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タクシー (アルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『タクシー』
ブライアン・フェリースタジオ・アルバム
リリース
録音 1992年-1993年
イングランドの旗 ロンドン マトリックス・スタジオ、スタジオ・ワン
時間
レーベル イギリスの旗 ヴァージン・レコード
アメリカ合衆国の旗 リプリーズ・レコード
プロデュース ブライアン・フェリー、ロビン・トロワー
ブライアン・フェリー アルバム 年表
アルティメイト・コレクション
(1988年)
タクシー
(1993年)
マムーナ
(1994年)
テンプレートを表示

タクシー』(Taxi)は、イングランドロックミュージシャンブライアン・フェリー1994年に発表した8作目のソロ・アルバムである[1][注釈 1]

解説

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経緯

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フェリーは前作『ベイト・ノワール』発表後、1988年から1989年にかけて、ロキシー・ミュージックの最後のツアー以来になる約5年ぶりのツアーを行なった[2]。その後、新作の製作に取り掛かり、デジタル録音と64トラックの録音技術の虜になった。妻ルーシーの兄弟でジャーナリストのエドワード・ヘルモア[注釈 2]は次のように語っている[3]

珍しいことに、彼は実際にはスタジオで曲を書く。レコーディングの為に曲を書き上げて持って来るのではなく、スタジオでコラージュのように曲の断片を繋ぎ合わせる、そして何人もの素晴らしいセッション・ミュージシャンに演奏してもらい、その名人芸に合わせて編曲し直す。

フェリーは一流のミュージシャンを多数迎えて、このような複雑な作業過程を各曲毎に繰り返すので、誰のどの演奏がどの部分に最適なのかを決める時間は増える一方だった。彼は『ベイト・ノワール』の製作の直前にそれまでの15年間のマネージャーだったマーク・フェンウィックと決別し[4]、当時はマネージャーがいないに等しい状況にあった[3]。そして共同プロデューサーも持たずに、一人でアルバムの構想を膨らませて壮大なレコーディングを続けていき、制作を遅延させていった[5]。私生活では1990年に妻ルーシーが薬物とアルコールの依存症に陥って2年間に及ぶ治療プログラムに入り、1991年には母親が病死した[5]。アルバムの製作が長引くなかで、彼は不眠症の治療の為にハルシオンを服用し始めた[6]

こうして1992年に発表する予定だった新作『ホロスコープ』の制作は行き詰まった[注釈 3]。彼はルーシーの提案を受け入れて、暫定的な企画としてアナログの録音機材を用いて手間をかけずにカバー集を制作することにした[7]

彼はBBC Radio 1ジョニー・ウォーカーに次のように語った[8]

古い曲は出発点だ。真っ新なカンヴァスからではなく、既にそこに存在するものから出発する。そこに存在する情報から欲しいものを取り出せる。元の歌詞を使うのは勿論だが、少し手を加えて自分により良いものにできる。旋律も同じだ。

内容

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共同プロデュ―サーにはロビン・トロワーが起用された。トロワーはフェリーにもっと直接的な方法を採ることを勧め、彼が「音楽、特に演奏について白黒はっきりした見方を持てるようにした」。「我々は作業が終了するまで新鮮な気持ちを保てるように、全工程をできるだけ短くしようと決めた。彼はより簡素なアルバムを作ろうと、24トラックの録音に限定することにした」[7]。フェリーは自分のホーム・スタジオでデモ録音を作成し、ロンドンのマトリックス・スタジオでレコーディングを行なった[7]

選曲はスクリーミン・ジェイ・ホーキンズの「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」、シュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」などのブラック・ミュージックヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「オール・トゥモロウズ・パーティーズ」、エルヴィス・プレスリーが1960年に取り上げた「ザ・ガール・オブ・マイ・ベスト・フレンド」、広く歌われてきた讃美歌アメイジング・グレイス」など多岐に渡った[1]。同じくカバー集だったアルバム『アナザー・タイム、アナザー・プレイス (いつかどこかで)』(1974年)と同じように、オリジナルの新曲が1曲収録された。

本作は1993年3月に発表されて全英アルバムチャートで最高位2位を記録し、同年2月に発表された「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」のシングル[9]は全英シングルチャートで18位を記録し、フェリーは『トップ・オブ・ザ・ポップス』に出演した。

