デイヴィッド・ペック・トッド
David Peck Todd デイヴィッド・ペック・トッド | |
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生誕 |
David Peck Todd 1855年3月19日 ニューヨーク州 |
死没 |
1939年6月1日(84歳没) バージニア州リンチバーグ |
国籍 | アメリカ合衆国 |
研究機関 |
アメリカ海軍天文台、 アメリカ編暦局、 アマースト大学付属天文台長、 スミス大学 |
出身校 |
コロンビア大学、 アマースト大学、 ワシントン&ジェファソン大学 (en) |
影響を 与えた人物 | ドナルド・メンゼル |
主な受賞歴 | 賜杯 |
プロジェクト:人物伝 |
デイヴィッド・ペック・トッド(David Peck Todd, 1855年3月19日 - 1939年6月1日)は、アメリカ合衆国の天文学者。
経歴
[編集]ニューヨーク州のレイクリッジに生まれた。1870年からコロンビア大学、その後アマースト大学にうつり1875年に卒業。
1875年から1878年までアメリカ海軍天文台、1878年から1881年までアメリカ編暦局助手、アマースト大学では1881年から1917年まで教授と付属天文台長を務め、名誉教授となる。1882年から1887年の間は近隣のスミス大学の天文学ならびに高等数学の教授として教えている。
博士号は1888年にワシントン&ジェファソン大学 より取得[1][2]。
天文学界の功績ほか
[編集]スミス大学(1886–1888)とアマースト大学(1903–1906)両校の天文台建設を指揮し、1907年にはペルー標準時の設定を行った。1882年の金星の日面通過の観測では、台長を拝命したリック天文台において史上初の写真観測を行った。皆既日食の観測隊に何度も参加し、1887年と1896年には日本での観測を行った。
トッドの参加した天文観測隊には以下のものがある(日付はいずれも現時時間)。
- 1878年en) 7月29日 - テキサスでの日食観測 (
- 1887年8月19日 - 日本での日食観測 (en)[注釈 1]
- 1889年、1890年 - 西アフリカの科学調査隊
- 1896年8月9日 - 日本でのアマースト大学日食観測隊 (en)[注釈 2]
- 1900年ローウェル日食観測隊 (en) 5月28日 - トリポリでの
- 1901年 - オランダ領東インド諸島でのアマースト大学日食観測隊
- 1907年 - アンデスでの火星観測(ローウェル隊)
- 1905年トリポリでの日食観測 8月30日 -
- 1914年ロシアでの日食観測 8月21日 -
- 1918年フロリダでの日食観測 6月 8日 -
そのほか、1919年5月29日にブラジルとアルゼンチンで日食観測を行った。 火星の衛星フォボスのクレーターにトッドの名前が付けられたほか、小惑星(511)ダビダはトッドの名から[5]、(510)メイベラにはトッドの妻の名から命名された[6]。
栄誉
[編集]アメリカ天文学会ならびにワシントン科学哲学協会 (PSW Science)、ジャパン・ソサエティー会員であった。アメリカ科学振興協会およびフランス・シェルブールの自然科学物理学協会 Society of Natural and Physical Sciences、リマ地理学協会 Sociedad Geografica de Lima(リマ)のそれぞれフェローに迎えられた。
1896年、日本での教育の功績により明治天皇から賜杯を授けられる。
私生活
[編集]トッドは1879年にメイベル・ルーミスと結婚するが、メイベルは詩人のエミリー・ディキンソンの兄オースティン・ディキンソン (en) と恋愛事件を起こす。トッド自身も妻の恋愛を認識していたといい、大学では公然の秘密とされた。メイベルが交わした書簡は後にポリー・ロングスワースによって出版された[注釈 3]。
著作
[編集]代表作は、"Astronomy: The Science of the Heavenly Bodies"(1922年)[7]である。"Stars and Telescopes" ほか短編を著し、寄稿も多く手がけたほか、”Columbian Knowledge Series” の編集者として刊行に立ち会う[8]。主な著書は次のとおり。
- United States Naval Observatory (アメリカ海軍天文台); David Peck Todd ; Marie Charles Théodore de Damoiseau de Monfort, Baron (モンフォール男爵マリー・シャルル・セオドア・ドゥ・ダモワゾ). 1876. "A Continuation of De Damoiseau's Tables of the Satellites of Jupiter, to the year 1900". Washington: By D.P. Todd. OCLC 504194407 『ドゥ・ダモワゾ式による金星の衛星周期表・至1900年』
- Todd, David Peck. 2016. "Continuation of de damoiseau's tables of the satellites of jupiter, to the year 1900" ... (classic reprint). [Place of publication not identified]: FORGOTTEN Books. (復刻版) ISBN 9781334030628
- Todd, David Peck. 1880. Preliminary account of a speculative and practical search for a trans-Neptunian planet. Washington: Nautical Almanac Office (アメリカ編暦局). OCLC 637516641 「海王星横断の惑星を探査に関する推論かつ実際の予備的解説」
- Todd, David Peck. 1880. Observations of the transit of Mercury, 1878, May 6, including a systematic search for a satellite, and measures of the diameter of the planet. 「1878年5月6日の水星の通過の観測、衛星の体系的な探査ならびに惑星の直径の測定」Washington: Salem Press. OCLC 637516681 アメリカ科学振興協会 『サラトガ会議予稿集』28、1879年8月。
- Todd, David Peck. 1880. On a mechanical attachment for equatorial mountings to facilitate sweeping in right ascension. Washington: [出版社不明]. OCLC 637516594 Proceedings of the American Academy. 「機械的付属品を用いた赤道儀の正確な角度調整について」『American Academy 予稿集』
- Todd, David Peck. 1881. On the use of the electric telegraph during total solar eclipses. Washington: [出版社不明]. OCLC 637516581 「皆既月食中の電信の使用について」
- Todd, David Peck. 1881. 「1874年12月8日-9日の金星日過のアメリカ撮影写真から導き出す太陽視差」OCLC 637516617 『American Journal of Science』第21巻、1881年6月。
- Todd, David Peck. n.d. 『1882年リック天文台で行われた金星日過の観測記録』OCLC 84125448 New Haven: Tuttle.
