チェロソナタ (ラフマニノフ)
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セルゲイ・ラフマニノフの《チェロ・ソナタ ト短調》作品19は、1901年に作曲されたチェロソナタ。ラフマニノフは本作においてピアノは単なる伴奏ではなく、チェロとピアノが対等な関係にあると考えていた。このため、初版は『ピアノとチェロのためのソナタ』と題されている。
本作は、ラフマニノフが完成させた最後の大規模な室内楽曲となった。
概要
[編集]ラフマニノフは1900年までの3年間を、あまり生産的でなく過ごした。このような状況に至ったのは、《第1交響曲》が初演の後で酷評されてからだった。それからのラフマニノフは鬱病に苛まれ、ニコライ・ダーリ博士の催眠療法を受けている。1900年にラフマニノフは《ピアノ協奏曲 第2番》に取り組んだ後、速やかに《チェロ・ソナタ》に着手したのであった。
本作は、作曲者の友人アナトーリー・ブランドゥコーフに献呈され、1901年12月2日にブランドゥコーフと作曲者自身のピアノによってモスクワで初演されている[1]。ブランドゥコーフは《悲しみの三重奏曲 第1番》(1892年完成)の初演者でもあった。初演後、ラフマニノフは改訂を加えたとみられ、初版には「1901年12月12日」と記載されている[2]。
楽曲は以下の4楽章から成る。
- レント – アレグロ・モデラート(ト短調)
- アレグロ・スケルツァンド(ハ短調)
- アンダンテ(変ホ長調)
- アレグロ・モッソ(ト長調)
演奏時間は約35分強(1楽章反復あり)の大作。
主要な音源
[編集]- エドモンド・クルツ、ウィリアム・カペル、1947年
- ダニイル・シャフラン、ヤコフ・フリエール、1956年
- ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、Alexander Dedyukhin、1958年
- ポール・トルトゥリエ、アルド・チッコリーニ、1967年
- ダニイル・シャフラン、アントン・ギンスブルク、1979年
- リン・ハレル、ウラジミール・アシュケナージ、1984年(第1楽章呈示部の反復を割愛)
- ヨーヨー・マ、エマニュエル・アックス、1990年
- トルルス・モルク、ジャン=イヴ・ティボーデ、1994年
- スティーブン・イッサーリス、スティーヴン・ハフ、2002年
- ナターリヤ・グートマン、エリソ・ヴィルサラーゼ、2004年
- ミッシャ・マイスキー、Sergio Tiempo、2005年
- ゴーティエ・カピュソン、ガブリエラ・モンテーロ、2006年
- アレクサンドル・クニャーゼフ、ニコライ・ルガンスキー、2006年
- ダヴィド・ゲリンガス、Ian Fountain、2008年
- 伊藤悠貴、ソフィア・グルャク、2012年(ラフマニノフ・チェロ作品全集録音)
- ゴーティエ・カプソン、ユジャ・ワン、2021年
アレンジ
[編集]ロシアのピアニスト、アルカーディ・ヴォロドスは第3楽章をピアノ独奏用に編曲しており、録音も残している。
脚注
[編集]- ^ Norris, Geoffrey (1993). The Master Musicians: Rachmaninoff. New York City: Schirmer Books. pp. 11, 19, 33, 38, 40, 123, 124, 168, 177. ISBN 0-02-870685-4
- ^ Classical Archives