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テンジクアジ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テンジクアジ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
: アジ科 Carangidae
: ヨロイアジ属 Carangoides
: テンジクアジ C. oblongus
学名
Carangoides oblongus
(G. Cuvier, 1833)
シノニム
  • Caranx oblongus
    Cuvier, 1833
  • Carangichthys oblongus
    (Cuvier, 1833)
  • Caranx auriga
    De Vis, 1884
  • Citula gracilis
    Ogilby, 1915
  • Caranx gracilis
    (Ogilby, 1915)
  • Caranx tanakai
    Wakiya, 1924
和名
テンジクアジ
英名
Coachwhip trevally
おおよその生息域

テンジクアジ(学名:Carangoides oblongus )はアジ科に属する海水魚である。インド太平洋に広く分布し、その分布域は西は南アフリカ、東はフィジー日本まで広がっている。比較的大型の種で最大で全長46cmに達した記録がある。非常によく似るイトヒラアジなどの近縁他種とは鰭条や鱗など形態上の特徴から区別することができる。しばしば沿岸域で見られ、エスチュアリーによく現れることも多くの地域で知られている。繁殖や食性についてはほとんど分かっておらず、漁業においてもほとんど重要ではない。

分類と命名

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スズキ目アジ科ヨロイアジ属(Carangoides )に属する[1][2]

本種はフランス博物学者ジョルジュ・キュヴィエによって1833年に、ニューギニアから得られた標本をホロタイプとしてはじめて記載された[3]。キュヴィエは本種をCaranx oblongus と命名し、ギンガメアジ属(Caranx )に分類した。種小名の"oblongus"は、「楕円形の」という意味で、本種の体型に由来する。この学名はその後、まずCarangichthys 属に移されたが、このは現在ではふつう無効とされる。続いてヨロイアジ属(Carangoides )に移され、この分類が現在では有効とされている。本種はこの後も何度か独立に再記載されている。具体的には、一度目はチャールズ・ウォルター・デヴィス(Charles Walter De Vis)によってCaranx auriga として、次にWilliam OgilbyによってCitula gracilis として、そして最後に脇谷洋次郎によってCaranx tanakai として記載されている[4]。これらの学名はキュヴィエによるはじめての、かつ正確な記載ののちに命名されたものであるため、国際動物命名規約に基づき後行の無効なシノニムであるとされている[3]

なお、Carangichthys 属を採用している文献もみられる[5]

形態

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背鰭と臀鰭が伸長する。

比較的大型の種であり、最大で全長46cmに達することが知られている[4]。体型は同属他種の多く、特にイトヒラアジ(C. dinema )と似ている。特にイトヒラアジとは、第二背鰭下部に黒い班があることでも類似している[6]。本種は臀鰭がよく伸長する一方、イトヒラアジの臀鰭はそれほど伸長しないことで両種を識別できる[7]。その他、両種は鰭条や鱗の数によっても識別できる。体型は側偏した楕円形で、背側の輪郭が腹側の輪郭よりもふくらんでいる[8]背鰭は二つの部分に分かれており、第一背鰭は8棘、第二背鰭は1棘、20-22軟条である。第二背鰭の突出部は伸長し、その長さは頭長を超えている。臀鰭は前方に2本の遊離棘があり、それを除くと1棘、18-19軟条である。腹鰭は1棘、18-19軟条である[6]側線は前方でゆるやかに湾曲し、曲線部は直線部よりもわずかに短い。この点でもイトヒラアジと本種を区別できる。曲線部には60から69の鱗が、直線部には0から2の鱗と37から42の稜鱗アジ亜科に特有の鱗)が存在する。胸部には鱗がなく、体側面では鱗の帯を隔てて胸鰭の基底部にも無鱗域がある[6]。頭部は丸みを帯び、口は斜位に存在する[5]。両顎には小さい歯からなる歯列が存在し、その幅は前方で広くなる。上顎外側には比較的大型の歯が不規則に連なって存在する。大型個体では下顎にもこの大型歯が存在する。鰓耙数は26から30、椎骨数は24である[8]

体色は背部でオリーブグリーンで、腹部では銀白色や黄色を帯びてくる。第二背鰭の基底部に沿って小さな青色から黒色の斑が存在する。尾鰭上葉と背鰭軟条部は暗い青色、臀鰭は黄色で突出部頂端は白くなる。腹鰭と胸鰭は黄色である。鰓蓋にはふつううっすらと暗い斑が存在するが、斑が全く無い個体もいる[9]

分布

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インド洋、西部太平洋熱帯亜熱帯域に広く分布する[9]。インド洋では、西部では南アフリカマダガスカルで、北方ではアデン湾インド南岸[10]などで報告がある。インド洋東部では中国東南アジアインドネシアオーストラリア北部でみられる。太平洋では生息域はパプアニューギニアから北に台湾日本韓国、東はニューカレドニアフィジーまで伸びる[11][4]

