊藤潤一郎訳『アイデンティティ:断片、率直さ』(水声社〈批評の小径〉, 2021年)ISBN 978-4-8010-0544-0
- Un trop humain virus, Bayard, (2020)
- 伊藤潤一郎訳『あまりに人間的なウイルス:COVID-19の哲学』(勁草書房, 2021年)ISBN 978-4-326-15478-4
- La vérité du mensonge, Bayard, (2021)
- 柿並良佑訳『嘘の真理』(講談社選書メチエ, 2024年)ISBN 978-4-06-534715-7
共著
[編集]- La titre de la lettre (1973) (フィリップ・ラクー=ラバルトと共著)
- L'absolu littéraire. Théorie de la littérature du romantisme allemand (1978) (フィリップ・ラクー=ラバルトと共著) 柿並良佑・大久保歩・加藤健司訳『文学的絶対 ドイツ・ロマン主義の文学理論』(法政大学出版局、2023年)ISBN 978-4-588-01163-4
- Le mythe nazi (1991)
- 守中高明訳『ナチ神話』(松籟社, 2002年) フィリップ・ラクー=ラバルトと共著
- La comparution (politique à venir) (1991)
- 大西雅一郎・松下彩子訳『共出現』(松籟社, 2002年) ジャン=クリストフ・バイイと共著
- Nus sommes. La peau des images (2003) (フェデリコ・フェラーリと共著)
- Iconographie de l'auteur (2005)
- 林好雄訳『作者の図像学』(筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2008年) フェデリコ・フェラーリと共著
脚注
[編集]- ^ “Le philosophe Jean-Luc Nancy est décédé”. DNA. 2021年8月24日閲覧。
- ^ “com/news/jean-luc-nancy-1940-2021-86406 Jean-Luc Nancy (1940-2021)” (日本語). Artforum (25 August 2021). 2021年8月26日閲覧。
- ^ Derrida, Jacques (2005). On Touching, Jean-Luc Nancy. Stanford University Press. ISBN 9780804742436
- ^ Léon Strauss (2017年9月19日). “NANCY Jean-Luc, Roland, Louis” (フランス語). maitron.fr. Maitron. 2020年5月21日閲覧。
関連書籍
[編集]- ジャン=リュック・ナンシー 特集 水声通信 No.10 (水声社 2006年)
- 「特集=ジャン=リュック・ナンシーの哲学の拍動(責任編集=西山雄二、柿並良佑)」『人文学報. フランス文学』第513-15号、首都大学東京人文科学研究科、2017年。
- 西山雄二「はじめに」『人文学報. フランス文学』第513-15巻、2017年3月、1-3頁、hdl:10748/00009012。「Article特集:ジャン=リュック・ナンシーの哲学の拍動」