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チャイナリスク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
チャイナ・リスクから転送)

チャイナリスクまたは中国リスク英語: China risk)とは、中華人民共和国が抱える様々な矛盾や不均衡のことである[1]

特に、外国企業(日本企業も含む)が中国国内で経済活動を行う際に生じるリスクカントリーリスク)を指すことが多い[1][2][3]

概要

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チャイナリスクの体系

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  • オペレーションリスク
    • 生産
    • 販売
      • 代金回収の困難
      • 模倣品海賊版の氾濫
      • 在庫調整と需要予測の困難
      • 国営マスコミによる海外製品批判:外資の不正監視を名目として、毎年3月15日世界消費者権利デーに合わせて、中国中央テレビが『315晩会』で外資企業の商品やサービスに関して、理不尽かつ必要以上の批判が放映され、その影響として、企業による謝罪声明、急激なシェア低下、リコール、中国当局による販売停止などが発生している。
      • 賄賂:ダノン傘下の中国飲料メーカー杭州娃哈哈合資公司の董事長は、2013年の全国人民代表大会において、政府当局者が保持する許認可権限の腐敗が経済の足枷であることを指摘、「許認可を得るため、賄賂を贈る者もいる」と発言している。
    • 雇用・労働
      • 人材(中間管理職・技術者)の採用難
      • 労働者の質・教育レベル
      • 賃金水準の上昇
      • 労務問題(ストライキ、労働組合問題など)
      • 過剰な縁故採用・縁故昇進(縁故資本主義の横行)
      • ジョブホッピング
    • 投資環境
      • 不透明な政策運営
      • 中央・地方の不統一性
      • 経済法制度の未整備
      • 恣意的な法制度の運用
      • 会計制度・税制の不備および運用の不透明性
      • 技術流出および不十分な保護で起こる中国の知的財産権問題
      • 運輸・電力などインフラ問題
      • 外国資本優遇措置の見直し
      • 外資系企業及び地場企業との競争激化
      • M&Aの増加に伴う統合、敵対的買収の横行
    • 経済

商行為以外でのカントリーリスク

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国恥地図」とされている地図画像

チャイナリスクが顕在化した事例

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リスクの内容

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これについて、ジェームズ・マックグレゴールは、著書『中国ビジネス最前線で学ぶ教訓』で、以下のように述べている。

やむを得ない場合を除いて間違っても国営企業と合弁を組むな。合弁の結果、中国側は貴社の技術、ノウハウ、カネのすべてを手に入れ、企業をコントロールする[7] — ジェームズ・マックグレゴール
  • 現地人による過度の安全性の軽視と品質の低下
    • 一般に「値段」と「安全・信頼性」をはかりにかけると、前者の「値段」を重視する
  • 不透明な市場の流れにより半ば横行している株式のインサイダー取引
  • 官僚の絶大な権力による法令の朝令暮改
    • 行政手続きの不透明性

例えば『日経ビジネスオンライン』では、許可申請を少し変更したら、認可が下りるまでに4年かかった王子製紙のコメントのあとで以下のとおり結んでいる[8]。 王子製紙の篠田和久社長は今回の経験について、こう語る。

日本でも規則は変わるが、まず話し合いがあってのことだ。…… 中国では、それが予告なしに起こる。もっと透明性が必要だ — 篠田和久

下記内容のいくらかは、中国脅威論と共通する部分が多い。

背景

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改革開放後、漸次的に共産主義の経済制度を資本主義化・市場化していく過程で、多くの企業が中国へ進出した。

しかし、共産主義のもとで形成されていた経済制度や既得権益と、資本主義の下で活動していた企業の利益は各所で衝突。中国での経営では文化の差を超えて独特の経営慣行が求められることとなった。

日本欧米を始めとする先進国では、普通選挙に基づく民主主義政治体制として採用され、法の支配の下で基本的人権が保障されている。

しかし、中国では中国共産党が事実上の一党独裁によって権力を掌握しており、市民の力によって中国の民主化を目指した1989年六四天安門事件も、中国人民解放軍の投入によって阻止された。

改革開放後も一党独裁体制を放棄する兆候はなく、人民解放軍の一部を暴徒鎮圧向けに改編した武装警察やインターネットにも及ぶ情報検閲などによって強権的に維持されている。

現在まで、中国に次々と進出する日本企業は、チャイナリスクを考慮した行動や対策を行ってこなかった。

これは、「政治的・歴史的な緊張関係にとらわれず、未来志向の経済協力による日中融和を目指す」という姿勢、言い換えれば日本企業の利益最優先主義の姿勢によるものであり、またチャイナリスクを考慮した行動を取ることは裏を返せば中国当局を徒に刺激することでもあったためだ。

しかし、その日本企業が当てにしていた中国において、在留日本人が暴力事件に巻き込まれる事件が多発し、日本企業が地下鉄工事や道路建設において競争入札の門前払いを喰らうなど、日本人に対する差別が原因と思われる事態が次々と発生。

2005年に中国全土へ広がった反日デモは、その中でも特に顕著な例であり、日本の総領事館にまで投石などが相次ぎ、取締りを行うべき治安部隊がその行為を黙認、中国政府は「日本側の態度が暴動の原因として」謝罪や賠償責任まで否定する状況に至った。

影響

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中国でビジネスを行う企業にとってのチャイナリスクの問題は、主にリスクマネジメントなどの企業防衛の観点から、経営戦略上も決して無視することができない要素となっている。

