ツノダシ
ツノダシ | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Zanclus cornutus (Linnaeus, 1758) | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム[2] | |||||||||||||||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Moorish idol |
ツノダシ(角出、学名:Zanclus cornutus)は、ツノダシ科に分類される魚の一種。ツノダシ科唯一の現生種で、ツノダシ属は本種のみから成る単型である。インド太平洋のサンゴ礁に生息する。
分類
[編集]1758年にカール・フォン・リンネの『自然の体系』第10版の中で Chaetodon cornutus として初めて正式に記載され、タイプ産地はインド洋とされた[3]。1831年にジョルジュ・キュヴィエは単型のツノダシ属を設立し、本種を分類した[4]。1876年にピーター・ブリーカーは単型のツノダシ科を提唱した[5]。従来スズキ目に分類されていたが、『Fishes of the World』第5版では、ニザダイ目のニザダイ亜目に分類されている[6]。ニザダイ科に分類する意見もあるが、尾柄に棘が無いことが明らかな違いである。始新世に存在した絶滅属である Eozanclus は本種とニザダイ科の中間に位置すると考えられている[7]。
名称
[編集]「Moolish idol (ムーア人の偶像)」という変わった英名は、東南アジアの一部地域で漁師がこの魚に敬意を表し、捕まえたら放し、その後にお辞儀をして敬意を表すことによるという[8]。ただしムーア人と呼ばれたベルベル人の住むモロッコには分布していない[7][9]。属名は古代ギリシア語の「zanklon(鎌)」に由来し、長く湾曲した背鰭を示している。種小名は「角のある」という意味で、目の上にある小さな角状突起を指す[10]。
形態
[編集]体は側扁した円形で、吻は細長く突出しており、比較的高い位置にある目の上には一対の小さな角状突起がある。口は小さく、多くの長い剛毛のような歯が生えている[11]。前鰓蓋骨や尾柄に棘や鋸歯縁は無い[7]。背鰭は6-7棘と39-45軟条から成り、第3棘は糸状に伸長する。臀鰭は3棘と31-37軟条から成る[2]。体長は25cm程度[12]。地色は白色で[7]、2本の幅広く黒い横縞が入り、体の後端は黄色みがかり、吻部には黒く縁取られた黄色い鞍型の模様がある[7][11]。尾鰭は黒く、後縁は白く縁取られる[7]。チョウチョウウオ科のハタタテダイやムレハタタテダイに似るが、口吻の形と模様、目の位置、尾鰭の色などで区別できる。
分布と生息地
[編集]ソマリアから南アフリカのアフリカ大陸東海岸から、ハワイ諸島とイースター島まで、インド太平洋に広く分布する。カリフォルニア湾南部からペルーまでの東太平洋、ガラパゴス諸島やココ島などの島々でも見られる[1]。日本では青森県から九州南岸までの太平洋岸、伊豆・小笠原諸島、琉球列島に分布する[12]。濁ったラグーン、岩礁やサンゴ礁の浅瀬に生息する[12]。生息水深は表層から182m[11]。
生態
[編集]海綿動物、サンゴのポリプ、ホヤ、エビなど底生の無脊椎動物を食べる[13]。通常は2-3匹で底付近を遊泳しているが、単独で生活したり、大きな群れを作ることもある。幼魚は長い間浮遊生活を行い、これが広範囲に分布し地理的に均一な理由である[2]。雄雌は水中に精子と卵を放出し、受精卵は海流に乗って漂っていく[13]。
人との関わり
[編集]食用として流通することはほとんど無く、観賞魚とされている[14]。飼育は難しく、容積380Lを超える大きな水槽を必要とし、食欲旺盛で気性も荒い場合がある[15]。非常に好き嫌いが激しく、すぐに餌に慣れることもあれば、全く慣れずに弱ってしまうこともある[15]。
文化
[編集]映画『ファインディング・ニモ』にはギルという名のツノダシが登場しており、続編の『ファインディング・ドリー』のポストクレジットシーンにも登場している[16]。
脚注
[編集]出典
[編集]- ^ a b Carpenter, K.E.; Lawrence, A.; Myers, R. (2016). “Zanclus cornutus”. IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T69741115A69742744. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T69741115A69742744.en 14 October 2024閲覧。.
- ^ a b c Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "Zanclus cornutus" in FishBase. October 2024 version.
- ^ “CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Zanclus”. researcharchive.calacademy.org. 2024年10月14日閲覧。
- ^ “CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Zanclidae”. researcharchive.calacademy.org. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Richard van der Laan; William N. Eschmeyer & Ronald Fricke (2014). “Family-group names of recent fishes”. Zootaxa 3882 (2): 1–230. doi:10.11646/zootaxa.3882.1.1. PMID 25543675 .
- ^ J. S. Nelson; T. C. Grande; M. V. H. Wilson (2016). Fishes of the World (5th ed.). Wiley. pp. 497–502. ISBN 978-1-118-34233-6
- ^ a b c d e f Kenneth Wingerter (2012年10月24日). “Aquarium Fish: Reconsidering the Moorish Idol”. reefs.com. 2024年10月14日閲覧。
- ^ “IDOLE MAURE Zanclus cornutus (Linnaeus, 1758) N° 2225”. doris.ffessm.fr. 2024年10月14日閲覧。
- ^ Susan Scott (2016年2月22日). “Common name for this fish is in need of an origin story”. susanscott.net. Honolulu Star and Advertiser. 2024年10月14日閲覧。
- ^ “Order ACANTHURIFORMES (part 2): Families EPHIPPIDAE, LEIOGNATHIDAE, SCATOPHAGIDAE, ANTIGONIIDAE, SIGANIDAE, CAPROIDAE, LUVARIDAE, ZANCLIDAE and ACANTHURIDAE”. The ETYFish Project Fish Name Etymology Database. Christopher Scharpf and Kenneth J. Lazara (2024年5月30日). 2024年10月14日閲覧。
- ^ a b c Bray, D.J. (2018年). “Zanclus cornutus”. Fishes of Australia. Museums Victoria. 2024年10月14日閲覧。
- ^ a b c 『小学館の図鑑Z 日本魚類館』433頁
- ^ a b “Moorish idol” (英語). The Dallas World Aquarium. 2024年10月14日閲覧。
- ^ 藤原昌高. “市場魚介類図鑑 ツノダシ”. 2024年10月14日閲覧。
- ^ a b “Moorish Idol (Zanclus Cornutus): Fish Species Profile Fish”. 2024年10月14日閲覧。
- ^ “Willem Dafoe Returns For 'Finding Dory': 'It's Even Better Than The First'”. The Inquisitr. (2013年10月6日) 2024年10月14日閲覧。
参考文献
[編集]- 波戸岡清峰、中坊徹次(監修)『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年。ISBN 978-4-09-208311-0。