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タイランチョウ亜目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タイランチョウ亜目/亜鳴禽亜目
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
亜目 : タイランチョウ亜目 Tyranni
シノニム

Suboscines
Deutero-Oscines
Oligomyodi sensu stricto

下目

タイランチョウ亜目(タイランチョウあもく、学名 Tyranni)は、スズメ目の亜目である。狭義と広義があるが、ここでは、亜鳴禽類(あめいきんるい)Suboscines、亜鳴禽亜目、非鳴禽亜目、非スズメ亜目、Deutero-OscinesOligomyod とも呼ばれる広義の系統について述べる。

広義のタイランチョウ亜目は、スズメ亜目イワサザイ亜目と並ぶスズメ目の3亜目の1つである。1000種以上を含むが、スズメ目全体の5000種以上(そのほとんどはスズメ亜目)に比べればごく一部である。日本にはヤイロチョウ1種のみが生息する。

特徴

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鳴管筋、脚筋、鐙骨の特長により、他の亜目と区別される。

系統と分類

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系統樹

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カマドドリ下目内は Moyle et al. 2009[1]、タイランチョウ下目内は Tello et al. 2009[2]による。

スズメ目

イワサザイ亜目

タイランチョウ亜目
旧世界亜鳴禽類
ヒロハシ下目

ヒロハシ科 Eurylaimidae

ヤイロチョウ科 Pittidae

新世界亜鳴禽類
タイランチョウ下目

マイコドリ科 Pipridae

カザリドリ科 Cotingidae

ハグロドリ科 Tityridae

タイランチョウ科 Tyrannidae

カマドドリ下目
アリドリ小目

アリドリ科 Thamnophilidae

ムナオビオタテドリ科 Melanopareiidae

アリサザイ科 Conopophagidae

カマドドリ小目
ジアリドリ上科

ジアリドリ科 Grallariidae

オタテドリ科 Rhinocryptidae

カマドドリ上科

アリツグミ科 Formicariidae

カマドドリ科 Furnariidae

スズメ亜目

上位分類

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タイランチョウ亜目はスズメ目の3亜目の1つで、姉妹群スズメ亜目である。

古くはタイランチョウ亜目にイワサザイ科 Acanthisittidae (別名 コビトサザイ科 Xenicidae)を含める説があったが、現在は単独でイワサザイ亜目 Acanthisitti を構成する。

タイランチョウ亜目をタイランチョウ目 Tyranniformes としてスズメ目から分離する(イワサザイ科は残す)分類もあった (Feduccia 1977)[3]

この項でのタイランチョウ亜目を1つの分類群として認めず分割する説もあった。Pycraft (1907)[4]は、ヒロハシ科(・マミヤイロチョウ科)・カザリドリ科マイコドリ科をヒロハシ亜目 Eurylaimi として分離した。Ames (1971)[5]はヒロハシ科(・マミヤイロチョウ科)を、その原始的な特徴から、ヒロハシ亜目 Eurylaimi として分離した。

下位分類

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亜目~上科の高位分類については、名称と階級に諸説があるが、ここでは Moyle et al. 2009[1]を基準とした。科は国際鳥類学会議 (IOC)[6]による。

タイランチョウ亜目は新世界亜鳴禽類 (英語: New World suboscines) と旧世界鳴禽類(Old World suboscines) に分かれる。新世界亜鳴禽類は中南米(一部は北米)に住み、旧世界亜鳴禽類はユーラシアアフリカオーストラリア(1種は中米)に住む。新世界亜鳴禽類は約1100種、旧世界亜鳴禽類は約50種で、種数的にはほとんどの種は中南米にすむ。

旧世界鳴禽類にはヒロハシ下目のみ、新世界亜鳴禽類にはタイランチョウ下目とカマドドリ下目の2下目が属す。ただし新世界亜鳴禽類全体をタイランチョウ下目とする説もある。

カマドドリ下目はアリドリ小目・カマドドリ小目の2小目と、小目に属さない2科からなる。Sibley et al. はこの2科をカマドドリ小目に含めていたが、単系統性が不確実で分離された。

高位分類には混乱があり、同じ系統が別の名・別の階級で呼ばれるのみならず、別の系統が同じ名で呼ばれることもある。以下にいくつかの文献で見られる用例を示す。なお、訳語を確定できない部分は××で埋めた。

階層 Moyle et al. 2008 ToL 2007[7] Chesser 2004[8] Sibley et al. 1988[9] Raikow 1987[10] Sibley et al. 1982[11] Cracraft 1981[12]
- タイランチョウ亜目
Tyranni
××亜目
Oligomyodi
**** タイランチョウ亜目
Tyranni
亜鳴禽類
Suboscines
××亜目
Oligomyodi
タイランチョウ下目
Tyrannides
タイランチョウ亜目
Tyranni
*** ヒロハシ下目
Eurylaimides
ヒロハシ××
Eurylaimides
ヤイロチョウ亜目
Pitti
ヒロハシ下目
Eurylaimides
ヤイロチョウ下目
Pitti
ヤイロチョウ小目
Pittae
** ヒロハシ上科
Eurylaimoidea
ヒロハシ下目
Eurylaimi
** ヤイロチョウ上科
Pittoidea
ヤイロチョウ下目
Pitti
*** タイランチョウ××
Tyrannides
タイランチョウ下目
Tyrannides
タイランチョウ小目
Tyranni
** タイランチョウ下目
Tyrannides
タイランチョウ××
Tyranni
タイランチョウ亜目
Tyranni
タイランチョウ小目
Tyrannida
タイランチョウ下目
Tyranni
タイランチョウ上科
Tyrannoidea
タイランチョウ下目
Tyrannomorpha
** カマドドリ下目
Furnariides
カマドドリ××
Furnarii
カマドドリ亜目
Furnarii
カマドドリ下目
Furnarii
カマドドリ上科
Furnarioidea
カマドドリ下目
Furnarii
* アリドリ小目
Thamanophilida
アリドリ小目
Thamanophiida
* カマドドリ小目
Furnariida
カマドドリ小目
Furnariida

