ドラゴンの年
『ドラゴンの年』(The Year of the Dragon)は、フィリップ・スパークが作曲した3楽章からなるブラスバンド曲。後に作曲者スパーク自身により吹奏楽編成へも編曲されている[1]。
概要
[編集]ウェールズのブラスバンド、コーリー・バンド(Cory Band)の創立100周年記念委嘱作品として、ウェールズ芸術カウンシル(Welsh Arts Council)の基金を得て作曲され、1984年6月2日にカーディフのセント・デイヴィッド・ホール(St David's Hall)で行われたコーリー・バンド100周年記念演奏会で、H・アーサー・ケニー少佐(Major H. Arthur Kenney)の指揮により初演された[2]。1986年にはカーディフで開催されたヨーロッパ・ブラスバンド選手権大会(European Brass Band Championships)の選手権部門(Championship section)の課題曲にも選ばれている[3]。
タイトルは、ウェールズの国旗にも描かれ、ウェールズのシンボルとも言える赤い竜にちなんでいる。元々は4曲構成で作曲されたが、最終的に第1曲が割愛され[4]、残る3曲からなる組曲として発表された。演奏時間は約13分。
楽譜は1985年にイギリスのステュディオ・ミュージック(Studio Music)から出版された。
日本での受容史
[編集]2022年の第70回全日本吹奏楽コンクール中学生の部において、仙台市立向陽台中学校、山形市立第六中学校、北上市立上野中学校、鹿児島市立武岡中学校の4校が演奏し、全国大会代表となった[5]。これは、SNSでトレンド入りするなど話題となった[6]。
編成
[編集]英国式ブラスバンドの使用楽器・編成に基づく。
吹奏楽版
[編集]1985年版
[編集]木管 | 金管 | 弦・打 | |||
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Fl. | 2, Picc. | Crnt. | 3, Tp. 2 | Cb. | |
Ob. | 2 (CA持ち替え) | Hr. | 4 | Timp. | ● |
Fg. | 2 | Tbn. | 3 | 他 | ● |
Cl. | 3, E♭, Alto, Bass | Eup. | ● | ||
Sax. | Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1 | Tub. | ● |
2017年版
[編集]木管 | 金管 | 弦・打 | |||
---|---|---|---|---|---|
Fl. | 2, Picc. 1 (Fl持ち替え) | Tp. | 4,E♭ | Cb. | 1 |
Ob. | 2, C.A. | Hr. | 4 | Timp. | 1 |
Fg. | 2, Cfg. | Tbn. | 3 | 他 | 4 |
Cl. | 3, E♭, Alto, Bass, C-Bass | Eup. | (div.),B♭ | ||
Sax. | Sop. 1 Alt. 1 Ten. 1 Bar. 1 | Tub. | (div.) |
構成
[編集]続けて演奏される3曲からなる。
- トッカータ(Toccata)
- Molto allegro, con malizia (♩=168)
- スネアドラムにリードされた16分音符のリズムによる不気味なサウンドで始まり、舞曲風な部分を経て消えるように終わる。
- 間奏曲(Interlude)
- Con moto (♩=72) ma rall.
- 物憂いトロンボーンの独奏をフィーチャーし、中間部ではテュッティによる美しいコラールが聞かれる。再びトロンボーンの独奏に戻り、静かに第3曲へと続く。
- 終曲(Finale)
- Molto vivace (♩=138)
- 16分音符による細かいパッセージを伴う衝撃的なテュッティで開始され、圧倒的なフィナーレへと突き進む。
エピソード
[編集]2017年にフィリップ・スパークに行われたインタビューで、『ドラゴンの年』が最高傑作とされていることについてどう思うかと尋ねられると、「この作品が書かれたのは33年前で、それ以来、私の作曲は大きく進化してきている。その時よりも、もっと深い作品を書いてきたことは間違いありません。少なくとも私はそう願っています」と答えた[7]。
脚注
[編集]注釈・出典
[編集]- ^ 1985年にバーミンガム・スクールズ・シンフォニック・ウィンド・バンドの委嘱で最初の編曲が行われ、翌年2月にキース・アレンの指揮により初演。2017年にシエナ・ウインド・オーケストラの委嘱で新たに編曲が行われ、同年6月17日に文京シビックホールで開催された第44回定期演奏会で作曲者自身の指揮により初演。
- ^ “■樋口幸弘のウィンド交友録~バック・ステージのひとり言 第56話 スパーク「ドラゴンの年」の事件簿 | ★吹奏楽マガジン「バンドパワー」” (2018年9月27日). 2022年11月30日閲覧。
- ^ 大会ではウェールズ代表として出場した優勝候補のコーリー・バンドをおさえ、イングランド代表のデスフォード・コリアリー・バンド(Desford Colliery Dowty Band)が優勝した。
- ^ 割愛された第1曲は、「ロンドン序曲」(A London Overture)のタイトルで独立した曲として発表された。
- ^ “吹奏楽コンクールデータベース(自由曲:スパーク/ドラゴンの年) - Musica Bella”. www.musicabella.jp. 2022年11月30日閲覧。
- ^ “東北のドラゴン3頭が名古屋で舞う 3校が同じ曲を選んだわけ:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年10月19日). 2022年11月30日閲覧。
- ^ Editor (2017年3月15日). “Interview with Philip Sparke – The Band Post” (英語). 2022年11月30日閲覧。