ディアゴラス

ディアゴラス（古希: Διαγόρας）は前5世紀に活躍した古代ギリシアのボクサー。古代オリンピックなどの全ギリシア的大祭で何度も優勝したことに加え、彼の息子や孫も同じように優勝を果たした。ロドス島出身であり、母方は第二次メッセニア戦争にてメッセニアの指揮を執った英雄アリストメネスの子孫である。

戦績[編集]

ディアゴラスはボクシングにおいて類い稀なる戦績を残している。古代オリンピックでは2回、ネメア大祭でも2回、ピューティア大祭では最低でも1回、イストミア大祭では4回の優勝経験がある。当時、全ギリシア的大祭での優勝はこの上無い名誉とされており、詩人ピンダロスによってその戦績を褒め称えられるほどであった^[1]。現代でも、ディアゴラスはロドス島を代表する英雄と見なされ、ロードス・ディアゴラス国際空港、ディアゴラスFC（ロドス島のプロサッカーチーム）は、彼の名前から名付けられた。

息子たちの活躍[編集]

ディアゴラスには3人の息子がおり、3人ともオリンピック優勝者である。長男のダマゲトスはパンクラチオンで2回（前452と前448）優勝し、次男のアコウシラオスはボクシングで前448年に優勝している。三男のドリエウスは、前432、428、424年の三回、パンクラチオンで優勝を飾っている。

彼の二人の息子、ダマゲトスとアコウシラオスが同時優勝した前448年に、ディアゴラスは二人の肩に乗ってスタジアムを巡った。息子が優勝するだけでも大いなる栄誉であるのに、その息子が二人同時に優勝するという、幸福の絶頂であった。観衆は彼らを褒め称え、歓声を送った。

ここで、ディアゴラスは一部の観衆に、以下のように言われたと伝えられる。

Κάτθανε, Διαγόρα, οὐ καὶ ἐς Ὅλυμπον ἀναβήσῃ

Kátthane, Diagóra, ou kaí es Ólympon anabēsēi

今ここで死ぬんだ、ディアゴラス！他ではオリュンポス山に上り詰めることはできない！

古代ギリシアでは、人は幸福の絶頂時に死ぬことが一番の幸せだとされていた。なぜなら、人生は紆余曲折であり、今が幸福の絶頂でも、いずれ不幸のどん底に突き落とされるかもしれないからだ。したがって、不幸を知らぬ幸福な内に死ぬことが良しとされていた。ここでは、息子二人がオリンピック優勝を果たすという最上の幸福を味わっている内に死ねば、ディアゴラスは世界一の幸せ者になれるから、観衆はこう叫んだのである。

しかし、ディアゴラスの栄光はこれで終わらず、彼の孫であるペイシロードスやエウクレスもオリンピック優勝を果たした。

脚注[編集]

^ ピンダロス『オリンピア祝勝歌』第7歌。

参考文献[編集]

ピンダロス『祝勝歌集／断片選』内田次信訳、京都大学学術出版会（2001年）
William Smith. Dictionary of Greek and Roman Biography and Mythology, Diagoras.

戦績[編集]

息子たちの活躍[編集]

脚注[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]