ソドムを去るロトとその家族
英語: The Flight of Lot and His Family from Sodom | |
作者 | ヤーコプ・ヨルダーンスに帰属 |
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製作年 | 1618-1620年ごろ |
種類 | キャンバス上に油彩 |
寸法 | 169.5 cm × 198.5 cm (66.7 in × 78.1 in) |
所蔵 | 国立西洋美術館、東京 |
『ソドムを去るロトとその家族』(ソドムをさるロトとそのかぞく、英: The Flight of Lot and His Family from Sodom)は、フランドルのバロック期の画家ヤーコプ・ヨルダーンスに帰属される作品である。1618-1620年ごろ、キャンバス上に油彩で制作された。『旧約聖書』の「創世記」 (18章16-19) に記述されているロトにまつわる物語を主題としている。1613-1615年に制作されたピーテル・パウル・ルーベンスの『ソドムを去るロトとその家族』 (ジョン・アンド・メイブル・リングリング美術館、サラソータ (フロリダ州)) にもとづいている[1][2]。1978年に購入されて以来、東京の国立西洋美術館に所蔵されている[1][2]。
主題
[編集]「創世記」の記述によると、ソドムとゴモラの町は悪徳と淫乱に満ちていた。ロトが移り住んでいたソドムは男色がはびこっていたため、神はゴモラとともに滅ぼそうとした。それを聞いたアブラハムはロトを救うために必死で神と交渉する。神は、ソドムを滅ぼす前に2人の天使を派遣して、様子を見ることにした[3]。
ロトに歓待された天使たちは、彼に神がソドムを滅ぼそうとしているので、すぐ脱出しなくてはならないことを告げる。そして、ロトとその妻、娘たちに脱出する際、決して後ろを振り返ってはならないと忠告した。ロットの家族がソドムを去ると、神は硫黄と火をソドムとゴモラに降らせ、2つの町を焼き尽くした[3]。この時、ロトの妻だけは後ろを振り返ってしまったので、塩の柱となってしまう[3]。ロトと2人の娘たちは山の洞窟に身を寄せ、なんとか生き延びることができた。その後、ロトの娘たちは子孫が絶えることを危惧して、それぞれ父親を酔わせて交わり、彼の子供を産んだ[3]。
作品
[編集]本作は、2人の天使に付き添われ、滅亡するソドムの町から脱出するロトとその家族を表している[1][2]。画面中央のロトの傍らでは年老いた妻が涙を拭っているが、塩の柱に変えられる彼女の運命を暗示しているのかもしれない。ロト夫妻の後ろ側には、運び出した家財を運ぶ娘たちが従っている[1]
本作は、ながらくルーベンスの作品、あるいはルーベンスの工房作であると考えられていた[2]。作品を所蔵する国立西洋美術館は1993年に「ソドムを去るロトとその家族-ルーベンスと工房」と題した企画展を開催したが、その際、本作をサイズと構図が微妙に異なるほかの類似作3点のうち2点 (ジョン・アンド・メイブル・リングリング美術館、およびバース美術館所蔵) といっしょに展示し、綿密な調査を行った[1][2]。そして、ジョン・アンド・メイブル・リングリング美術館の作品をルーベンスのオリジナル、バース美術館の作品をそれにもとづく工房作と見なすにいたった[1]。国立西洋美術館の本作はバース美術館の作品にもとづく自由な複製と見られ[1]、逞しい肉体表現と冷たい薄黄色の使用を根拠にルーベンスの若き協力者であったヨルダーンスの手になると推測される[1][2]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 『国立西洋美術館名作選』、国立西洋美術館、2016年刊行 ISBN 978-4-907442-13-2
- 大島力『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年刊行 ISBN 978-4-418-13223-2