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スカボロー・フェア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スカボロ・フェアから転送)

スカボロー・フェア』(Scarborough Fair)はイギリスの伝統的バラッドである。

この歌は、スカーバラ(スカボロー)の市(フェア)で、聴き手に昔の恋人への伝言を頼むという形式を取っており、「縫い目のないシャツ」を作ったり、それを「乾いた井戸で洗う」など、一連の不可能な仕事を成し遂げてくれれば、再び恋人になれるだろうと歌っている。

『スカボロー・フェア』の歌詞はバラッド『エルフィンナイト[1]に共通したものが見られ、これは1670年頃に遡る。18世紀末には現在の『スカボロー・フェア』とほぼ同様の歌詞が記録されているが[2]、「スカーバラの市」に言及するバージョンの最古の例は1883年のものである[3]。古いバージョンでは伝言形式ではなく、そのため地名に対する言及もないものや、伝言形式であっても他の地名に言及しているものが見られる(ウィッティンガムの市、ケープアン、"twixt Berwik and Lyne" など)[4]

歌詞

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セシル・シャープ編曲のスカボロー・フェア(1916年)。

歌詞には多くのバージョンが存在する。以下は男性と女性のデュエット向けの歌詞の一例である。

歌詞
BOTH

Are you going to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Remember me to one who lives there,
For she once was a true love of mine.

MAN

Tell her to make me a cambric shirt,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Without no seam nor fine needlework,
And then she'll be a true love of mine.

Tell her to wash it in yonder dry well,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Which never sprung water nor rain ever fell,
And then she'll be a true love of mine.

Tell her to dry it on yonder thorn,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Which never bore blossom since Adam was born,
And then she'll be a true love of mine.

Ask her to do me this courtesy,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
And ask for a like favour from me,
And then she'll be a true love of mine.

BOTH

Have you been to Scarborough Fair?
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Remember me from one who lives there,
For he once was a true love of mine.

WOMAN

Ask him to find me an acre of land,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Between the salt water and the sea strand,
For then he'll be a true love of mine.

Ask him to plough it with a sheep's horn,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
And sow it all over with one peppercorn,
For then he'll be a true love of mine.

Ask him to reap it with a sickle of leather,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
And gather it up with a rope made of heather,
For then he'll be a true love of mine.

When he has done and finished his work,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Ask him to come for his cambric shirt,
For then he'll be a true love of mine.

BOTH

If you say that you can't, then I shall reply,
Parsley, sage, rosemary and thyme,
Oh, Let me know that at least you will try,
Or you'll never be a true love of mine.

両方

スカーバラの市へ行くのかい?
パセリセージローズマリータイム
そこに住むある人によろしく言ってくれ、
彼女はかつての恋人だったから。

カンブリックのシャツを作れと伝えてくれ、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
縫い目も細かい針仕事もなしで、
そうしたら彼女は私の恋人。

あの涸れた井戸でそれを洗えと伝えてくれ、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
そこは水も湧かなければ雨も降った事もない、
そうしたら彼女は私の恋人。

そこのイバラでそれを乾かせと伝えてくれ、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
それにはアダムが生まれて以来花が咲いた事がない、
そうしたら彼女は私の恋人。

この親切をしてくれるように頼んでくれ、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
そして私に同じような願い事をするように、
そうしたら彼女は私の恋人。

両方

スカーバラの市へ行ったことがあるかしら?
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
そこに住むある人によろしく言って、
彼はかつての恋人だったから。

1エーカーの土地を見つけるよう言って、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
海水と波打ち際の間に、
そうしたら彼は私の恋人。

羊の角でそこを耕すよう言って、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
それから一面コショウの実を蒔けと、
そうしたら彼は私の恋人。

革のでそれを刈るよう言って、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
それからヒースのロープでまとめろと、
そうしたら彼は私の恋人。

彼がそれをやってできたのなら、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
カンブリックのシャツを取りに来るよう言って、
そのとき彼が恋人になるから。

両方

できないと言うのなら、私はこう答える、
パセリ、セージ、ローズマリーにタイム、
ああ、せめてやってみると知らせてくれ、
でなければあなたは決して恋人ではない。

リフレイン

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"Parsley, sage, rosemary, and thyme" というリフレインは、古いものではジョセフ・リトソンの Gammer Gurton's Garland (1783 or 1784) に収録されている ”The cambrick shirt" [2]に既に見られるが、これとは異なる多くのバージョンが存在する。

