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ナビロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビロン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com monograph
MedlinePlus a607048
胎児危険度分類
  • US: C
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能20% after first-pass by the liver
血漿タンパク結合similar to THC (+/-97%)
半減期2 hours, with metabolites around 35 hours.
データベースID
CAS番号
51022-71-0 チェック
ATCコード A04AD11 (WHO)
PubChem CID: 5284592
DrugBank DB00486 チェック
ChemSpider 4447641 チェック
UNII 2N4O9L084N チェック
KEGG D05099  チェック
ChEMBL CHEMBL947 チェック
化学的データ
化学式C24H36O3
分子量372.541 g/mol
テンプレートを表示

ナビロン (Nabilone) は、制吐薬として、また神経因性疼痛のための補助の鎮痛剤として治療上用いる合成カンナビノイドである。大麻の主要な化学物質 (THC) を模倣する合成のカンナビノイドである。化学的に、ナビロンは自然に存在するCannabis sativa L中に見られる活性成分に似ている[1]

カナダアメリカ合衆国イギリス、及びメキシコでは、ナビロンはセサメット (Cesamet) という商品名で販売される。1985年アメリカ食品医薬品局 (FDA) によって、従来の制吐薬に反応しなかった化学療法誘発性の吐き気と嘔吐の治療に対し承認された。1985年にFDAによって承認されたが、薬は2006年にアメリカ国内で販売され始めた。またエイズ患者の食欲不振英語版と体重減少の治療に承認されている。

正式な適応症ではない(メキシコを除く)が、ナビロンは補助療法として慢性的な疼痛管理に広く用いられている。多くの試験と事例研究が、線維筋痛症[2]多発性硬化症[3]のような病気に対する様々な恩恵を証明している。

ナビロンは、(S,S)と(R,R)異性体の("トランス")から成るラセミ混合物である。

臨床試験

[編集]

出版されたナビロンの臨床試験の主な設定は運動障害を含む、たとえば、パーキンソン症候群、慢性疼痛、ジストニア痙縮性神経疾患、線維筋痛症、多発性硬化症、及びがん化学療法による吐き気。 ナビロンはまた炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎の治療に有効である。医療大麻の患者は、ナビロンは、精神に対する「ハイ」な作用よりも身体に対する治療効果が大きいことを示し、CBDよりもTHCの作用に近いと報告する。

ナビロンとメトクロプラミドを比較した研究は、最近のオンダンセトロンのような5-HT3アンタゴニスト英語版制吐薬の開発の前に実施され、吐き気や嘔吐を制御するために、シスプラチン化学療法を受けた患者はメトクロプラミドを選び、カルボプラチン化学療法を受けている患者は、ナビロンを選んだことが明らかになった[4]。もう一つの研究は、ナビロン単体かナビロンとデキサメタゾンで比較した。研究は併用は単一の薬剤よりもよく効いたことを見出した[5]。古い研究は、吐き気の制御にプロクロルペラジンよりもナビロンのほうが効果があることを明らかにしたが、この研究では、ナビロンの患者の9%だけが完全に症状を消失していた[6]。この研究のフォローアップは、同様の研究結果を見出した[7]

ある研究は、神経因性疼痛の治療におけるナビロンとジヒドロコデインの有効性と忍容性を比較した[8]。著者は、疼痛を管理するのにナビロンはジヒドロコデインほど効果的でなく、ジヒドロコデインよりも軽い薬物有害反応の高い出現率の要因となったことを見出した。ある研究の批評は、カンナビノイド治療の利点のための強力な証拠があるため、ナビロンは中枢性および痙性関連の疼痛によって苦しんでいる患者の治療に最も適している可能性があることを示唆した。しかし、これらの患者は研究の集団のほんの一部を構成しており、研究は、ほかのものより治療に好ましい反応があった可能性があるサブグループを同定するようには設計されていなかった[9]

カナダで行われた臨床試験は、心的外傷後ストレス障害からの独自の苦しみをまとった悪夢の治療のためのナビロンの使用を調査した[10]。研究は、ナビロンの悪夢管理が、47人中34人(72%)の患者が、悪夢の頻度そして/あるいは強烈さを減少させたことを見出し、28人は悪夢の完全休止を報告した[10]。この研究は偽薬対照がなかった範囲内で限定されていたが、心的外傷後ストレス障害とほかの障害に伴う反復性悪夢のカンナビノイド治療の使用についての今後の研究の正当な理由となる。内因性カンナビノイドは、長期の抑うつを制御する重要な役割を果たす、おそらくCB1システムの下方制御は、非常に強化された海馬/扁桃体の恐怖の記憶を除去するのを助けることができる。少なくとも、CB1アゴニストは夢を覚えていることを減らしうる、あるいは辺縁系の重要な関与なしにレム睡眠を起こす。

脚注

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  1. ^ “How to use Cesamet”. Artek LLC. (2008年). http://patientsville.com/labels/cesamet_label.htm 
  2. ^ Skrabek RQ, Galimova L, Ethans K, Perry D (2008). “Nabilone for the treatment of pain in fibromyalgia”. J Pain 9 (2): 164–73. doi:10.1016/j.jpain.2007.09.002. PMID 17974490. 
  3. ^ Wissel J, et al. (2006). “Low dose treatment with the synthetic cannabinoid Nabilone significantly reduces spasticity-related pain : a double-blind placebo-controlled cross-over trial”. J Neurol. 253 (10): 1337–41. doi:10.1007/s00415-006-0218-8. PMID 16988792. 
  4. ^ Cunningham D, et al. (1988). “A randomized trial of oral nabilone and prochlorperazine compared to intravenous metoclopramide and dexamethasone in the treatment of nausea and vomiting induced by chemotherapy regimens containing cisplatin or cisplatin analogues”. Eur J Cancer Clin Oncol 24 (4): 685–9. doi:10.1016/0277-5379(88)90300-8. PMID 2838294. 
  5. ^ Niiranen A, Mattson K (1987). “Antiemetic efficacy of nabilone and dexamethasone: a randomized study of patients with lung cancer receiving chemotherapy”. Am J Clin Oncol 10 (4): 325–9. doi:10.1097/00000421-198708000-00014. PMID 3039831. 
  6. ^ Herman T, et al. (1979). “Superiority of nabilone over prochlorperazine as an antiemetic in patients receiving cancer chemotherapy”. N Engl J Med 300 (23): 1295–7. doi:10.1056/NEJM197906073002302. PMID 375088. 
  7. ^ Einhorn L, Nagy C, Furnas B, Williams S (1981). “Nabilone: an effective antiemetic in patients receiving cancer chemotherapy”. J Clin Pharmacol 21 (8–9 Suppl): 64S–69S. PMID 6271844. 
  8. ^ Frank B, et al. "Comparison of analgesic effects and patient tolerability of nabilone and dihydrocodeine for chronic neuropathic pain: randomised, crossover, double blind study." British Medical Journal. 2008 Jan 8. [Epub ahead of print]. PMID 18182416. doi:10.1136/bmj.39429.619653.80
  9. ^ Cohen SP. "Cannabinoids for chronic pain." British Medical Journal. 2008 Jan 8. [Epub ahead of print]. PMID 18182415. doi:10.1136/bmj.39434.444583.80
  10. ^ a b Fraser, GA (2009). “The Use of a Synthetic Cannabinoid in the Management of Treatment-Resistant Nightmares in Posttraumatic Stress Disorder (PTSD)”. CNS Neurosci Ther 15 (1): 84–88. doi:10.1111/j.1755-5949.2008.00071.x. PMID 19228182. 

関連項目

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