トルストイの民話
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レフ・トルストイの民話(НАРОДНЫЕ РАССКАЗЫ)とは、単純な筋に教訓的主張を盛り込んだ、1880年代以後のトルストイの一連の短編である。
狭義の「トルストイの民話」とは上記作品のうち、1881-1886年に創作された約20編を言う[1]。タイトルは「トルストイの民話」であるが創作童話である(モチーフにロシア民話を使っている作品も存在している)。
しかしその後もトルストイは同様の短編を書いているため、この項目ではそれらも含めて扱う。
(1872,1875年に出版した子供用の教科書(ロシア語版)内にもトルストイは多くの寓話を書いたが、ここではふれない。)
以下の作品の題名は中村白葉訳。
民話
[編集]- 人はなんで生きるか (1881)
- 最初の民話。話が比較的長い(『イワンのばか』に次ぐ)が、人は愛によって生きるという結論は単純。
- 火を粗末にすると - 消せなくなる(英語版) (1885)
- 2軒の家族の不和の経過を描く。憎しみからは何も生まれない。
- 二老人(英語版) (1885)
- 一人の老人は念願の聖地巡礼をした。もう一人は途中で飢え死にしかけた家族を見つけ、彼らのために旅費を使ってしまい、巡礼をあきらめた。
- 小娘は老人たちより賢い(英語版) (1885)
- 子供のいさかいが大人のけんかになった。先に仲直りしたのは子供だった。幼児のようになれ。
- ろうそく (1886)
- 強欲な農場管理人を暗殺しようと農民らは考える。農民ピョートルはそれに反対する。
- 二人の兄弟と金貨(英語版) (1886)
- 金は世の中の害だ。世の中には金でなく、労働で貢献すべきだ。
- 悪魔の業は美しく神の業は固い(英語版) (1886)
- 悪魔につかれた奴隷が、主人を怒らせようとしたが、主人は怒らない。
- イリヤス(英語版) (1886)
- 財産は少ないほうが幸福だと、使用人イリヤスが語る。
- 三人の隠者(英語版) (1886)
- 三人の隠者はお祈りを覚えられない。それでもりっぱな宗教者だ。
- イワンのばかとそのふたりの兄弟 (1886)
- ばかのイワンが王様になった国では、肉体労働と自給自足を貴ぶ。金は無用。
- 悔い改むる罪人(英語版) (1886)
- 罪人が死後、ペテロとダビデとヨハネに願い、天国に入れてもらえた。
- 人にはどれほどの土地がいるか(英語版) (1886)
- 人間の限りない欲望を描き、人に必要なものは何かを論じる。
- 鶏の卵ほどの穀物(英語版) (1886)
- 昔は穀物が大きく人も健康だったと、自分で働かない現代人を批判する。
- 小さい悪魔がパンきれのつぐないをした話(英語版) (1886)
- 余剰の収穫がある時、それで酒を作る事を悪魔が教え、人を害する。
- 洗礼の子(英語版) (1886)
- その子は禁断の扉をあけて泥棒を殺した。その罪を償う冒険小説。
- 作男エメリヤンと空太鼓(英語版) (1886年作, 1891年スイスで発表)
- 無理を言う王様をこらしめる。教訓的な内容は少ない。
伝説
[編集]1887年以降にもトルストイは、民話類似の作品を書いている。ここでは河出書房新社のトルストイ全集の「伝説」の部に収録された作品、および ロシア語版WikiSourceのトルストイの作品のうち、「哲学的および道徳的な物語とたとえ話(Философско-нравоучительные рассказы и притчи)」に分類されたものをあげる。
- 三人の息子 (たとえ話) (1889)
- 幸福になるには人のために働く事だと末の息子が悟る。話の筋のおもしろさは乏しい。
- 3つの喩え話 (1895)
- 草刈りのたとえ、食べ物のたとえ、旅のたとえで、トルストイ自身に起こった問題を語る。
- 河出書房新社のトルストイ全集では第9巻「後期作品集」に収録。
- 木の皮屋根のついた蜜蜂の巣の異なった二つの歴史 (1900年作, 1912年死後出版)
- 雄蜂(管理者)と蜜蜂(労働者)それぞれの立場から、蜜蜂の巣の歴史を描く。
- 河出書房新社のトルストイ全集では第9巻に収録。
- 地獄の崩壊とその復興 (1903年 イギリスで出版)
- 現代では真のキリストの教えは忘れられ、にせの教えがはびこっていると主張する。トルストイはロシア正教会から1901年に破門され、正教会を正面から攻撃している。
- それはおまえだ (1903)
- 賢者の超能力により、暴君が敵の気持ちを知り、人類は同一であると悟る。
- アッシリア王アッサルハードン(英語版) (1903)
- アッシリア王は敵と同一になる体験をし、生命は一つだと悟る。
- 三つの疑問(英語版) (1903)
- 仕事をするのにもっとも適当な時はいつか。今です。
- 労働と死と病気(英語版) (1904)
- 神は人間がよい心を持つように、労働と死と病気を与えた。
- 石 (1906)
- 人は自分の小さな罪は忘れてしまうものだ。
- この『石』と次の『大熊星』は、独立した作品ではなく、晩年の読書ノート『文読む月日』の一部。
- 大熊星 (1906)
- 英語作品からの翻訳。日本では『7つの星』『金のひしゃく』などの題でも知られる。水を欲しがる母親へ娘がひしゃくで水を運ぶ。ところが出会った犬がそれを欲しがり..
- 狼 (1909)
- ひよこを食べるのが好きな子供が狼に襲われ、食べられる側の恐怖を知る。
- 河出書房新社のトルストイ全集13巻では「子どものための話」の中に収録。
日本のトルストイ全集における民話
[編集]日本で出版されたトルストイ全集では、以下の巻に民話が収録されている。
1920年 | 春秋社 | トルストイ全集 3 | 村山勇三、飯田敏雄訳 |
1930年 | 岩波書店 | トルストイ全集 14 | 中村白葉、米川正夫訳 |
1938年 | 中央公論社 | 大トルストイ全集 12 | 原久一郎訳 |
1950年 | 創元社 | トルストイ全集 23 | 米川正夫訳 |
1964年 | 河出書房新社 | トルストイ全集 13 | 中村白葉訳 |
民話のおもな訳者
[編集]斎木仙酔 百島冷泉 塚本弘 昇曙夢 飯田敏雄 中村白葉 原久一郎 米川正夫 金子幸彦 北垣信行 小沼文彦 木村浩 藤沼貴 北御門二郎 大橋千明
脚注
[編集]- ^ 全90巻トルストイ全集(ロシア語)の第25巻
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 全90巻トルストイ全集 (1928-1958)(ロシア語)
- 第25巻 1881年-1886年に書かれた作品を「民話」として編集。
- 第26巻 1887年作の『三人の息子』を含む。
- 第31巻 1895年の『3つの喩え話』を含む。
- 第34巻 1900-1903年に書かれた6作を含む。
- 第37巻 1908年の『狼』を含む。
- 第41巻 1906年の『石』『大熊星』を含む。