膝蹴り
膝蹴り(ひざげり)は、少林寺拳法、日本拳法、中国武術、空手、キックボクシング、ムエタイ、カポエイラ、プロレス、総合格闘技で用いられる蹴り技の一種あるいは、その派生技を含めた総称である。ニー・キックとも呼ばれる。
概要
[編集]膝頭または膝頭の内側で前方の相手をまっすぐ、もしくは回して蹴る。膝は肘と並んで鍛錬しなくても堅く鋭利で頑丈な部位である。蹴り脚を伸ばす普通の足技よりもモーションが小さいので完全にかわすことは難しく体当たり的に体重を乗せることもできるので威力も大きい。リーチが短いので牽制には向かないが主に相手のボディを狙ってダメージを与えるのには有効でK-1やキックボクシングでも頻繁に使われる。組み合いの最中に使うことも可能でタックル(テイクダウン)へのカウンター(この場合は主に相手の顔面と頭部を狙うことになるのでクリーンヒットすると大きなダメージを見込める)や寝技で用いる蹴り技としても有効なので総合格闘技でも積極的に取り入れられている技術である。
相手の首を手や腕で制して膝蹴りを打つ(あるいは相手に膝蹴りを打たせない)攻防を首相撲という。相手への掴みが(一部もしくは全面的に)容認されているキックボクシング、ムエタイ、総合格闘技では頻繁に使用されている。特に総合格闘技ではグランド状態での膝蹴りが可能であり、PRIDEでは、がぶりやノースサウスポジションから頭部への膝蹴りを打つのが頻繁に見られた。UFCでは頭部への使用は禁止されているがボディへの膝は認められているため、サイドポジションや亀状態の相手のボディへの膝を放つ光景がみられる。
ムエタイでは膝蹴りの攻防が発達しており、組んでの膝蹴りをティーカウ、掴まない膝蹴りをテンカウという。
応用技としてジャンプしながら膝蹴りを叩き込む飛び膝蹴りがある。1960年から1970年に活躍したキックボクサーの沢村忠が真空飛び膝蹴りの名称で使用しており、1973年に日本プロスポーツ大賞を獲得して一世風靡する。
主な使用者
[編集]- 山崎照朝(空手、キックボクシング)
- セミー・シュルト(空手、キックボクシング、総合格闘技)
- グラウベ・フェイトーザ(空手、キックボクシング)
- 沢村忠(キックボクシング)
- ピーター・アーツ(キックボクシング)
- レミー・ボンヤスキー(キックボクシング)
- 前田日明(プロレス)
- 高田延彦(プロレス、総合格闘技)
- 橋本真也(プロレス)
- 船木誠勝(プロレス、総合格闘技)
- 高山善廣(プロレス、総合格闘技)
- 小川直也(プロレス、総合格闘技)
- 藤田和之(プロレス、総合格闘技)
- 中邑真輔(プロレス)
- 神代龍也(プロレス)
- HELLBROS Ken(プロレス)
- ブロック・レスナー(プロレス、総合格闘技)
- バス・ルッテン(総合格闘技)
- ヴァンダレイ・シウバ(総合格闘技)
- ギルバート・アイブル(総合格闘技)
- アリスター・オーフレイム(総合格闘技、キックボクシング)
- ヒース・ヒーリング(総合格闘技)
- ゲガール・ムサシ(総合格闘技)
プロレスにおける派生技
[編集]ニー・キック
[編集]他の格闘技で用いられる膝蹴りと同様の技であり、片足の付け根から足を前方へと振り出して膝で相手を蹴り飛ばす。応用技としてジャンプして仕掛けるジャンピング式(飛び膝蹴り)がある。
主な使用者は、藤田和之などが使用。
派生技
[編集]- ニー・トレンブラー
- ウィリアム・リーガルのオリジナル技。
- 助走して前屈みになった相手の横っ面目掛けてかち上げるような膝蹴りを叩き込む。
- タイナー(ジャスティス・ニー)
- 永田裕志のオリジナル技。
- コーナーにハンマースルーした相手を追いかけるように助走して相手が寄りかかったコーナーのトップロープを片手で掴み、片足をサードロープにのせ、それを踏み台にして跳び上がって反対の足で膝蹴りを放ち、相手の顔面にぶつける。相手が片足で放った膝蹴りを片腕でキャッチし、相手の喉を片手で鷲掴みにして、そのままコーナーに相手を押し込みながら技を放つ場合もある。
- 虎王
- 「こおう」と読む。丸藤正道のオリジナル技。二段式飛び膝蹴り。
- 助走して二段蹴りを仕掛ける感じで軽く宙に舞上がり、軸足とは逆の足を振り上げたあと、すぐにその足を下げると同時に軸足を振り上げ、軸足で相手の顔面や顎に下から突き上げるような膝蹴りを叩き込む。
