旋毛虫症
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旋毛虫症(せんもうちゅうしょう、trichinellosis)またはトリヒナ症(trichinosis)とは、旋毛虫(Trichinella spiralis、Trichinella britovi、Trichinella nativa、Trichinella nelsoni、Trichinella pseudospilarisなど)の感染を原因とする人獣共通感染症。ただしヒト以外では臨床上問題となる事は無いと考えられている。
症状
[編集]感染初期には小腸へ侵入して下痢や腹痛、嘔吐などの症状が現れる。感染後1週間程度で筋肉への幼虫の移動が起こり、顔面の浮腫、白目の炎症、発熱、筋肉痛、発疹などが起こる。軽度の感染であれば、症状がない場合もある。合併症としては、心筋炎、中枢神経症状、肺炎などがある[1]。
病原体
[編集]旋毛虫の嚢胞を含む加熱不足の肉の摂食が主な感染源となる[1]。ほぼ全ての肉食および雑食動物が宿主となりうる。国際的には豚肉がほとんどであるが、熊や犬の肉が原因となることもある[2]。これまでの日本での人での発生例ではいずれも熊肉が原因である。
旋毛虫は同一宿主が終宿主であると同時に中間宿主であるという特徴的な生活環を有する。経口的に摂取された後、胃の中で嚢胞から幼虫が脱出し、小腸の壁に侵入して成虫に成長し有性生殖を行う[1]。1週間後、産まれた幼虫は横紋筋に移動して嚢胞を形成する。
診断
[編集]診断は症状に基づき、特異抗体の検査や組織生検で幼虫を証明することで確定させる[1]。
予防
[編集]最善の予防法は食肉をしっかり加熱することである[3]。
十分に加熱すれば殺虫されるが、冷凍や不十分な加熱などでは殺虫されない[4][5][6][7][8][9]。
治療
[編集]アルベンダゾールやメベンダゾールなどの抗寄生虫薬によって成虫を死滅させ、それにより症状の悪化を食い止める[10]。重症の場合には、ステロイド治療が必要になることもある。治療を行わなくても、症状は通常3ヵ月以内に消失する[11]。
疫学
[編集]世界で年間約10,000例の発生がある[12]。米国、中国、アルゼンチン、ロシアを含む少なくとも55カ国で最近の症例が報告されている一方、熱帯地方ではそれほど一般的ではない[11]。感染による死亡リスクは低い[11]。
畜産
[編集]屠畜場法において感染食肉は全廃棄の対象となる。旋毛虫症以外での全廃棄の対象となる寄生虫病としてはピロプラズマ症、トリパノソーマ症、トキソプラズマ症、有鉤嚢虫症がある。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- ^ a b c d “CDC – DPDx – Trichinellosis – index”. www.cdc.gov. 2015年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月19日閲覧。
- ^ Cook, Gordon Charles; Zumla, Alimuddin (2009) (英語). Manson's Tropical Diseases. Elsevier Health Sciences. p. 325. ISBN 978-1416044703
- ^ “CDC – Trichinellosis – Prevention & Control”. www.cdc.gov. 2015年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月25日閲覧。
- ^ “寄生虫による食中毒にご注意ください | 食品安全委員会 - 食の安全、を科学する”. www.fsc.go.jp. 2018年7月4日閲覧。
- ^ 「わが国における旋毛虫症」『国立感染症研究所』。2018年7月4日閲覧。
- ^ “横浜市衛生研究所:旋毛虫感染症(トリヒナ症)について”. www.city.yokohama.lg.jp. 2018年7月4日閲覧。
- ^ 鳥取県庁広報課. “野生鳥獣肉(ジビエ)の衛生/生活環境部/とりネット/鳥取県公式サイト”. www.pref.tottori.lg.jp. 2018年7月4日閲覧。
- ^ 仙台市役所「クマ肉による旋毛虫食中毒が発生しました」『仙台市役所』。2018年7月4日閲覧。
- ^ “札幌で40年ぶり「旋毛虫」の食中毒 クマ肉食べ:北海道新聞 どうしん電子版”. 北海道新聞 どうしん電子版. 2019年12月21日閲覧。
- ^ “CDC – DPDx – Trichinellosis – Treatment Information”. www.cdc.gov. 2015年8月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月25日閲覧。
- ^ a b c Farrar, Jeremy (2013). Manson's tropical diseases. (23 ed.). Philadelphia: Saunders [Imprint]. pp. 791–794. ISBN 978-0-7020-5101-2
- ^ “Trichinellosis Fact Sheet – Division of Parasitic Diseases”. Centre for Disease Control, US Government (August 2012). 2016年5月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年6月5日閲覧。 “During 2008–2010, 20 cases were reported to CDC each year on average.”
関連項目
[編集]- 線形動物
- 幼虫周囲沈降反応(サーレス現象)
- トリヒノスコープ
- サロモン・アウグスト・アンドレー