特に日系企業の間ではタイベトナムインドロシアなど複数の新興国にも生産拠点を分散させたり、日本国内での生産に回帰する動きが広がっている(地方に工場を建設することで、製造業における雇用の促進にもなる)(下記チャイナプラスワンも参照)。

同様に、一般的な商取引においても日本企業と中国企業の間に、タイ・ベトナム・中華民国などの関連企業や商社を仲介させるといった手法により、中国との間に「中間となる存在」をワンクッション以上挟みこむことで、若干のコスト上昇するマイナスよりもひと度トラブルが勃発すれば巨額の経済的損失や知的財産の流出を発生させ企業の経営自体を揺るがしかねないリスクやチャイナ・ハラスメントの低減を優先させる動きもある。

知的財産権に対する認識の低さ、知的財産である先端技術の流出や模倣、中国産製品にまつわる品質面の諸問題などは経営戦略において軽視できない問題であり、これを警戒して、中国での製造は先端技術を用いないローエンドモデルの製品に限定したり、あるいは一部のパーツや組立用部材のみの製造にとどめ、日本国内や他の新興国の拠点でその後の最終組立を行っている企業や、先端技術を用いる最新機能を持つ製品やハイエンドモデルは知的財産の漏洩防止措置が配された日本国内の拠点で製造するという企業も存在している。

また、ハイエンド製品ではなくとも、より高い信頼性を要求される業務用向けなどの製品については中国以外の製造ラインを使用する企業もある。

パソコン業界でも、ローエンド帯の製品を主力商品としているオンキヨー(旧ソーテック)やMCJ系のマウスコンピューターユニットコムなどは、一時期「MADE IN CHINA」というイメージが根強かった大手家電メーカーのローエンド製品と暗示的に比較する形で、「日本国内の工場で製造している」という『安心感』を主要なセールスポイントの1つとして謳っている[注 1]。現在ではノートパソコンを中心に富士通など一部の大手家電メーカーも日本国内でのマザーボード製造・本体組立に回帰する傾向を見せている。

また、原材料・部品や鉱物資源・レアアースの輸入においても、2010年9月の尖閣諸島中国漁船衝突事件後に中国が行った輸出規制以降、中国政府の資源供給を政治的武器として使用する姿勢や中国の国内情勢そのものをリスク要因と捉えて、中国国内への一極集中の依存から脱却し、中国以外の国からも安定的な入手が可能になる様に入手経路の構築を図ったり、レアアースレス(レアアースの不使用・使用量減)やリサイクル技術・代替品の開発・研究を行うなど、「中国離れ」を模索する動きが各産業で見られる様になった。この結果、中国のレアアースの日本向け輸出量は2011年に前年比34%減を記録し、その後も減少傾向にある[9]

チャイナプラスワン

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チャイナリスクを回避するためのリスクマネジメントの手法の1つにチャイナ・プラス・ワン(China plus one)、あるいは中国プラス1がある。

これは中国向けの投資やビジネスを行いつつもあえて中国一国に集中させず、平行して他の国においても一定規模の投資や商取引を展開し、リスクの分散化と低減を図る企業動向である。

中国以外の他国の候補地としては、インドやベトナムなど他のアジア諸国が多い。

中国の製造業への投資が近年鈍化傾向となった要因の一つとして指摘されている[10]

過去に起きた事例

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脚注

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注釈

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  1. ^ ただし、「国内製造」をセールスポイントしているメーカーのパソコンにしても、ほとんど全てのパーツやベアボーンキットを日本国外、主に中国や台湾からの輸入に依存しており、実態を見る限りでは「国内組み立て」にしか過ぎず、パーツを供給する台湾メーカーも多くが実際の製造拠点は中国国内に置いている。 「日本製パソコン」を銘打っているからといって使用されるパーツが品質面・性能面で特別に吟味されているわけでもない。 また、これら「日本製パソコン」のメーカーの製品故障率が中国製の競合他社の製品と比較して低いというデータが提示されているでもない。実態としては、単に最終組み立ての工場が地球上のどこにあるかという問題でしかない。

出典

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  1. ^ a b チャイナリスク 証券用語解説集”. 野村証券. 2020年2月12日閲覧。
  2. ^ チャイナリスク”. 東海東京証券. 2020年2月12日閲覧。
  3. ^ 「バカなフリをしないと、中国では商売できない」 アダルの事例から見るチャイナリスク(前)”. NetIB-News. 2020年2月12日閲覧。
  4. ^ 奇跡の医療スペシャル”. ザ!世界仰天ニュース (2008年4月30日). 2008年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月18日閲覧。
  5. ^ 2005年10月号 ジェトロセンサー
  6. ^ a b Geoff Wade (2013年11月26日). “China’s six wars in the next 50 years”. オーストラリア戦略政策研究所. オリジナルの2013年11月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131127105158/http://www.aspistrategist.org.au/chinas-six-wars-in-the-next-50-years/ 
  7. ^ 2007年3月20日付配信 産経新聞
  8. ^ “王子紙、中国進出の誤算”. 日経ビジネスオンライン: p. 1. (2008年1月21日). オリジナルの2008年1月21日時点におけるアーカイブ。. https://megalodon.jp/2008-0123-0617-03/business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080117/144743/ 
  9. ^ レアアース「もっと調達して」中国業者懇願 2年前と状況変化 - MSN産経ニュース 2012年10月5日
  10. ^ 2007年2月2日付配信 フジサンケイ・ビジネスアイ
  11. ^ 伊達公子「ため息」の次は…北京のスモッグに悩まされ敗退デイリースポーツ 2013年10月1日

関連項目

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外部リンク

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