収録曲

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#タイトル作詞・作曲オリジナル・参加ミュージシャン時間
1.「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー(I Put a Spell on You)」Screamin' Jay Hawkinsスクリーミン・ジェイ・ホーキンズ、シングル(1956年)
2.ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー(Will You Love Me Tomorrow)」Gerry Goffin, Carole Kingシュレルズ、シングル(1960年)
  • Bryan Ferry - piano and syth
  • Robin Trower - guitar
  • Neil Hubbard - guitar
  • Michael Brook - guitar
  • Steve Pearce - bass
  • Nathan East - bass
  • Greg Phillinganes - synth
  • Steve Ferrone - drums
  • Richard T. Norris - programming
3.「アンサー・ミー(Answer Me)」Gerhard Winkler, Fred Rauc, Carl Sigmanフランキー・レイン、シングル(1953年)
  • Bryan Ferry - keyboards
  • Carleen Anderson - vocals
  • Robin Trower - guitar
  • Neil Hubbard - guitar
  • David Williams - guitar
  • Nathan East - bass
  • Macco Parker - alto sax
  • Steve Ferrone - drums
  • Richard T. Norris - programming
4.ジャスト・ワン・ルック(Just One Look)」Doris Payne, Gregory Carrollドリス・トロイ、シングル(1963年)
  • Bryan Ferry - piano and strings
  • Carleen Anderson - vocals
  • Neil Hubbard - guitar
  • Robin Trower - guitar
  • Nathan East - bass
  • Chris Stainton - organ
  • Greg Phillinganes - synth
  • Steve Ferrone - drums
  • Luís Jardim - percussion
  • Richard T. Norris - programming
5.「レスキュー・ミー(Rescue Me)」Raynard Miner, Carl Smithフォンテラ・バス、シングル(1965年)
  • Bryan Ferry - piano and strings
  • Carleen Anderson - vocals
  • Robin Trower - guitar
  • Michael Brook - guitar
  • Nathan East - bass
  • Mel Collins - tenor sax
  • Steve Ferrone - drums
  • Luis Jardim - percussion
  • Richard T. Norris - programming
6.「オール・トゥモロウズ・パーティーズ(All Tomorrow's Parties)」Lou Reedヴェルヴェット・アンダーグラウンド、アルバム『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』(1967年)
  • Bryan Ferry - piano, organ and strings
  • Carleen Anderson - vocals
  • Neil Hubbard - guitar
  • David Williams - guitar
  • Michael Brook - guitar
  • Nathan East - bass
  • Greg Phillinganes - synth
  • Steve Ferrone - drums
  • Luis Jardim - percussion
7.「ガール・オブ・マイ・ベスト・フレンド(The Girl of My Best Friend)」Ross Butler, en:Sam Bobrick❘Sam Bobrickエルヴィス・プレスリー、アルバム『エルヴィス・イズ・バック』(1960年)
  • Bryan Ferry - piano and organ
  • Robin Trower - guitar
  • Neil Hubbard - guitar
  • David Williams - guitar
  • Nathan East - bass
  • Greg Phillinganes - synth
  • Steve Ferrone - drums
8.アメイジング・グレース(Amazing Grace)」John Newton讃美歌
  • Bryan Ferry - piano
  • Carleen Anderson - vocals
  • Neil Hubbard - guitar
  • David Williams - guitar
  • Michael Brook - guitar
  • Nathan East - bass
  • Greg Phillinganes - synth
  • David Sancious - organ
  • Flaco Jimenez - accordion
  • Steve Ferrone - drums
9.「タクシー(Taxi)」Homer Banks, Charles BrooksJ. ブラックフット、シングル(1983年)
  • Bryan Ferry - piano and strings
  • Carleen Anderson - vocals
  • Robin Trower - guitar
  • Neil Hubbard - guitar
  • David Williams - guitar
  • Nathan East - bass
  • Andy Mackey - alto sax
  • Andy Newmark - drums
  • Steve Ferrone - drums
  • Mike Giles - drums
  • Richard T. Norris - programming
10.「ビコーズ・ユー・アー・マイン(Because You're Mine)」Ferry本作
  • Bryan Ferry - piano and strings
  • Carleen Anderson - vocals
  • Robin Trower - guitar
  • Michael Brook - guitar
合計時間:

参加メンバー

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※参加ミュージシャンは上記『収録曲』を参照。

  • Produced by Bryan Ferry and Robin Trower
  • Photography by Anton Corbjin
  • Design by Nick De Ville and Bryan Ferry

脚注

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注釈

[編集]
  1. ^ "For Mary Ann Ferry 1909-1991"と記載されている。
  2. ^ Edward Helmore。ガーディアンオブザーバーの寄稿者。
  3. ^ 『ホロスコープ』は1994年に『マムーナ』として発表された。のべ6年の歳月が費やされ112人ものミュージシャンが参加した。

出典

[編集]
  1. ^ a b Buckley (2004), pp. 270–272.
  2. ^ Buckley (2004), p. 266.
  3. ^ a b Buckley (2004), p. 267.
  4. ^ Buckley (2004), p. 263.
  5. ^ a b Buckley (2004), pp. 267–268.
  6. ^ Buckley (2004), p. 269.
  7. ^ a b c Buckley (2004), p. 270.
  8. ^ Buckley (2004), p. 271.
  9. ^ Discogs”. 2024年12月14日閲覧。

引用文献

[編集]
  • Buckley, David (2004). The Thrill of It All: The Story of Bryan Ferry & Roxy Music. London: Andre Deutsch. ISBN 0-233-05113-9