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ナプキンリング問題

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
高さhの穴が球の中心を通りまっすぐに空けられている場合、残ったバンドの体積は球の大きさによらない。大きな球のとき、バンドは薄くなるが長くなる。
一定の高さのカットナプキンリングのアニメーション

ナプキンリング問題(napkin-ring problem)とは、球に穴を開けた形状を持つ立体に関する問題である。この立体には「曲線曲面を持ちながら、そのが分からなくても体積を求められる」という直感に反した性質がある。

名前の由来は当該形状がナプキンリングに似ていることから。

説明

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直円柱の軸が半径Rの球の中心を通り、hが球の内側にある円柱部分の高さ(軸に平行な方向な距離として定義される)を表すと仮定する。「バンド」は円柱の外側にある球の部分である。バンドの体積はhに依存するが、Rに依存しない。

球の半径Rを小さくすると、hを一定に保つためには円柱の直径も小さくなる必要がある。すると、バンドが太くなり体積が増える。しかし、円周も短くなり体積が減る。この2つの効果が互いに相殺しあう。極端な例で可能な限り小さい球の場合、円柱は消え(半径は0になる)、高さhは球の直径に等しくなる。この場合、バンドの体積は球の体積であり、上記の式と一致する。

この問題に関する初期の研究は和算家関孝和により行われた。Smith & Mikami (1914)によると、関はこの立体を「弧環」と呼んだ[1]

解法

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球の半径をとし、円柱(トンネル)の高さをとする。

ピタゴラスの定理より、円柱の半径は

水平断面でリングを求める。

となる。「赤道」より上の高さyでの球の水平断面の半径は

である。高さyの平面を持つバンドの断面は、(2)で与えられる半径の大きい円の内側と(1)で与えられる半径の小さい円の外側の領域である。よって、断面積は大きい円の面積から小さい円の面積を引いたものとなる。

半径Rは最後の結果には出てこない。よってyh/2Rである限り高さyにおける水平断面積はRによらない。バンドの体積は

であり、これもRによらない。

これはカヴァリエリの原理の適用したものである。実際、断面積は体積が

となる半径h/2の球の断面積と等しい。

脚注

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関連項目

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レファレンス

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  • Devlin, Keith (2008), The Napkin Ring Problem, Mathematical Association of America, オリジナルの11 August 2011時点におけるアーカイブ。, https://webcitation.org/60rIio0jC 
  • Devlin, Keith (2008), Lockhart's Lament, Mathematical Association of America, オリジナルの11 August 2011時点におけるアーカイブ。, https://webcitation.org/60rJGphT5 
  • Gardner, Martin (1994), “Hole in the Sphere”, My best mathematical and logic puzzles, Dover Publications, p. 8 
  • Jones, Samuel I. (1912), Mathematical Wrinkles for Teachers and Private Learners, Norwood, MA: J. B. Cushing Co.  Problem 132 asks for the volume of a sphere with a cylindrical hole drilled through it, but does not note the invariance of the problem under changes of radius.
  • Levi, Mark (2009), “6.3 How Much Gold Is in a Wedding Ring?”, The Mathematical Mechanic: Using Physical Reasoning to Solve Problems, Princeton University Press, pp. 102–104, ISBN 978-0-691-14020-9 . Levi argues that the volume depends only on the height of the hole based on the fact that the ring can be swept out by a half-disk with the height as its diameter.
  • Lines, L. (1965), Solid geometry: With Chapters on Space-lattices, Sphere-packs and Crystals, Dover . Reprint of 1935 edition. A problem on page 101 describes the shape formed by a sphere with a cylinder removed as a "napkin ring" and asks for a proof that the volume is the same as that of a sphere with diameter equal to the length of the hole.
  • Pólya, George (1990), Mathematics and Plausible Reasoning, Vol. I: Induction and Analogy in Mathematics, Princeton University Press, pp. 191–192 . Reprint of 1954 edition.
  • Smith, David E.; Mikami, Yoshio (1914), A History of Japanese Mathematics, Open Court Publishing Company, pp. 121–123, https://archive.org/details/historyofjapanes00smitiala . Republished by Dover, 2004, ISBN 0-486-43482-6. Smith and Mikami discuss the napkin ring problem in the context of two manuscripts of Seki on the mensuration of solids, Kyuseki and Kyuketsu Hengyo So.

外部リンク

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