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ニセリトロール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ニセリトロール
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
Drugs.com 国別販売名(英語)
International Drug Names
識別
CAS番号
5868-05-3 チェック
ATCコード C10AD01 (WHO)
PubChem CID: 4476
ChemSpider 4321 ×
UNII F54EHJ34MV チェック
KEGG D01754  チェック
化学的データ
化学式C29H24N4O8
分子量556.53 g·mol−1
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ニセリトロールINN:niceritrol)とは、医薬として使用されることのある、分子中に4分子のニコチン酸エステル結合した有機化合物である。同様にニコチン酸がエステル結合で結合した構造をしている類薬としては、ニコモール(INN:niconol)や、イノシトールヘキサニコチン酸エステル(INN:inositol nicotinate)や、トコフェロールニコチン酸エステル(英語:dl-α-tocopheryl nicotinate)が挙げられる。

構造

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ニセリトロールの構造。分子内対称面を持っている。

ニセリトロールの分子式は、C29H24N4O8であり、したがって、分子量は556.5 (g/mol)である[1]

2,2-ジ(ヒドロキシメチル)-プロパン-1,3-ジオールが持つ全ての水酸基に、1分子ずつニコチン酸がエステル結合した構造をしている。

用途

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ニセリトロールは、脂肪細胞で中性脂肪から脂肪酸を遊離させる代謝を阻害し、肝臓への脂肪酸の供給を抑制する作用を有する[2]。このため、高脂血症患者の血中の脂質を調節するために使用される場合もある[3][4]

この他に、ニセリトロールにはコレステロールの異化を促進して、コレステロールの排泄を促進する作用も有するため、結果として、コレステロールを減少させ得る[5]。また、ニセリトロールは末梢血管を拡張させる作用を有するため、末梢血管疾患の治療のために用いられる場合がある[6]

例えば、レイノー病閉塞性動脈硬化症に使用する[3]

薬物相互作用

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ニセリトロールをヒトに対して経口投与すると、消化管から吸収される。分子内のエステル結合は、ゆっくりと加水分解され、ニコチン酸を遊離する。ところで、医薬としてニコチン酸その物を投与する場合も有る。ニコチン酸とHMG-CoA還元酵素阻害薬を併用すると、HMG-CoA還元酵素阻害薬の典型的な副作用である横紋筋融解症を発症し易くなるとされている[注釈 1]

同じく、ニコチン酸と経口血糖降下薬を併用すると、血糖降下作用が減弱する事も知られている[注釈 2]

また同じく、ニコチン酸には尿酸の排泄阻害作用を有するため[7]、尿酸の血中濃度を低下させる目的で投与する種々の薬の効果を減弱させる恐れがある[注釈 3]。さらに、ニセリトロールは血管拡張作用を有するため、他の作用機序の血管拡張薬と協力的に作用する可能性もある [注釈 4]

脚注

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注釈

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  1. ^ アトルバスタチンシンバスタチンなど、いわゆるスタチン系の医薬との併用の問題である。他にも、スタチン系とフィブラート系の併用が横紋筋融解症を発症させ易い事が知られているなど、血中コレステロールを低下させる医薬には、典型的な副作用の1つとして横紋筋融解症が挙げられる。詳しくは、HMG-CoA還元酵素の記事を始め、その阻害薬なども含めた周辺の記事全般を参照の事。
  2. ^ グリベンクラミドなどの、いわゆるSU剤などとの併用の問題である。また、注射剤のインスリンとニコチン酸を併用しても、同様にインスリンの血糖降下作用が減弱する事も知られている。
  3. ^ 尿酸の血中濃度を低下させる目的で投与する薬としては、幾つかの機序の異なった薬が存在する。例えば、尿のpHを上昇させて尿酸の尿中への排泄を促進する物が、炭酸水素ナトリウムクエン酸カリウムなどである。他に、キサンチンオキシダーゼを阻害して尿酸の生成を抑制する、アロプリノールトピロキソスタットなども有る。また、腎臓に直接作用して、尿酸の尿中への排泄を促進する、プロベネシドベンズブロマロンなども有る。
  4. ^ ニコチン酸系の医薬の一般的な留意点である。

出典

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  1. ^ Niceritrol(ID:4476)
  2. ^ 柴崎 正勝・赤池 昭紀・橋田 充(監修)『化学構造と薬理作用 - 医薬品を化学的に読む(第2版)』 p.265 廣川書店 2015年3月30日発行 ISBN 978-4-567-46241-9
  3. ^ a b ニセリトロール
  4. ^ “Antiproteinuric effect of niceritrol, a nicotinic acid derivative, in chronic renal disease with hyperlipidemia: a randomized trial”. The American Journal of Medicine 114 (5): 347–53. (April 2003). doi:10.1016/s0002-9343(02)01567-x. PMID 12714122. http://www.amjmed.com/article/S0002-9343(02)01567-X/abstract. 
  5. ^ 佐藤 哲男・仮家 公夫・北田 光一(編集)『医薬品トキシコロジー(改訂第3版)』 p.169 南江堂 2006年4月15日発行 ISBN 4-524-40212-8
  6. ^ Truven Health Analytics Inc. (May 8, 2008). “Niceritrol”. Micromedexsolutions.com. December 14, 2014閲覧。
  7. ^ 佐藤 哲男・仮家 公夫・北田 光一(編集)『医薬品トキシコロジー(改訂第3版)』 p.167 南江堂 2006年4月15日発行 ISBN 4-524-40212-8