それぞれの分類の特徴は以下のとおり。

Cracraft はヒロハシ下目を2つの下目に分割していた。

Sibley et al. は1985年、Oligomyodi を亜目として採用した。これは、現在のタイランチョウ亜目+イワサザイ亜目(表の1列目、この列のみ非単系統)に対し Furbringer 1888 が名づけた名称である。現在のタイランチョウ亜目はタイランチョウ下目として含めた。1988年には、現在のタイランチョウ亜目に当てられていたタイランチョウ下目を廃止し、名称と階級を変更した。いずれにおいても、新世界亜鳴禽類と旧世界亜鳴禽類に対となる分類階級を与えている。彼ら (1988) は新世界亜鳴禽類をタイランチョウ下目とし、タイランチョウ小目・アリドリ小目・カマドドリ小目の3小目に分けたが、そのうちカマドドリ小目は厳密には、アリサザイ科とムナオビオタテドリ科を含むため現在のカマドドリ小目と同じではなく単系統性は不確実である。

Raikow は Moyle et al. に似ているが、名称が異なっていた。彼は現在のタイランチョウ亜目を Oligomyodi と呼んだ。

Chesser は、3つの下目を亜目に上げた。ただし、亜鳴禽類を3亜目に分ける分類は新しくはなく、古くからあった分類である[13]

Tree of Life web project (ToL) は、Chesser と Sibley et al. を併用したような体系をしている。ToLは分類階級を使わないため階級は××とした。

脚注

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  1. ^ a b Moyle, Robert G.; Chesser, R. Terry; et al. (2009), “Phylogeny and phylogenetic classification of the antbirds, ovenbirds, woodcreepers, and allies (Aves: Passeriformes: infraorder Furnariides)”, Cladistics 25: 1–20, doi:10.1111/j.1096-0031.2009.00259.x 
  2. ^ Tello, Jose G.; Moyle, Robert G.; et al., “Phylogeny and phylogenetic classification of the tyrant flycatchers, cotingas, manakins, and their allies (Aves: Tyrannides)”, Cladistics 25 (5): Pages 429–467, doi:10.1111/j.1096-0031.2009.00254.x 
  3. ^ Feduccia, A. (1977), “A model for the evolution of perching birds”, Syst. Zool. 26: 19–31 
  4. ^ Pycraft, W.P. (1907), Tyranni; Hiturines; Muscicapoe; Lanii; and Gymnorhines, “Contributions to the osteology of birds. Part IX”, Proc. Zool. Soc. Lond.: 352-379 
  5. ^ Ames, P.L. (1971), “The morphology of the syrinx in passerine birds”, Bull. Peabody Mus. Nat. Hist. 37: 1–194 
  6. ^ Gill, Frank; Donsker, David, eds. (2012), “names-fam-links.html”, IOC World Bird Names, version 2.11, オリジナルの2011年7月24日時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110724190710/http://www.worldbirdnames.org/names-fam-links.html 
  7. ^ Harshman, John (2007), “Suboscines”, Tree of Life web project, http://tolweb.org/Suboscines/26445 
  8. ^ Chesser, R. Terry (2004), Molecular systematics of New World suboscine birds, 32, p. 11–24, doi:10.1016/j.ympev.2003.11.015, https://doi.org/10.1016/j.ympev.2003.11.015 
  9. ^ Sibley, Charles G.; Ahlquist, Jon E.; Monroe Jr., Burt L. (1988), “A classification of the living birds of the world based on DNA-DNA hybridization studies”, Auk 105 (3): 409–423, doi:10.1093/auk/105.3.409, https://doi.org/10.1093/auk/105.3.409 
  10. ^ Raikow, Robert J. (1987), Hindlimb myology and evolution of the old world suboscine passerine birds (Acanthisittidae, Pittidae, Philepittidae, Eurylaimidae), Ornithological Monographs No. 41, The American Ornithologists' Union, ISBN 0943610516, http://elibrary.unm.edu/sora/om/om041.pdf 
  11. ^ Sibley, Charles. G.; Williams, Gordon R.; Ahlquist, Jon E. (1982), “The relationships of the New Zealand wrens (Acanthisittidae) as indicated by DNA-DNA hybridisation”, Notornis 29: 113–130, hdl:10182/461, https://hdl.handle.net/10182/461 
  12. ^ Cracraft, Joel (1981), “Toward a Phylogenetic Classification of the Recent Birds of the World (Class Aves)”, Auk 98 (4): 681–714, doi:10.1093/auk/98.4.681, https://doi.org/10.1093/auk/98.4.681 
  13. ^ 森岡弘之 (2006), “鳥綱”, in 松井正文, 脊椎動物の多様性と系統, バイオディバーシティ・シリーズ 7, 裳華房, ISBN 4-7853-5830-0 

関連項目

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