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ダミー人形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ダミー人形の3次元モデル

ダミー人形(ダミーにんぎょう、Crash test dummy)は、実物大の擬人テスト装置である。この装置は人体の形状・体重・動きを模した人体模型で、乗り物の衝突実験のデータを取るのに用いられる[1]。このデータは速度の強さ、加速度トルク、姿勢などを変えることで、テストにおける衝撃の変化を測ることができる。自動車から飛行機までさまざまなタイプの乗り物に対応したダミー人形がある。

また、学校や地域などの交通安全教室においては、スケアードストレート技法[注釈 1]の一環として、ダミー人形が用いられた例もある[3][4]

工業を専門としたウェブサイト「MONOist」の三島一孝は2019年の記事の中で、シミュレーション技術の発展によってダミー人形による試験回数を減らそうという動きが出ているとしつつも、ヒューマネティクス・イノベーティブ・ソリューションズ・ジャパン テクニカルセンター長の岩村卓哉の「[前略]新たな車種の開発時や法規制の変更時などが多く需要には波がある市場だが、全体的に試験回数は減少傾向にある。ただ一方で、衝突試験は必ず行わなければならないので需要はゼロにはならない。さらに、1度の衝突試験でより多くのデータを取得しようというニーズは高まっており、センサーの設置数を増やすなど、ダミー人形そのものの高度化は今後も進んでいく」という意見を紹介している[5]。自動車専門のウェブサイト「WEB CARTOP」の近藤暁史も2021年の記事の中で、コンピュータを用いたシミュレーションで使うデータはダミー人形による実験を通じて得られるため、2021年現在においてもダミー人形によるテストが行われていると述べている[6]

歴史

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ダミー人形の一種であるハイブリッドIIIは、男性モデルだけでなく、女性や子供のモデルもある

ダミー人形は、第二次世界大戦における軍事開発の中で発明された[7]。 かつてはアメリカ空軍が1949年に開発した身長180cm[注釈 2]のダミー人形が民間でも使われていたため、シートベルトが女性に適合しないなどの問題があったことから[8]、現代では複数のサイズを使い分けている[1]。 2021年の時点において、日本における衝突実験では海外から輸入したダミー人形が用いられている一方、日本のダミー人形メーカーもわずかながら存在する[6]。 その後ハイブリッドIIIという改良型が登場するが、このダミーは正面衝突を研究するために開発されたため、後面や側面など別の方向からの衝突や、横転英語版が人体に与える衝撃の観察には不向きだったため、後に側突用のダミー人形が登場した。

種類

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チャイルドシートに座ったCRABI(生後12か月モデル)

ダミー人形の値段や体格はメーカーによってさまざまである[9]。ベースだけでも1000万~3000万円するモデルがある一方で、車にはねられる様子を観察したり、シートに長時間座らせて変形を観察する目的で使うモデルは最低で数万円程度である[9]。 さらに、子ども型のダミー人形は子ども特有の関節の動き方を再現する必要があるため、成人型のダミー人形とは別物として開発される[10]

また、耐用回数もテスト内容によって異なる[9]

以下に挙げる人型ダミー人形以外にも、動物型のダミー人形も存在している[11]

ユーロNCAPで使われる側突用のダミー・WorldSID 。
THOR
  • SID (サイド・インパクト・ダミー、英名:Side Impact Dummy):側突用のダミー人形[7]
  • BioRID:後面衝突を観察するために開発されたダミー人形[7]
  • CRABI:子ども型のダミー人形。生後6か月、生後12か月、生後18か月の3種類が存在する。
  • FGOA (first generation obese anthropometric):肥満体型の人間を模したダミー人形[12]
  • THOR :前突衝突試験用の成人男性型ダミー人形[5][7]。ハイブリッドIIIよりも、より現実の人間に近いデザインとなっていることに加え、より多くの計測チャンネル、検定試験項目の設定ができる[5]


脚注

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注釈

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  1. ^ スタントマンによる事故の実演を通じて、学習者に恐怖感を与える手法[2]
  2. ^ 日本の自動車専門ニュースサイト「くるくら」では、このダミー人形の身長は175cmとされている[7]

出典

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  1. ^ a b 衝突安全性能評価”. 自動車事故対策機構. 2021年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月14日閲覧。
  2. ^ スケアードストレート
  3. ^ 交通事故の恐怖をスタントで体感、逗子高校で安全教室/神奈川 | 社会”. カナロコ. 神奈川新聞 (2012年10月25日). 2021年9月15日閲覧。
  4. ^ スタントマンが事故再現 千葉高で交通安全教室 JA共済”. www.chibanippo.co.jp (2014年5月29日). 2021年9月15日閲覧。
  5. ^ a b c シミュレーション全盛時代に衝突試験用ダミー人形はどう変わっていくのか”. MONOist (2019年5月23日). 2021年9月18日閲覧。
  6. ^ a b 近藤暁史 (2021年3月30日). “人間のため毎日毎日クラッシュ三昧! 1体ウン千万円のダミー人形の「プロフィール」とは”. WEB CARTOP. 交通タイムス社. 2021年9月15日閲覧。
  7. ^ a b c d e 衝突実験で目にするダミー人形。どんな目に遭っても頑張る彼らの秘密に迫る!【人とくるまのテクノロジー展】ダミー人形編(1/2)”. kurukura.jp. 株式会社JAFメディアワークス (2019年5月29日). 2021年9月18日閲覧。
  8. ^ 芳, 山口 (2018年12月5日). ““脂肪が減る薬”!?研究が前進した意外なきっかけ”. NHK. pp. 事例2:自動車のシートベルト. 2018年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月15日閲覧。
  9. ^ a b c 近藤暁史 (2021年3月30日). “人間のため毎日毎日クラッシュ三昧! 1体ウン千万円のダミー人形の「プロフィール」とは(2ページ目)”. WEB CARTOP. 交通タイムス社. 2021年9月15日閲覧。
  10. ^ 衝突実験で目にするダミー人形。どんな目に遭っても頑張る彼らの秘密に迫る!【人とくるまのテクノロジー展】ダミー人形編(2/2)”. くるくら. 株式会社JAFメディアワークス (2019年5月29日). 2021年9月18日閲覧。
  11. ^ Donchey, Sarah (25 November 2015). “New crash tests help keep dogs safe in cars”. Click 2 Houston. 2016年8月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月18日閲覧。
  12. ^ Hamed Joodaki, Jason Forman, Ali Forghani, Brian Overby, Richard Kent, Jeff Crandall, Breanna Beahlen, Mike Beebe, Ola Bostrom (2015年). “Comparison of Kinematic Behaviour of a First Generation Obese Dummy and Obese PMHS in Frontal Sled Tests”. IRCOBI. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月18日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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