  • Sweet savory grows, rosemary and thyme[5]
  • Saffron, sage, rue, myrrh, and thyme[6]
  • Sober and grave grows merry in time[7]
  • Every rose springs merry in' t' time[8]
  • Let ev’ry rose grow merry in time[9]

これらは通常 "And then (s)he’ll be a true love of mine" ないしこれに類する句と対にされる。

旋律

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フランク・キッドソンの Traditional Tunes (1891) [10]には2種類の『スカボロー・フェア』の楽譜が収録されているが、いずれも現在良く知られているものとは全く異なる陽気でユーモラスなメロディである。

サイモン&ガーファンクルの演奏などで有名な『スカボロー・フェア』のメロディは、イワン・マッコールとペギー・シーガー(Ewan MacColl & Peggy Seeger)による Matching Songs of the British Isles and America (1957) に収録されているものに由来する[11]。これは1947年に「ヨークシャーのミドルトン・イン・ティーズデールの元鉛鉱夫のマーク・アンダーソン」(p. 109) から教わったものだとされる。しかしその歌詞は僅かな変更を除いてはキッドソン版を丸ごと借用している[4]

サイモン&ガーファンクル版

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サイモン&ガーファンクル1966年のアルバム『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に収録された「スカボロー・フェア/詠唱(Scarborough Fair / Canticle)」[12]は、「スカボロー・フェア」を基に、ポール・サイモン作の反戦歌「ザ・サイド・オブ・ア・ヒル」より引用した歌詞を加え[13] 、主にアート・ガーファンクルが作曲した新しいメロディをつけた[14][15]「詠唱」を対位法的に重ねている。サイモンは渡英した際にマーティン・カーシーからこの曲のことを知って気に入り、これにアレンジを加えてリリースした。1967年の映画『卒業』の挿入歌として用いられ、世界的に有名になった。サイモン&ガーファンクルのヴァージョンはBillboard Hot 100で11位を記録した[16]

脚注

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  1. ^ Child, Francis James (1882). The English and Scottish popular ballads. Boston: Houghton, Mifflin and Co. Part 1, p.15.
  2. ^ a b Ritson, Joseph. Gammer Gurton's garland: or, the nursery Parnassus. London: Printed for R. Triphook by Harding and Wright, 1810. Pts. 1-2, collected and edited by J. Ritson, were first published in 1783 or 4 under title as above. Pts. 3-4, newly added in this edition, are material collected by F. Douce.
  3. ^ Leeds Mercury (25.8.1883, Local Notes and Queries CCXLI).
  4. ^ a b Kloss, Jürgen (2012). "...Tell Her To Make Me A Cambric Shirt": From The "Elfin Knight" to "Scarborough Fair".
  5. ^ "The humours of love". Madden Ballads 2 (1780?).
  6. ^ The Scots magazine and Edinburgh literary miscellany. vol. 69, pt. 2 (1807).
  7. ^ "Lord John". Kinloch MSS, I, 75. From Mary Barr.
  8. ^ Findlay, William (1869). "METRICAL RIDDLE". Notes & Queries. 4th Ser., Vol. 3, p. 605.
  9. ^ "AMERICAN VERSIONS OF THE BALLAD OF THE ELFIN KNIGHT". Journal of American Folklore. Vol.7, No.26, 1894.
  10. ^ https://imslp.org/wiki/Traditional_Tunes_(Kidson,_Frank)
  11. ^ the Balladeers, Ewan MacColl & Peggy Seeger - Matching Songs of the British Isles and America
  12. ^ 原題の「canticle」は「頌歌(しょうか)」を意味し(『最新明解英和辞典』 三省堂 1967年33版)、「詠唱」の和訳は、正確には原義と異なる。頌歌とは、徳や手柄を賛美する歌(三省堂国語辞典 1967年64版)、または聖句に節を付けたもの(『最新明解英和辞典』 三省堂 1967年33版)を言う。
  13. ^ Song and Lyrics, Scarborough Fair/Canticle”. Paul Simon. Sony Music Entertainment. 10 July 2016閲覧。
  14. ^ Humphries, Patrick (2003年). “Scarborough Fair”. Sold on Song. BBC. 16 April 2012閲覧。
  15. ^ Bennighof, James (2007). The Words and Music of Paul Simon. Greenwood Publishing Group. pp. 21–24. ISBN 9780275991630. https://books.google.com/books?id=ShBhKL-9SLIC&pg=PA21 19 June 2015閲覧。 
  16. ^ Simon & Garfunkel”. Billboard. 2023年1月18日閲覧。

外部リンク

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