ネスビットの不等式(英語: Nesbitt's inequality)は、以下の不等式である。アルフレッド・ネスビット(Alfred Nesbitt)の名を冠する
ただし、a, b, c は正の実数。
ネスビットの不等式はシャピロの不等式の n = 3 の場合である。
相加調和平均の関係式をに用いる。
整理して、
を仮定すると
を得る。
- ,
と定義する。並べ替え不等式より、この2列のドット積は、2列がともに単調増加あるいは単調減少であるときに最大値をとる。
今、2列は単調減少数列になっている。2つのベクトルをを循環的に置き換えたものとして、
辺辺足して、ネスビットの不等式を得る。
任意の実数a, b, cについて、恒等式
が成り立つから、正の実数a, b, cにおけるネスビットの不等式を得る。
備考:すべての有理不等式は、平方和の恒等式に変換することで証明可能である。詳細はヒルベルトの第17問題を参照。
2つのベクトル
に関するコーシー=シュワルツの不等式、
を証明1と同様にして変形することで題意の不等式を得る。
のようにラヴィ変換施して、相加相乗平均の関係式を用いることにより、
を元に戻して、
整理すると、ネスビットの不等式を得る。
ティトゥの補題はコーシー=シュワルツの不等式をn個の実数(xk)の列と、n個の正の実数(ak)の列に関する不等式に換言したものである。
とすると、
不等式の左辺が斎次的であることから、 としても一般性を失わない。 ラヴィ変換を施して、
とすれば、不等式は に帰着する。これは、と変形できるが、ティトゥの補題より、成立が確認できる。
として、関数を考える。この関数は区間内で凸であるから、イェンセンの不等式より、
整理して、
について、不等式を証明して、 を考えることにより、右の不等式が示せる。
実際に であるから不等式が成立する。
証明9の右の不等式は、におけるムーアヘッドの不等式そのものである。
不等式を変形して
この左辺は、
となるので、不等式が成立する。