ソファ問題
L字型の通路をとおすことができる、ソファの面積の最大値は? |
ソファ問題(ソファもんだい)は数学の問題のひとつ。1966年にレオ・モーザーによって問題が提示された。この問題は「L字型の通路を通り抜けることができる、ソファの面積の最大値 A を求めよ」という離散幾何学、数学パズルの問題である。
A の下界と上界
[編集]下界
[編集]通路の幅が1であるとき、半径1の半円はL字型の通路を通すことができるので、Aの下界の一つとして が容易に得られる。
1968年にジョン・ハマーズレイはより優れたAの下界の一つを発見した[1]。 の長方形の両脇に半径1の四分円を接合させた図形から、直径 の半円をくりぬいた受話器型のソファで、(オンライン整数列大辞典の数列 A086118)となる[2][3]。
1992年にラトガース大学のジョセフ・ガーバー (Joseph L. Gerver) [注釈 1]によって、18の線(3の直線と15の曲線)からなる図形により、さらに優れたAの下界の一つ 2.21953166887...(オンライン整数列大辞典の数列 A128463)が示された[4]。
上界
[編集]一方、A の上界については、ハマーズレイによる簡単な議論によって高々 であることが示されていた[5][6]。
2017年6月に Yoav Kallus とダン・ロミックは新しい上界として、2.37を証明している[7]。
両手利きのソファ
[編集]この問題の変種の一つとして、単位幅の通路の途中にある直角の右折と左折の両方を通過できるようなソファの面積の最大値を求める問題がある(つまり、途中にまず右折があり、その後十分な距離をおいて左折があるような一本道を想定している)。ロミックは18の曲線からなる図形によって、
(オンライン整数列大辞典の数列 A330934)という下界を示した[8]。
解決
[編集]2024年11月29日、韓国・延世大学校の博士研究員であるペク・ジノン(백진언; 白眞言)によって、ソファ問題を解決したとする論文が arXiv に投稿された。本論文によれば、ガーバーによる例が実際に最大値を与えるとされている[9]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 作家の en:Joseph R. Garber とは別人である。
出典
[編集]- ^ J. M. Hammersley (1968). “On the enfeeblement of mathematical skills by 'Modern Mathematics' and by similar soft intellectual trash in schools and universities”. Bulletin of the Institute of Mathematics and Its Applications 4: 66–85 . Appendix IV, Problems, Problem 8, p. 84を参照。
- ^ Croft, Hallard T.; Falconer, Kenneth J.; Guy, Richard K. (1994). Hamos, Paul R.. ed. Unsolved Problems in Geometry. Problem Books in Mathematics; Unsolved Problems in Intuitive Mathematics. II. Springer-Verlag. ISBN 978-0-387-97506-1 24 April 2013閲覧。
- ^ Moving Sofa Constant by Steven Finch at MathSoft, includes a diagram of Gerver's sofa
- ^ Gerver, Joseph L. (1992). “On Moving a Sofa Around a Corner”. Geometriae Dedicata 42 (3): 267–283. doi:10.1007/BF02414066. ISSN 0046-5755.
- ^ Wagner, Neal R. (1976). “The Sofa Problem”. The American Mathematical Monthly 83 (3): 188–189. doi:10.2307/2977022. JSTOR 2977022 .
- ^ Stewart, Ian (January 2004). Another Fine Math You've Got Me Into.... Mineola, N.Y.: Dover Publications. ISBN 0486431819 24 April 2013閲覧。
- ^ Kallus, Yoav; Romik, Dan (December 2018). “Improved upper bounds in the moving sofa problem”. Advances in Mathematics 340: 960–982. arXiv:1706.06630. doi:10.1016/j.aim.2018.10.022. ISSN 0001-8708.
- ^ Romik, Dan (2017). “Differential equations and exact solutions in the moving sofa problem”. Experimental Mathematics 26 (2): 316–330. arXiv:1606.08111. doi:10.1080/10586458.2016.1270858.
- ^ Baek, Jineon (29 November 2024). "Optimality of Gerver's Sofa". arXiv:2411.19826 [math.MG]。
外部リンク
[編集]- Romik, Dan. “The moving sofa problem”. Dan Romik's home page. University of California, Davis. 2024年12月10日閲覧。
- Weisstein, Eric W. "Moving Sofa Problem". mathworld.wolfram.com (英語).