テン属
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ムナジロテン Martes foinas
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Martes Pinel, 1792[2] | |||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||||||||||||||
Martes foina (Erxleben, 1777)[2] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
テン属[3][4] | |||||||||||||||||||||||||||
種 | |||||||||||||||||||||||||||
テン属(貂属、テンぞく、Martes)は、食肉目イタチ科に含まれる属。
分布
[編集]北アメリカ大陸、ユーラシア大陸、インドネシア、日本[3][4]
形態
[編集]指趾の裏は体毛で被われる[3]。喉は白や橙色などの明色の体毛で被われる[4]。
歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上下8本、大臼歯が上顎2本、下顎4本で計38本[4]。爪はやや引っ込めることができる[3]。
分類
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(Koepfli et al., 2008)より核DNAやミトコンドリアDNAのベイズ法により系統推定した系統図を抜粋[5] |
2008年に発表されたイタチ科の核DNAやミトコンドリアDNAの最大節約法・最尤法・ベイズ法による系統推定では、クズリ属・タイラ属とは全体として単系統群を形成する[5]。一方でフィッシャーを含む・あるいはクズリを含まない本属は偽系統群と推定されている[5]。この論文ではイタチ科内の亜科の復活や再定義も提唱しており、その説に従えば本属・タイラ属・クズリ属からなる単系統群でMartinaeを形成する[5]。のちにこれらの属を含む亜科名としてクズリ亜科Guloninaeが採用されている[1][6]。
属内の系統では解析法によって不定形な点があり、マツテンとクロテンからなる単系統群の姉妹群が最大節約法ではニホンテン、最尤法ではアメリカテン、ベイズ法ではこれらが3分岐と推定されている[5]。
以下の分類はMSW3(Wozencraft, 2005)、和名は川田ら(2018)に従う[2][7]。
- Martes americana アメリカテン American marten(太平洋岸北西部とグレートプレーンズ個体群をM. caurinaとする説もある)
- Martes flavigula キエリテン Yellow-throated marten
- Martes foina ムナジロテン Stone marten
- Martes gwatkinsii ニルギリキエリテン Nilgiri marten[8]
- Martes martes マツテン European pine marten
- Martes melampus ニホンテン Japanese marten
- Martes pennanti フィッシャー Fisher(フィッシャーのみでPekania属に分割される可能性がある[5])
- Martes zibellina クロテン Sable
生態
[編集]森林に生息するが、ムナジロテンは森林よりも岩場などに生息し市街地にも生息する[3][4]。多くの種は群れを形成せず単独で生活するが[3]、キエリテンはペアや家族群で獲物を捕らえる[4]。
人間との関係
[編集]属名Martes(マルテス)や英名marten(マータン)は「テン」を意味し、もともとはヨーロッパに分布するマツテンやムナジロテンを指していた[9]。日本語のテンは、漢語の貂(チョウ、テウ)が転訛したものだと考えられている[9]。
開発による生息地の破壊、毛皮用の乱獲などにより生息数が減少した種もいる[3][4]。
画像
[編集]-
アメリカテン
M. americana -
キエリテン
M. flavigula -
ニルギリキエリテン
M. gwatkinsii -
マツテン
M. martes -
ニホンテン
M. melampus -
フィッシャー
M. pennanti -
クロテン
M. zibellina
参考文献
[編集]- ^ a b 佐藤淳・石田浩太朗「日本産テン類の系統地理学的研究」『タクサ:日本動物分類学会誌』第32巻、日本動物分類学会、2012年、13-19頁。
- ^ a b c W. Christopher Wozencraft, "Martes". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, pp. 608-611.
- ^ a b c d e f g h i 今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編『動物大百科1 食肉類』、平凡社、1986年、132-133頁。
- ^ a b c d e f g h i 斉藤勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人 「イタチ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、31-36頁。
- ^ a b c d e f Klaus-Peter Koepfli, Kerry A Deere, Graham J Slater, Colleen Begg, Keith Begg, Lon Grassman, Mauro Lucherini, Geraldine Veron, and Robert K Wayne, "Multigene phylogeny of the Mustelidae: Resolving relationships, tempo and biogeographic history of a mammalian adaptive radiation", BMC Biology, Volume. 6, No. 1, BioMed Central, 2008, Article number: 10.
- ^ Chris J. Law, Graham J. Slater, and Rita S. Mehta, “Lineage Diversity and Size Disparity in Musteloidea: Testing Patterns of Adaptive Radiation Using Molecular and Fossil-Based Methods,” Systematic Biology, Volume 67, Issue 1, Society of Systematic Biologists, 2018, Pages 127–144.
- ^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
- ^ 小原秀雄 「ニルギリキエリテン」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ4 インド、インドシナ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、144頁。
- ^ a b 荒俣宏「テン」『普及版 世界大博物図鑑 5 哺乳類』平凡社、2021年(原著1988年)、167頁。