コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

セルバーグゼータ函数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

セルバーグゼータ函数(Selberg zeta-function)は、アトル・セルバーグAtle Selberg (1956) により導入された。有名なリーマンゼータ函数

の類似で、ここに 素数集合を表す。セルバーグゼータ函数は、素数の代わりに単純な閉測地線の長さを使う。 を SL(2,R) の部分群とすると、セルバーグゼータ函数は次のように定義される。

あるいは、

ここに p は素な合同類全体を渡り、 N(p) は合同類 p のノルムで、p のより大きい固有値の二乗である。

有限領域を持つ双曲曲面に対して、セルバーグゼータ函数が付帯している。この函数は複素平面上の有理型函数である。このゼータ函数は、曲面上の閉じた測地線の言葉で定義される。

セルバーグゼータ函数 Z(s) のゼロ点と極は、曲面のスペクトルのデータの言葉で記述することができる。

ゼロ点は次のような点である。

  1. 固有値 を持つ全てのカスプ形式に対し、点 にゼロ点を持つ。ゼロ点のオーダーは、対応する固有空間の次元に等しい。(カスプ形式とは、定数項がゼロのフーリエ展開を持つラプラス・ベルトラミ作用素の固有函数である。)
  2. ゼータ函数は散乱行列 の行列式の全ての極でゼロ点を持つ。ゼロ点のオーダーは、散乱行列の対応する極のオーダーに等しい。

ゼータ函数は、 で極をもち、点 で、極、もしくはゼロ点を持つ。

伊原のゼータ函数は、セルバーグゼータ函数の p-進類似(グラフ理論的な類似)と考えられている。

モジュラ群のセルバーグゼータ函数

[編集]

モジュラ群として、曲面が である場合には、セルバーグゼータ函数は、特に興味が持たれる。この特別な場合は、セルバーグゼータ函数が密接にリーマンゼータ函数と結びついているからである。

この場合は、散乱行列の行列式が次で与えられる。

特に、リーマンゼータ函数が でゼロ点を持つと、散乱行列の行列式は で極をもつので、セルバーグゼータ函数は でゼロ点を持つ。

参考文献

[編集]
  • Fischer, Jürgen (1987), An approach to the Selberg trace formula via the Selberg zeta-function, Lecture Notes in Mathematics, 1253, Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/BFb0077696, ISBN 978-3-540-15208-8, MR892317 
  • Hejhal, Dennis A. (1976), The Selberg trace formula for PSL(2,R). Vol. I, Lecture Notes in Mathematics, Vol. 548, 548, Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/BFb0079608, MR0439755 
  • Hejhal, Dennis A. (1983), The Selberg trace formula for PSL(2,R). Vol. 2, Lecture Notes in Mathematics, 1001, Berlin, New York: Springer-Verlag, doi:10.1007/BFb0061302, ISBN 978-3-540-12323-1, MR711197 
  • Iwaniec, H. Spectral methods of automorphic forms, American Mathematical Society, second edition, 2002.
  • Selberg, Atle (1956), “Harmonic analysis and discontinuous groups in weakly symmetric Riemannian spaces with applications to Dirichlet series”, J. Indian Math. Soc. (N.S.) 20: 47–87, MR0088511 
  • Venkov, A. B. Spectral theory of automorphic functions. Proc. Steklov. Inst. Math, 1982.
  • Sunada, T., L-functions in geometry and some applications, Proc. Taniguchi Symp. 1985, "Curvature and Topology of Riemannian Manifolds", Springer Lect. Note in Math. 1201(1986), 266-284.