ニューギニアン・シンギング・ドッグ
ニューギニアン・シンギング・ドッグ(英:New Guinea Singing Dog)とは、パプアニューギニア原産の野生化した犬種である。本種は絶滅寸前の希少な犬種となってしまったが、オーストラリア原産のディンゴやインドネシア原産の絶滅犬種であるテンゲル・ドッグ、ベトナム原産のプー・クォック・リッジバック・ドッグ、タイ王国原産のタイ・リッジバック・ドッグとは繋がりがあり、近縁種である。
歴史
[編集]とても古い犬種のひとつで、かつて人間により改良された最も初期の犬種の性能や容姿、オオカミの品種化の改良過程の謎を解くための『失われた環』と呼ばれている犬種のひとつとして数えられている。ニューギニアン・シンギング・ドッグもほかの『失われた環』の犬種と同じく、もとは人に飼育され、改良された家畜であった。しかし、それが逃げ出して野生生活をする中で自然に適応し、長い時間をかけて固定されていって出来上がったのが本種である。
ニューギニアン・シンギング・ドッグは犬種名のとおり“歌う犬”として知られているが、1、2頭の犬だけを飼育していても“歌う”ことはなく、多くのシンギング・ドッグが集まることによってはじめて歌う事が出来る(下記の特徴参照)。かつては8頭のシンギング・ドッグが捕獲され、その子孫が輸出されて外国の動物園で飼育されているが、ほとんどが高齢で繁殖適齢期を過ぎているため、飼育下のものはとても数が少ない。又、原産地であるニューギニア島でも個体数が著しく減少していて絶滅寸前となっている。飼育されているものと野生のものを合わせても総個体数は500頭にも満たないと言われている。絶滅を回避するため、現在原産国では環境の整備や捕獲作戦が計画されている。
2020年8月31日にニューギニア島の高地で発見されたハイランド・ワイルド・ドッグがニューギニアン・シンギング・ドッグと同一であることが発表され、これにより野生化では50年ぶりの生息が確認された[1][2]。
特徴
[編集]この犬種最大の特徴は“歌う”ことである。歌うといってもそれは音楽や伴奏に合わせてコーラスを行うというような本格的なものではなく、不思議な遠吠え声がまるで合唱のように聞こえるため、歌うという表現が使われている。シンギング・ドッグは個体による声紋の違いが著しいため、数頭から数十頭が集まって遠吠えをすることによってまるで合唱が行われているかのように聞こえるのである。したがって、少数ではあまり合唱のようには聞こえないのが現状である。
容姿は原始的でスピッツタイプに近く、丸めの立ち耳、ふさふさとした垂れ尾を持つ。コートはスムースコート若しくはショートコートで、毛色はホワイト、ブラウン、ブラック・アンド・タン、ブラックのグラデーションなどがある。暗闇で本種の目に光を当てると緑色に輝いて見え、仲間同士ではオオカミのようにあま噛みをする特殊な特性も持つ。体高36-46cm、体重8-14kgの中型犬である。
脚注
[編集]- ^ “「歌う犬」は生きていた 絶滅と思われた野生の個体、高地に生息”. CNN.co.jp. 2024年9月27日閲覧。
- ^ 犬曰く (2020年9月30日). “ニューギニアの歌う犬、50年ぶりに野生での生存が確認される”. 犬曰く. 2024年9月27日閲覧。
参考文献
[編集]- デズモンド・モリス『デズモンド・モリスの犬種事典』誠文堂新光社、2007年
関連項目
[編集]- 犬の品種一覧
- ニューギニアン・コースタル・ドッグ
- プレーンズ・インディアン・ドッグ - 本種と同じく遠吠えが合唱のように聞こえる。