- Todd, David Peck. 1883. 「ハミルトン山のリック天文台で行われた1882年金星日過の観測記録」OCLC 933432932 『American Journal of Science』第25巻。[Amherst, Mass]: ローレンス天文台 [Lawrence Observatory].
- Todd, David Peck. 1885. 「ハミルトン山のリック天文台」(英語). [発行地不明]: [出版社不明]. OCLC 682090318
- 『1889年1月1日の皆既日食観測の手引き』(英語)、The Observatory, 1888年。
- Todd, David Peck. 1888年「日本における1887年の日食観測報告(予稿)」OCLC 633950564
- Todd, David Peck. 2016年. 『1887年日食観測日本踏査:1887年の皆既日食観測報告(予稿)』ISBN 9781333541149 (復刻版). [出版地不明]: FORGOTTEN Books.
Amherst, Mass: Observatory. - Todd, David Peck. 1889. 『1889年1月1日の皆既月食中に撮影された太陽コロナ:コロナの構造』スミソニアン協会 OCLC 636319456 (Publication / Smithsonian Institution, 692) Washington:
- 『データ集(天文学系中心):1893年4月16日の皆既日食観測に用いる天文台選択を鑑みる』、アマースト天文台、1893年。
- "A new astronomy"、London: S. Low, Marston and Co.、1897年。American book company版 OCLC 458323509
- "A new astronomy"、1906年。
- "Astronomy : the science of the heavenly bodies"、Harper、1922年。トッド生前の版。
- Todd, David P. ; Menzel, Donald Howard "The story of the starry universe : the science of astronomy, the size, motions, relative positions and other phenomena of the heavenly bodies"、P. F. Collier & son、1954年。メンゼルによるトッド没後の改訂版。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ “1887年08月05日 [10 本号 / 第1231号/ 観象 /明治20年8月19日の日食 本年8月19日の日食は本邦一般その現象を見得るべし就中新潟、福島、栃木、茨城の4県は全管内において皆既食を見るべく亦群馬、千葉、長野、宮城、山形、石川の6県においても管内多少皆既食を見るを得べし。しこうして此事たる実に稀有の現象にして天文学研究上所々にてこれを実験する”]. [3]
- ^ 「学事:皆既日食観測に関する報告 皆既日食観測のため北海道へ出張の理科大学教授理学博士寺尾寿、理科大学教授平山信より該観測に関し帝国大学へ左の報告あり(文部省) 天気甚だ悪しく雲越しに写真試みた:北海道北見枝幸寺尾壽/霧のため何も見えず:北海道釧路厚岸平山信」[4]
- ^ "Austin and Mabel: The Amherst Affair & Love Letters of Austin Dickinson and Mabel Loomis Todd" (仮題『オースティンとメイベル』) (ISBN 0374107165)。
出典
[編集]- ^ “David Peck Todd”. www.famousamericans.net. 2019年5月24日閲覧。
- ^ (英語) Biographical and Historical Catalogue of Washington and Jefferson College: Containing a General Catalogue of the Graduates and Non-graduates of Jefferson College, and of Washington College, and of Washington and Jefferson College, 1802-1902. Washington, Pa.: G.H. Buchanan. (1902) . "ワシントン&ジェファーソン大学史と関係者人名録:ジェファーソン大学ならびにワシントン大学の卒業生と学校関係者総合目録(1802年-1902年)"
- ^ 「観象」『官報1887年8月5日』第1231号、58頁(5/10コマ)、2019年5月24日閲覧。
- ^ 「官報. 1896年08月11日」、国立国会図書館デジタルコレクション、2019年5月24日閲覧。
- ^ “(511) Davida = 1903LU”. MPC. 2021年8月26日閲覧。
- ^ “(510) Mabella = 1903LT = 1907 GO = 1946 UO”. MPC. 2021年8月26日閲覧。
- ^ David Peck Todd (1922) (English). Astronomy: The Science of the Heavenly Bodies. Harvard University. Harper & Brothers
- ^ Todd, David Peck (1894) (English). Columbian Knowledge Series. Edited by Professor Todd.. 1-3. Sampson Low & Co.: London; Cambridge, U.S.A.. OCLC 504183355
関連文献
[編集]- 長谷川一郎「金星の日面通過の歴史」『天界』第84巻第942号 (「金星日面通過」特集号)、東亜天文学会、660-665頁、2003年11月。ISSN 0287-6906
- Todd, David Peck; Menzel. 1943. The story of the starry universe: the science of a stronomy-the size, motions, pelative positions, and other phenomena of the heavenly bodies. New York: Collier. OCLC 930739322 トッド著による底本のメンゼルによる改訂版。