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ネコヤマヒゴタイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ネコヤマヒゴタイ
広島県庄原市猫山 2023年9月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : キキョウ類 Campanulids
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
亜科 : アザミ亜科 Carduoideae
: トウヒレン属 Saussurea
: ネコヤマヒゴタイ
S. modesta
学名
Saussurea modesta Kitam. (1933)[1]
和名
ネコヤマヒゴタイ(猫山平江帯)[2]

ネコヤマヒゴタイ(猫山平江帯、学名:Saussurea modesta)は、キク科トウヒレン属多年草[2][3]

特徴

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は直立し、高さは30-70cmになる。茎に狭い翼があり、ふつう単純であるが、上部が分岐するときは枝は鋭角的に分枝する。根出葉は花時にも存在する。根出葉と茎の下部につくや根出葉の葉身は、披針形で長さ7-10cm、縁は低平な鋸歯縁、鋸歯は微突端状になる。葉身の基部はくさび形になり、葉柄は長さ3-10cmになり、葉柄の基部は茎を明瞭に抱く[2][3]

花期は9-10月。頭状花序は茎先または枝先に少数が密集して散形状につき、頭花の径は10-13mmになり、花柄は長さ2-5mmになる。総苞は長さ9-10mm、径5-6mmになる狭筒形。総苞片は8-9列あり、縁は紫褐色をおび、総苞片間にくも毛があり、総苞外片は卵状披針形から長卵形で、先端は鋭くとがるが尾状とはならない。頭花は筒状花のみからなり、花冠の長さは9mm、色は紅紫色になる。果実は長さ3.5mmになる痩果になる。冠毛は2輪生で、落ちやすい外輪は長さ1.5-2.5mm、花後にも残る内輪は長さ8mmになる。染色体数は2n=26[2][3]

分布と生育環境

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日本固有種[4]。本州の中国地方の広島県、近畿地方の兵庫県に分布し[4]、山地の乾いた草原に生育する。超塩基性岩地である蛇紋岩地を好む[3]

名前の由来

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和名ネコヤマヒゴタイは、「猫山平江帯」の意で[2]タイプ標本の採集地が広島県比婆郡小奴可村(同郡東城町を経て、現、庄原市)の猫山であることに由来する。植物学者北村四郎 (1933) による命名である[5]

種小名(種形容語)modesta は、「適度な」「内気な」の意味[6]

種の保全状況評価

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都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[7]。岐阜県-絶滅危惧I類、静岡県-絶滅危惧IB類(EN)、兵庫県-Aランク、岡山県-絶滅危惧I類、広島県-絶滅危惧I類(CR+EN)。

ギャラリー

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キリガミネトウヒレンとの混同と独立

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本種とキリガミネトウヒレン Saussurea kirigaminensis Kitam. (1934)[8]は同一の種とする見解がある[2][9][10]

しかし、門田裕一 (2017) は、『改訂新版 日本の野生植物 5』記載の際、本種とキリガミネトウヒレンは別の種とした。門田によると、本種は花時にも根出葉が存在し、葉の鋸歯は微突端状、葉柄の基部は茎を明瞭に抱き、花柄が長さ2-5mmになり、総苞外片の先端は鋭突頭になり、中国地方の乾いた草原に生育する。一方、キリガミネトウヒレンは花時に根出葉はなく、葉の鋸歯は粗い鋸歯縁、葉柄の基部は茎を半ば抱き、花柄はほとんどなく、総苞外片の先端は尾状に伸び、長野県霧ヶ峰とその周辺の湿地周辺に分布する[3]

超塩基性岩地のトウヒレン属

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ネコヤマヒゴタイのように、超塩基性岩地に生育するトウヒレン属のは、日本に数種ある。北から、ウリュウトウヒレン Saussurea uryuensis[11] は、北海道上川地方宗谷地方に分布し、岩がちの草地や岩壁に生育する。2013年にヒダカトウヒレン S. kudoana を基本種とする変種から独立した種とされた。カムイトウヒレン S. kenjihorieana[12] は、北海道上川地方の幌内山地に分布し、夏緑林林内の草地に生育する2015年新種記載の種。ユウバリトウヒレン S. yubarimontana[13]は、北海道夕張岳山麓などの岩地に生育する2013年新種記載の種。ヒダカトウヒレン S. kudoana[14]は、北海道日高地方アポイ岳とその周辺に分布し、岩がちの草地や岩壁に生育する。イナトウヒレン S. inaensis[15]は、長野県伊那市および下伊那郡大鹿村に特産し、夏緑林の林縁や林間の草地に生育する。ワカサトウヒレン S. wakasugiana[16]は、福井県大島半島の特産で、海岸の波打ち際近い草地に生育する2004年新種記載の種[17]オヌカトウヒレン S. ochiaianaは、岡山県新見市広島県庄原市に分布し、蛇紋岩地の湿地に生育する2023年新種記載の種[18]トサトウヒレン S. yoshinagae[19]は、四国徳島県愛媛県高知県に分布し、山地の草地、土手、田畑の畔などに生育する。キリシマヒゴタイ S. scapose[20]は、高知県と九州の山地の草原や夏緑林の林下に生育する[17]

脚注

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  1. ^ ネコヤマヒゴタイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.561
  3. ^ a b c d e 門田裕一 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「キク科トウヒレン属」p.261
  4. ^ a b 『日本の固有植物』pp.147-148
  5. ^ 北村四郎「日本菊科新植物(承前)」『植物分類及植物地理(Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第2巻第1号、植物分類地理学会、1933年、46-47頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00002594030 
  6. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1503
  7. ^ ネコヤマヒゴタイ、日本のレッドデータ検索システム、2024年2月18日閲覧
  8. ^ キリガミネトウヒレン(ネコヤマヒゴタイ-シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  9. ^ 北村四郎 (1981)『日本の野生植物 草本III合弁花類』「キク科トウヒレン属」p.222
  10. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1137
  11. ^ ウリュウトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  12. ^ カムイトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  13. ^ ユウバリトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  14. ^ ヒダカトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. ^ イナトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  16. ^ ワカサトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  17. ^ a b 門田裕一 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「キク科トウヒレン属」pp.255-271
  18. ^ 門田裕一「アジア産トウヒレン属(キク科)の分類学的研究IX.北海道からの1新種と本州からの2新種」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第98巻第1号、ツムラ、2023年、1-12頁、doi:10.51033/jjapbot.ID0053 
  19. ^ トサトウヒレン 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  20. ^ キリシマヒゴタイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献

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