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ナタンズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナタンズ

نطنز
1304年に建立されたアブド・サマド・イスファハーニーの廟
1304年に建立されたアブド・サマド・イスファハーニーの廟
ナタンズの位置(イラン内)
ナタンズ
ナタンズ
イランの旗 イラン
エスファハーン州
ナタンズ郡
人口
(2006)
 • 合計 12,060人
等時帯 UTC+3:30 (IRST)
 • 夏時間 UTC+4:30 (IRDT(夏時間))

ナタンズペルシア語: نطنز‎、Natanz/Naţanz[1])は、イラン都市エスファハーン州ナタンズ郡の郡都に定められている。2006年当時に行われた国勢調査では、人口12,060人、3,411世帯[2]カーシャーンの南東70kmに位置する。

ナタンズはザグロス山脈に含まれるケルケス(キャルキャス)山地の北側に建ち、町の南西には標高3,895mのキャルキャス山英語版(Kuh-e Karkas)がそびえる[3]テヘランエスファハーンを結ぶ高速道路のルートからは外れており、カーシャーンとヤズドを結ぶ幹線道路から19km奥まった地点に位置する[3]

ナタンズの特産品としてナシの果実が知られている[4]

イランがイスラーム化される前から、ナタンズはイラン高原中央部の交通の要地となっていた[3]。ナタンズに存在する霊廟はスーフィーのアブド・サマド・イスファハーニーの墓として知られている[4]。霊廟はアブド・サマドの弟子であるイルハン朝ワズィール(宰相)ザイヌルディーンによって建立されたものである。1304年から現在に至るまで複数回行われた増築・修復によって、霊廟にはハーンカームカルナスといった設備が増築されていった。また、ナタンズにはセルジューク朝時代の遺構も多く残る[3]

核施設

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ナタンズ核施設に設置された高射砲

町の北北西30kmの地点にはナタンズ核施設が置かれ、主要な高速道路の近くに位置している。ナタンズ核施設は現在19,000基を超える遠心分離機が稼動するイラン中央のウラン濃縮施設であり、半数近くの遠心分離機によって六フッ化ウランが供給されていると一般に認められている。[5]

2002年8月にイラン国民抵抗評議会によってナタンズで核燃料製造施設の建設が秘密裏に進められていることが明らかにされ、イラン政府は原子力関連の施設の建設が事実であることを認め、平和的目標のために建設したものだと主張した[6]。翌2003年2月に国際原子力機関(IAEA)にナタンズのウラン濃縮施設を正式に申告し、IAEAによる施設の検証活動が開始された[6]。 ヨーロッパ諸国との交渉を経て、2004年7月にナタンズ核施設でのウランの濃縮は停止された。しかし、2006年にイラン政府はウランの濃縮の再開を発表した。2007年1月にイラン政府はナタンズ核施設での3,000基の遠心分離機の設置作業を開始したことを明らかにした[7]

2013年1月にイラン原子力庁長官フェレイドゥーン・アッバースィー=ダヴァーニーペルシア語版英語版から「ナタンズでは5%の濃縮ウランの製造を続けており、ナタンズとフォルドウでわが国の需要を満たすだけの20%の濃縮ウランの製造を続ける」という旨の声明が出された。2013年11月にイラン政府とP5+1英語版の間に成立した共同行動包括計画の合意の一環として、IAEAによる日常的なナタンズ核施設の検査が承認される[8]

2015年7月にイラン政府はEU3+3(アメリカイギリスフランスドイツロシア中国)と包括的共同作業計画に合意し、ナタンズの遠心分離機の規模、ウラン濃縮度などに制限が課された[9]

2020年現在、ナタンズではウラン濃縮工場の建設が続いている。同年7月、この建設現場で何者かにより仕掛けられた爆発物により火災が発生したが、被害者はなく放射性物質の漏出も確認されていない。報道機関はイスラエルの破壊工作の可能性を指摘した[10]

2021年4月10日、イランはナタンズの核施設で、ウラン濃縮用の改良型遠心分離機の稼働を開始したと発表。これは2015年の核合意を逸脱する行為となった。しかし直後の同月11日、イランは核施設がテロ攻撃に遭ったことを発表[11]。詳細な事実は公表されなかったが、電源供給システムが爆破されて長期間にわたり機器の使用が不能になったものと見られている[12]

脚注

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  1. ^ ナタンズはGEOnet Names Serverこのリンクで見つけることができる。特別な検索ボックスを開け、「Unique Feature Id」で「-3076691」を入力し、「Search Database」をクリックする。
  2. ^ "Census of the Islamic Republic of Iran, 1385 (2006)". Islamic Republic of Iran. 2011年11月11日時点のオリジナル (Excel)よりアーカイブ。 {{cite web}}: Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  3. ^ a b c d 鈴木「ナタンズ」『世界地名大事典』3、699-700頁
  4. ^ a b Bamford, James. "The Secret War." Wired. June 12, 2013. "2. Retrieved on June 14, 2013.
  5. ^ Implementation of the NPT Safeguards Agreement and relevant provisions of Security Council Resolutions 1737 (2006), 1747 (2007) and 1803 (2008) in the Islamic Republic of Iran, September 15, 2008” (PDF). 2012年6月19日閲覧。
  6. ^ a b イランの核問題(2015年12月閲覧)
  7. ^ <イラン核問題>遠心分離機3000基の設置を開始、政府高官 - イラン(2015年12月閲覧)
  8. ^ “Iran nuclear deal: Key points”. BBC News. (24 November 2013). http://www.bbc.co.uk/news/world-middle-east-25080217 25 November 2013閲覧。 
  9. ^ https://www.jaea.go.jp/04/iscn/archive/nptrend/nptrend_01-06.pdf(2015年12月閲覧)
  10. ^ メディア:イラン核施設の火災にイスラエルが関与か”. スプートニク (2020年7月6日). 2020年7月20日閲覧。
  11. ^ 核施設でテロ攻撃と発表 イラン原子力庁”. AFP (2020年4月12日). 2021年4月11日閲覧。
  12. ^ イラン核施設の異常発生はイスラエルの破壊工作=ニューヨークタイムズ”. スプートニク (2021年4月12日). 2021年4月13日閲覧。

参考文献

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  • 鈴木均「ナタンズ」『世界地名大事典』3収録(朝倉書店, 2012年11月)