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ズソウカンアオイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ズソウカンアオイ
静岡県伊豆市 2020年1月 
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
: カンアオイ属 Asarum
: オトメアオイ A. savatieri
亜種 : ズソウカンアオイ
A. s subsp. pseudosavatieri
学名
Asarum savatieri (Franch.) F.Maek. subsp. pseudosavatieri (F.Maek.) T.Sugaw. var. pseudosavatieri (F.Maek.) T.Sugaw. [1]
シノニム
  • Heterotropa savatieri (Franch.) F.Maek. subsp. pseudosavatieri (F.Maek.) T.Sugaw.[2]
  • Heterotropa pseudosavatieri (F.Maek.) F.Maek.[3]
  • Asarum pseudosavatieri F.Maek[4]
和名
ズソウカンアオイ(豆相寒葵)[5][6][7]

ズソウカンアオイ(豆相寒葵、学名: Asarum savatieri subsp. pseudosavatieri)は、ウマノスズクサ科カンアオイ属常緑多年草オトメアオイ(乙女葵、学名: A. savatieri)を基本種とする亜種[5][6][8][9][10]

特徴

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本亜種は、オトメアオイを基本種とする亜種であるため、他のカンアオイ属と異なる特徴として、開花と普通葉が1年おきに交代して形成される。また植物体もオトメアオイによく似る。葉身は卵形または三角状卵形で、長さ6-11cm、幅5-8cmになり、基部は心形になる。の表面は光沢がなく、短毛が散生し、しばしば雲紋状の斑が入る[6]

花期は10-11月で、は翌年まで残り、子房が成熟し結実する。花に花弁は無く、裂片が花弁状になる。花は小型で地に伏して咲く。萼筒は褐色または緑褐色を呈し、筒形で縦に長く、長さ7-11mm、径10-12mmになる。萼筒内壁には縦横に隆起した襞が発達するが、基本種と比べれば複雑にはならず比較的規則的で格子状になる。萼裂片は三角状卵形で、萼筒より短く長さ5-9mmになり、表面はなめらかで、カンアオイ A. nipponicum のように多数の毛はない。雄蕊は12個、花柱は6個ある[5][8][6][10][11]

なお、萼筒の形態についての表現は文献により微妙に異なり、前川文夫 (1933)は「萼筒ノ上部狭クシテ括レアル」[7]、菅原敬 (1985)は、萼筒は一般にカップ形状で、上部でくびれたり、わずかにくびれたりしない(英文)[11]、菅原敬 (2015)は「萼筒は筒形で上部がくびれることはなく」[6]としている。

分布と生育環境

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日本固有種[9]。本州の静岡県東部の伊豆半島中部の低山地と神奈川県南西部の西丹沢に分布し[8][9][10]、広葉樹林の林床に生育する[6]。基本種のオトメアオイとは、静岡県東部および神奈川県西部と分布域が重なっているようにみえるがその区域ははっきりと異なる[11]

名前の由来

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和名ズソウカンアオイは、「豆相寒葵」の意で、「豆相」は産地の伊豆地方の「豆」と相模地方の「相」に基づく[6]。前川文夫 (1932)による命名である[4][11]

亜種名 pseudosavatieri は、pseudo-savatieri の意味であり、pseudo- は「~に似た」の意味、-savatieri は本亜種の基本種であるオトメアオイの種小名であり、明治初年に横須賀製鉄所に在任したフランス人の医師で、日本の植物を採集したリュドヴィク・サヴァティエ献名されたものの意味である[12]。この場合 pseudosavatieri は、「オトメアオイに似た」の意味となる。前川 (1932)が伊豆の修善寺産の標本に基づいて新種 Heterotropa pseudosavatieri を記載発表した際の種小名(種形容語)であり[4]、菅原敬 (1985)が独立種からオトメアオイを基本種とする亜種に階級移動した際に、そのまま亜種名になった[2][11]

種の保全状況評価

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準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

(2017年、環境省)

  • 2000年版レッドデータブックまでは絶滅危惧II類(VU)。

ギャラリー

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下位分類

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  • イセノカンアオイ(伊勢の寒葵)Asarum savatieri (Franch.) F.Maek. subsp. pseudosavatieri (F.Maek.) T.Sugaw. var. iseanum T.Sugaw.[13] - ズソウカンアオイによく似るが、萼筒の長さが5-8mmと短く、一方で萼裂片が長い。花柱の付属突起がより長くなる。紀伊半島東部の伊勢周辺に分布する[8]。伊勢市神路山で採集されたものがタイプ標本となっている[13]

脚注

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  1. ^ ズソウカンアオイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b ズソウカンアオイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ ズソウカンアオイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ a b c ズソウカンアオイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ a b c 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.22
  6. ^ a b c d e f g 『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ(増補改訂新版)』p.377
  7. ^ a b 前川文夫「日本産かんあふひ類解説(其七)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第9巻第8号、津村研究所、1933年、505-512頁、doi:10.51033/jjapbot.9_8_1292 
  8. ^ a b c d 『改訂新版 日本の野生植物 1』p.68
  9. ^ a b c 『日本の固有植物』pp.60-62
  10. ^ a b c 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.162
  11. ^ a b c d e 菅原 敬「ズソウカンアオイ及びその近縁種について」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第60巻第7号、津村研究所、1985年、202-212頁、doi:10.51033/jjapbot.60_7_7757 
  12. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1512
  13. ^ a b イセノカンアオイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献

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外部リンク

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