- リストクラッチ虎王
- 丸藤正道のオリジナル技。
- 虎王の進化バージョン、相手の手首を掴んだまま、コブラ・クラッチの様な形で相手の片腕を顔面に絡める様に固定してそのまま後頭部に膝蹴りを叩き込む。
- 2018年のチャンピオンカーニバルでの秋山戦にてこの技でフォールを奪っている。
- 真・虎王
- 丸藤正道のオリジナル技。
- 相手の左腕をハンマーロックで捕らえた状態で前傾姿勢にし、横側から側頭部に二段式で膝蹴りを叩き込む虎王の新型。相手の片腕もクラッチした腕に引っ掛けているため、完全に無防備な状態で頭部を撃ち抜く。
- ブサイクへの膝蹴り
- KENTAのオリジナル技。
- 助走して軸足とは反対の足を振り上げながらジャンプし、空中で軸足側の膝を突き出すように折り畳み、相手の顔面にその膝で膝蹴りを叩き込む。一般的な飛び膝蹴りは軸足とは逆の足で蹴るのに対し、軸足で膝蹴りを仕掛ける。
- トランス・レイヴ
- Hi69のオリジナル技。小峠篤司も「レッグ・ショット(Leg shot)」として使用。
- 尻餅をついた相手に、助走して片足を振り抜くようにし振り出し、その片膝の内側あたりを相手の顔面に叩き込む。
- 直角型トランス・レイヴ
- Hi69のオリジナル技。
- 前屈みになった相手に向かって助走し、自身の背中を後ろに傾けながら振り上げた片足で相手の顔面に下から突き上げるような膝蹴りを叩き込む。
- ヘルム
- フジタ"Jr"ハヤトのオリジナル技。
- 仰向けになった相手の両足を交差させ、相手の片方の足首に自身の片足のつま先をフックさせて足の動きを封じる。相手の頭を片手で掴み、相手の上半身を引き起こし、相手の顔面に膝蹴りを叩き込む。
ニー・リフト
[編集]膝突き、膝突き蹴り、膝蹴りとも呼ばれる。前屈みになった相手の腹部に下から突き上げるような膝蹴りを叩き込む。応用技として助走して仕掛けるランニング式がある。
主な使用者は、ジャンボ鶴田、高山善廣、佐藤耕平、石川修司、河野真幸、ジェイク・リー、兼平大介、志田光、ブルーノ・サンマルチノ、ミスター・レスリング2号、ロディ・パイパー、ドン・ムラコ、ジェイク・ロバーツ、ザ・グラップラー、シャーク・ボーイ、 ザ・ミズ、ルセフなどが使用。
派生技
[編集]- ハイマウント・ニー
- 高山善廣の使う独特なフォームのニー・リフト。
- 前屈みになった相手のみぞおり付近に、下から突き上げるような膝蹴りを叩き込む。相手の目の前から仕掛けるバーション、相手の体をフロント・ヘッドロックなどで固定して決めるバーション、連発するバーション、助走を付けて決めるバーションなどのバリエーションがある。
ニー・バット
[編集]ニー・パッド、膝打ち、膝当て、膝蹴りとも呼ばれる。膝を突き出すように片足を折り畳み、片足を打ち出して相手の顔面や胸板を蹴り飛ばす。応用技として助走して仕掛けるランニング式、ジャンプして仕掛けるジャンピング式がある。
主な使用者は、真壁刀義(ごく稀にキングコング・ニー・アタックの名称で、トップロープから放つ必殺技として使用)などが使用。ジャンピング式は、ジャンボ鶴田や秋山準などが使用。
派生技
[編集]- ボマイェ(キンシャサ)
- 中邑真輔の独特なフォームのランニング・ニー・バット。WWE以外ではボマイェ、WWEではキンシャサと呼ばれている。
- しゃがみ込んでいる相手に対し助走し、相手のそばまで来たところで、軸足の膝を折り畳みつつ、軸足と反対の足を振り上げて膝を前に押し出し、その膝を相手の顔面や後頭部へを叩き込む。相手に膝を決めるときに、自身の体が大き「く」の字に反るのが特徴。
- スライディング・ボマイェ
- 中邑真輔、飯伏幸太などが使用。
- 座っている相手の後頭部にボマイェ(キンシャサ)を当てる。当ててから相手の顔面又は首元へ滑り込ませるように決める。
- カミゴェ
- 飯伏幸太、ケニー・オメガ、石川修司、ビー・プレストリー、バディ・マシューズなど使用。
- 膝をついた状態の相手の正面から、相手の両腕を自分の両手でそれぞれ掴み、ノーガード状態の相手の顔面に膝蹴りを叩き込む。2017年の「G1 CLIMAX27」出場に向けて開発され、自身の公式戦2試合目となるザック・セイバーJr.戦で繋ぎ技として初披露。便宜上、実況・解説からは「人でなしニー」と呼ばれていたが、棚橋弘至戦で初めてフィニッシャーとして使用され、その際に「カミゴェ」(飯伏が「神」と語っていた棚橋を「超え」た)と命名。中邑真輔のボマイェと同じく「エ」が小さい表記が正しい。石川修司も飯伏の許可を得て使用している。