日本では和歌山県琉球列島以南の南日本でみられる[5]

生息域の全域で、沿岸域でよくみられる。オーストラリアやソロモン諸島フィジーで行われた調査では、幼魚エスチュアリーでよく見つかった[9][12][13]。成魚になってもエスチュアリーに留まることはあるが、や浅海のサンゴ礁岩礁へ移動することもある[9]

生態

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本種の食性、他種との相互関係、繁殖や成長についてはほとんど情報が無い[8]。フィジーで行われた調査によれば、本種はカタクチイワシ科タイワンアイノコイワシ属(Encrasicholina )の一種を捕食することがあるという[14]。また、インド南岸での調査ではワラジムシ目の寄生虫、ウオノエ(Cymothoa eremita )が本種の口腔内に寄生しているのが見つかった[10]

人間との関係

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本種は漁業において重要性はほとんどない。本種単独での漁獲量の統計もとられておらず、ふつうは他のアジ科魚類と区別されず処理されている。トロール漁延縄漁において混獲されることがある[8]釣りにより漁獲されることもあり、食用となる[5]

出典

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  1. ^ "Carangoides oblongus" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2008年10月29日閲覧
  2. ^ テンジクアジ”. JODC Dataset. 日本海洋データセンター(海上保安庁) (2009年). 2015年10月10日閲覧。
  3. ^ a b Hosese, D.F.; Bray, D.J.; Paxton, J.R.; Alen, G.R. (2007). Zoological Catalogue of Australia Vol. 35 (2) Fishes. Sydney: CSIRO. pp. 1150. ISBN 978-0-643-09334-8 
  4. ^ a b c Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2008). "Carangoides oblongus" in FishBase. October 2008 version.
  5. ^ a b c d 阿部宗明、落合明『原色魚類検索図鑑 2』北隆館、1989年、63頁。ISBN 4832600303 
  6. ^ a b c Lin, Pai-Lei; Shao, Kwang-Tsao (1999). “A Review of the Carangid Fishes (Family Carangidae) From Taiwan with Descriptions of Four New Records”. Zoological Studies 38 (1): 33–68. http://cat.inist.fr/?aModele=afficheN&cpsidt=10055944. 
  7. ^ 『日本の海水魚』瀬能宏 監修、山と渓谷社、2008年、174頁。ISBN 4635070255 
  8. ^ a b c d Carpenter, Kent E.; Volker H. Niem, eds (2001). FAO species identification guide for fishery purposes. The living marine resources of the Western Central Pacific. Volume 5. Bony fishes part 3 (Menidae to Pomacentridae). Rome: FAO. pp. 2684. ISBN 92-5-104587-9. ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/009/y4160e/y4160e00.pdf 
  9. ^ a b c d Gunn, John S. (1990). “A revision of selected genera of the family Carangidae (Pisces) from Australian waters”. Records of the Australian Museum Supplement 12: 1–78. doi:10.3853/j.0812-7387.12.1990.92. 
  10. ^ a b Sethi, S.N.; Rajapackiam, S.; Ramesh Kumar, G. (2013). “New Occurrences of Cymothoa eremita in Coachwhip trevally, Carangoides oblongus (Cuvier, 1833) along Karaikal, Southern Coast of lndia” (pdf). Fishing Chimes 32 (12): 63. http://eprints.cmfri.org.in/9207/2/Sethi_FC.pdf. 
  11. ^ Kim, M.J.; B.Y. Kim; S.H. Han; C.H. Lee; C.B. Song (2008). “First Record of the carangid Fish, Carangoides oblongus (Carangidae, Perciformes) from Korea”. Korean Journal of Ichthyology 20 (2): 129–132. 
  12. ^ Lal, P.; Swamy, K.; Singh, P. (1984). “"Mangrove ecosystem" fisheries associated with mangroves and their management: Mangrove fishes in Wairiki Creek and their implications on the management of resources in Fiji”. UNESCO Marine Science Reports 27: 93–108. 
  13. ^ Blaber, S.J.M.; D.A. Milton (1990). “Species composition, community structure and zoogeography of fishes of mangrove estuaries in the Solomon Islands”. Marine Biology 105 (2): 259–267. doi:10.1007/BF01344295. 
  14. ^ Blaber, S. J. M.; D. A. Milton, N. J. F. Rawlinson & A. Sesewa (1993). “Predators of tuna baitfish and the effects of baitfishing on the subsistence reef fisheries of Fiji” (pdf). Tuna Baitfish in Fiji and Solomon Islands (Australian Centre for International Agricultural Research): pp. 51 - 61. ISBN 1863201106. http://aciar.gov.au/files/node/2130/pr52_pdf_17126.pdf#page=54.