ストリッカーツ評価
ストリッカーツ評価 (ストリッカーツひょうか、英:Strichartz estimate) とは、分散型および双曲型偏微分方程式の解の時空間ノルムを評価する不等式である[1]。
分散型・双曲型偏微分方程式の現代的な数学解析においてもっとも基本的かつ必要不可欠な道具であり、あらゆる場面で用いられる。
歴史
[編集]シュレーディンガー方程式に対するストリッカーツ評価は、Robert_Strichartz[2]が最初に与えた。オリジナルの論文では、d次元空間内のフーリエ変換を(d-1)次元(超)曲面上へ制限することで評価を得ている。その後、Ginibre--Velo[3][4], Yajima[5], Cazenave--Weissler[6]らによって改良された。最後のピースである、所謂「端点評価」を証明したのはKeel--Tao[7]である。端点評価は空間2次元において破綻するが、Taoはノルムを補正することで同様の評価が与えられることを示した[8]。
自由シュレーディンガー方程式の場合
[編集]許容指数対
[編集]実数の組が許容指数対であるとは、次が成り立つことである: ただし、は除外する。
自由シュレーディンガー方程式に対するストリッカーツ評価
[編集]次の自由シュレーディンガー方程式を考える:
ここではラプラシアンである。初期値がであれば、解は
と書ける。このとき、ある定数があって、任意の許容指数対に対して、次の不等式が成立する[9]:
ここで、である。
空間2次元の端点評価
[編集]空間2次元の場合の端点指数は除かれていた。しかし、次のように右辺のノルム(=抑えるノルム)を弱めることで、同様の評価が成り立つ[10]:
ここで、である。また、は許容指数対である。特に、が球対称関数のとき、であることに注意せよ。
一般化
[編集]直交ストリッカーツ評価
[編集]三角不等式と通常のストリッカーツ評価から、直ちに次のことが分かる。許容指数対と正規化されたL²関数の列に対して、
が成り立つ。しかし実は、が正規直交系である場合、不等式は次のように改良されることが知られている[11][12]:かつとするとき、
が成り立つ。右辺のノルムがからになっているところがポイントである。a<bのときであることに注意せよ。
ポテンシャルがついたシュレーディンガー方程式の場合
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時間に依存しないポテンシャルの場合
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時間に依存するポテンシャルの場合
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変数係数のシュレーディンガー方程式の場合
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波動方程式の場合
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日本語の関連文献
[編集]- 小川卓克『非線型発展方程式の実解析的方法』丸善出版〈シュプリンガー現代数学シリーズ〉、2013年。国立国会図書館書誌ID:024182041。
- 堤誉志雄『偏微分方程式論 : 基礎から展開へ』培風館〈数学レクチャーノート ; 基礎編 3〉、2004年。国立国会図書館書誌ID:000007376517 。
- BEZ NEAL; HONG YOUNGHUN; LEE SANGHYUK; 中村昌平; 澤野嘉宏「滑らかさを加味した直交ストリッカーツ評価 (関数空間の一般化とその周辺)」『数理解析研究所講究録』第2143巻、京都大学数理解析研究所、2019年12月、173-184頁、CRID 1050285700355872512、hdl:2433/254981、ISSN 1880-2818。
脚注
[編集]- ^ R.S. Strichartz (1977), “Restriction of Fourier Transform to Quadratic Surfaces and Decay of Solutions of Wave Equations”, Duke Math. J. 44 (3): 705–713, doi:10.1215/s0012-7094-77-04430-1
- ^ Strichartz, Robert S. (1977-09-01). “Restrictions of Fourier transforms to quadratic surfaces and decay of solutions of wave equations”. Duke Mathematical Journal 44 (3). doi:10.1215/S0012-7094-77-04430-1. ISSN 0012-7094 .
- ^ Ginibre, J.; Velo, G. (1979-04-01). “On a class of nonlinear Schrödinger equations. I. The Cauchy problem, general case”. Journal of Functional Analysis 32 (1): 1–32. doi:10.1016/0022-1236(79)90076-4. ISSN 0022-1236 .
- ^ Ginibre, J.; Velo, G. (1979-04-01). “On a class of nonlinear Schrödinger equations. II. Scattering theory, general case”. Journal of Functional Analysis 32 (1): 33–71. doi:10.1016/0022-1236(79)90077-6. ISSN 0022-1236 .
- ^ Yajima, Kenji (1987-01). “Existence of solutions for Schrödinger evolution equations”. Communications in Mathematical Physics 110 (3): 415–426. ISSN 0010-3616 .
- ^ Cazenave, Thierry; Weissler, Fred B. (1990-01-01). “The cauchy problem for the critical nonlinear Schrödinger equation in Hs”. Nonlinear Analysis: Theory, Methods & Applications 14 (10): 807–836. doi:10.1016/0362-546X(90)90023-A. ISSN 0362-546X .
- ^ Keel, Markus; Tao, Terence (1998). “Endpoint Strichartz Estimates”. American Journal of Mathematics 120 (5): 955–980. ISSN 0002-9327 .
- ^ Tao, Terence (1999-01). “Spherically Averaged Endpoint Strichartz Estimates For The TwoDimensional Schrödinger Equation” (英語). Communications in Partial Differential Equations 25 (7-8): 1471–1485. doi:10.1080/03605300008821556. ISSN 0360-5302 .
- ^ 『非線型発展方程式の実解析的方法』丸善出版、2013年1月1日。
- ^ Tao, Terence (1999-01). “Spherically Averaged Endpoint Strichartz Estimates For The TwoDimensional Schrödinger Equation” (英語). Communications in Partial Differential Equations 25 (7-8): 1471–1485. doi:10.1080/03605300008821556. ISSN 0360-5302 .
- ^ Frank, Rupert L.; Sabin, Julien (2017). “Restriction theorems for orthonormal functions, Strichartz inequalities, and uniform Sobolev estimates”. American Journal of Mathematics 139 (6): 1649–1691. doi:10.1353/ajm.2017.0041. ISSN 1080-6377 .
- ^ Frank, Rupert; Lewin, Mathieu; Lieb, Elliott; Seiringer, Robert (2014). “Strichartz inequality for orthonormal functions”. Journal of the European Mathematical Society 16 (7): 1507–1526. doi:10.4171/jems/467 .