- サンドウィッチ・オブ・デス
- HELLBROS Ryu、HELLBROS Kenが使用。
- HELLBROSの合体技。相手の両手を各々が搾り上げた状態から、膝を着かせ挟み込んで首元に膝蹴りを打つ技。通称S・O・D。
ニー・スタンプ
[編集]ニー・スタッブ、膝刺しとも呼ばれる。 仰向け、もしくは、うつ伏せになった相手の体の一部を両手で掴み、ジャンプしながら膝を突き出すように片足を折り畳み、落下させた片足を相手の体に打ちつける。主な使用者は、ザ・デストロイヤー、ハーリー・レイス、リック・フレアーなど。
キチンシンク
[編集]キッチンシンクとも呼ばれる。 ジン・キニスキーのオリジナル技。走ってきた相手のみぞおち付近に、斜め前方側からカウンターの膝蹴りをやや横向きに叩き込む。ジャンボ鶴田や小橋建太も多用した。
シャイニング・ウィザード
[編集]武藤敬司のオリジナル技。片膝立ちとなった相手の片膝の上に、助走をつけて自身の片足を乗せ、同時に自身の軸足と反対側の足を前方に振り出し、相手の顔面に膝蹴りを叩き込む。初期は膝の角あたりをぶつけていたが、その後は膝の内側あたりを決めるようになった。
go 2 sleep
[編集]「ゴー・トゥー・スリープ」と読む。KENTAのオリジナル技。ほか、CMパンクなども使用。相手をファイヤーマンズキャリーの体勢で両肩に担ぎ上げて、相手の上半身を下から押し上げて軽く宙に浮き上がらせ、相手の体を自身の正面へと落下させる。相手が落ちてくるのに合わせて、自身の片膝を振り上げて相手の顔面や胸板に、突き上げるような膝蹴りを叩き込む。
派生技
[編集]- 裏go 2 sleep
- KENTAのオリジナル技。投げ技と打撃技を融合したもの。
- 相手をアルゼンチン・バックブリーカーの体勢で両肩に担ぎ上げて、相手の背中を下から押し上げ、相手の体を軽く宙に浮き上がらせる。相手の体を前方へと投げ捨てながら、落下させた相手の後頭部に、片膝を振り上げて膝蹴りを叩き込む。
- Go 2 Sleep 2.0(アラーム・クロック)
- デイビー・リチャーズのオリジナル技。
- 助走をつけて、相手の片脇を左手で左脇を右手で掴み、ミリタリー・プレス(リフトアップ・スラム)の体勢で相手を真上に持ち上げる。そして、相手の体を軽く宙に放り投げて、自身の前方にうつ伏せ状態で落下させる。落下してくる相手の顔面や胸板に、片膝を突き上げるような膝蹴りを叩き込む。ROHにおけるKENTA戦後、繋ぎ技として使用し始めた。
- ハマー・オブ・ザ・ゴッド
- デイビー・リチャーズのオリジナル技。
- 相手をブレーンバスターの体勢で持ち上げて、相手の体を前方へと落下させる。落下中の相手の胸板に、片膝を突き上げるような膝蹴りを叩き込む。
- ニー・アッパー
- 原田大輔のオリジナル技。ほかに、ヨシタツが「ランド・オブ・ライジング・ニー(Land of rising knee)」の名で使用。
- 走り込んできた相手に対し、アーム・ホイップ(巻き投げ)のような体勢で、相手の片脇下に自身の片手を差し込んで軽く宙に担ぎ上げる。そのまま相手を落下させながら、同時に自分の片膝を振り上げ、相手の顔面や胸元に膝をぶつける。
- ターンオーバー・ニー
- 原田大輔やチーチが得意とする。チーチは「ザ・デラックス(The Deluxe)」との名称でも使う。
- カナディアン・バックブリーカーの体勢で自分の片肩に相手を仰向けに担ぎ上げる。そして、相手を反転させながら自分の横側に落とし、同時に落下してきた相手の顔面や胸板に膝蹴りを叩き込む変型ニー・アッパー。原田は大一番でのみ使用する。
- トラウマ
- Eitaのオリジナル技。
- リストクラッチ・ニー・アッパー
- 相手の背後から相手の右腕を股間を通して自身の左腕で掴みコブラツイストの様に相手の左腕の下から自身の右腕を通して相手の首の後ろに回した体勢(リストクラッチ・コブラツイスト)から、担ぎ上げながらその場で後方一回転させて、着地と同時に相手が無防備な状態で相手の顔面に自身の右膝を叩き込む。変形ニー・アッパー。