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トーマス・バロー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

トーマス・バロー(Thomas Burrow、1909年6月29日 - 1986年6月8日)は、イギリスインド学者言語学者で、オックスフォード大学の第6代サンスクリット教授。とくに『ドラヴィダ語語源辞典』(エメノーと共著)の編纂によって知られる。

略歴

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バローは北ランカシャーのレックで生まれ[1]ケンブリッジ大学クライスツ・カレッジに入学した。はじめ古典を学ぶが、比較文献学を専門としたことから、楼蘭研究で知られるラプソンにインド学を学んだ[2]

1年間東洋研究学院(のちの東洋アフリカ研究学院)で学び、ハロルド・ウォルター・ベイリーの助力を得て、オーレル・スタインニヤ遺跡で発見したカローシュティー文字で書かれた文献を研究した[3]。1935年にケンブリッジに戻り、1937年にカローシュティー文献の言語(現在はガンダーラ語と呼ばれる)の研究でケンブリッジ大学の博士の学位を取得した。

1937年から1944年まで大英博物館の東洋文献部門で働き、また東洋アフリカ研究学院のサンスクリットの講師をつとめた。この時期にドラヴィダ語族比較言語学的な研究を発表しはじめた。目が悪かったために第二次世界大戦中の兵役を免れた[4]

1944年にオックスフォード大学のサンスクリット教授に就任し、1976年までその職にあった。

インド・ヨーロッパ語族の比較言語学に関するバローの特筆すべき説として、印欧祖語にそれまで立てられてきたシュワ()の存在を否定したことがあげられる[5][6][7]

1949年にカリフォルニア大学バークレー校マレー・バーンソン・エメノーはバローにドラヴィダ語語源辞典の編纂を提案した。バローは1950年代から1960年代にかけて中央インド各地を訪問し、いままでほとんど知られていなかったゴーンディー語・パルジー語・ペンゴ語などの中央インドのドラヴィダ語族の言語についてフィールドワークを行った[8]。バローとエメノーによる辞典は1961年に初版が出版され、1984年に改訂された。28の言語に支えられて5,500項目以上のドラヴィダ語の語彙を立てることができた[9]

1986年に心筋梗塞で死亡した[10]

主な著書

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  • The Language of the Kharoṣṭhi Documents from Chinese Turkestan. Cambridge Univeristy Press. (1937) (博士論文を出版したもの)
  • A Translation of the Kharoṣṭhī Documents from Chinese Turkestan. London: Royal Asiatic Society. (1940) 
  • The Sanskrit Language. London: Faber and Faber. (1955) (1973年改訂)
  • Dravidian Etymological Dictionary. Oxford: Clarendon Press. (1961) (エメノーと共著、DEDと略称される。1984年の改訂版をDEDRと略称する)
  • Dravidian Borrowings From Indo-Aryan. Berkeley: University of California Press. (1962) (エメノーと共著)
  • Collected Papers on Dravidian Linguistics. Chidambaram: Annamalai University. (1968) 
  • The Problem of shwa in Sanskrit. Oxford: Clarendon Press. (1979) 

脚注

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  1. ^ Hart, Tucker, Wright (1987) p.346
  2. ^ Wright (1998) pp.235-236
  3. ^ Wright (1998) p.236
  4. ^ Wright (1998) pp.237
  5. ^ 最初の論文は “'Shwa' in Sanskrit”. Transactions of the Philological Society 48 (1): 22-61. (1949).  1955年の『The Sanskrit Language』や1979年の著書でも取りあげている
  6. ^ 風間(1984) p.51
  7. ^ マルティネ(2003) p.166 注
  8. ^ Hart, Tucker, Wright (1987) p.347
  9. ^ Wright (1998) pp.239
  10. ^ Gombrich (1996) p.55

参考文献

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  • Gombrich, Richard (1996). “Burrow, Thomas”. The Dictionary of National Biography 1986-1990. Oxford University Press. pp. 54-55 
  • Hart, Gillian R; Tucker, Elizabeth; Wright, J.C (1987). “Obituary: Thomas Burrow”. Bulletin of the School of Oriental and African Studies, University of London 50 (2): 346-357. JSTOR 617122. 
  • Wright, J.C (1998). “Thomas Burrow 1909-1986”. Proceedings of the British Academy. 97. British Academy. pp. 235-254. ISBN 0197261922. http://www.britac.ac.uk/publications/1997-lectures-and-memoirs-%E2%80%A0-thomas-burrow-1909%E2%80%931986 
  • アンドレ・マルティネ 著、神山孝夫 訳『「印欧人」のことば誌:比較言語学概説』ひつじ書房、2003年。ISBN 4894761955 
  • 風間喜代三『印欧語の親族名称の研究』岩波書店、1984年。 

外部リンク

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