コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ペンタン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ノルマルペンタンから転送)
ペンタン
Skeletal formula of pentane
Skeletal formula of pentane with all explicit hydrogens added{{{画像alt1}}}
Pentane 3D ball.png Pentane 3D spacefill.png
識別情報
CAS登録番号 109-66-0 チェック
PubChem 8003
ChemSpider 7712 チェック
UNII 4FEX897A91 チェック
EC番号 203-692-4
国連/北米番号 1265
DrugBank DB03119
MeSH pentane
ChEBI
ChEMBL CHEMBL16102 チェック
RTECS番号 RZ9450000
バイルシュタイン 969132
Gmelin参照 1766
特性
化学式 C5H12
モル質量 72.15 g mol−1
外観 無色の液体
匂い ガソリンのような臭気[3]
密度 0.626 g/mL; 0.6262 g/mL (20 °C)
融点

−130.5 - −129.1 °C

沸点

35.9 - 36.3 °C

への溶解度 40 mg/L (20 °C)
log POW 3.255
蒸気圧 57.90 kPa (20.0 °C)
kH 7.8 nmol Pa−1 kg−1
酸解離定数 pKa ~45
塩基解離定数 pKb ~59
λmax 200 nm
磁化率 -63.05·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.358
粘度 0.240 mPa·s (at 20 °C)
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −174.1~−172.9 kJ mol−1
標準燃焼熱 ΔcHo −3.5095~−3.5085 MJ mol−1
標準モルエントロピー So 263.47 J K−1 mol−1
標準定圧モル比熱, Cpo 167.19 J K−1 mol−1
危険性
GHSピクトグラム 可燃性 急性毒性(低毒性) 経口・吸飲による有害性 水生環境への有害性
GHSシグナルワード DANGER
Hフレーズ H225, H304, H336, H411
Pフレーズ P210, P261, P273, P301+310, P331
NFPA 704
4
1
0
引火点 −49.0 °C (−56.2 °F; 224.2 K)
発火点 260.0 °C (500.0 °F; 533.1 K)
爆発限界 1.5–7.8%[3]
許容曝露限界 TWA 1000 ppm (2950 mg/m3)[3]
半数致死量 LD50
  • 3 g kg−1 (皮膚, ウサギ)
  • 5 g kg−1 (経口, マウス)
半数致死濃度 LC50 130,000 mg/m3 (マウス, 30分)
128,200 ppm (マウス, 37分)
325,000 mg/m3 (マウス, 2時間)[4]
関連する物質
関連するアルカン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ペンタン: pentane)とは、炭素数5つの直鎖状のアルカンである。天然ガス石油エーテルガソリン等に含まれている。

名称

[編集]

ペンタンも含めて、直鎖状のアルカンをノルマルアルカンと総称する[5]。ペンタンには分枝した構造異性体が2つ、つまり、イソペンタンネオペンタンが存在し、構造異性体を含めた総称として、俗に「ペンタン」と呼ぶ場合もある。そこで、これらと区別する際に、n-ペンタンノルマルペンタン)と呼ぶ場合がある。

しかしながら、IUPAC命名法でペンタンと言えば、直鎖状のn-ペンタンを指す。なお、構造異性体であるイソペンタンをIUPAC名で言えば2-メチルブタンであり、ネオペンタンをIUPAC名で言えば2,2-ジメチルプロパンと、きちんと区別できる。その上に、IUPAC名は化合物の構造を言い表している。

よって本稿では、これ以降、IUPAC名に従って記載する。

物理化学的性質

[編集]

常圧でのペンタンの沸点は36 ℃であり[6]したがって、常温・常圧でペンタンは液体として存在する。常圧での沸点が常温を上回る、最短の炭素鎖の直鎖状アルカンが、ペンタンである[6][7][注釈 1]。なお、液体であっても色は無い。また、ペンタンの揮発性は比較的高く、揮発してきたペンタンを、ヒトの嗅覚は感知できる。

アルカンは一般に可燃物であり、酸素と化合して燃焼し、水と二酸化炭素に変化する。この反応は発熱反応であるため、アルカンの燃焼反応は、アルカンと酸素が供給され続ける限り、外部からエネルギーを与えずとも、勝手に持続し得る[8]。ペンタンもまた可燃物であるだけでなく、さらに、揮発性が高く、引火点が-49 ℃と引火し易いため、その取り扱いには注意が必要である。

日本では消防法に定める第4類危険物特殊引火物に該当し、法規制されている。

利用

[編集]

ペンタンには多くの利用法が知られており、以下に、その例の一部を記載する。

発泡剤

[編集]

発泡スチロール製造に際して発泡剤として利用される。

熱媒体

[編集]

安価な低沸点の流体として、地熱発電の1種であるバイナリー発電に於いて、蒸気タービンを回すための媒体として用いる場合がある。水より低温でも沸騰して蒸気になるため、水では沸騰しない低い温度の熱源を利用できるためである。

要するに、比較的低い温度の熱源に、液化したペンタンを曝して沸騰させて気体にし、液体から気体になった際に体積が急激に膨張した圧力で、蒸気タービンを回し、その回転を利用して発電機を駆動するのである。なお、蒸気タービンを回した後は、何らかの方法で再びペンタンを液体に戻して、ペンタンは循環させて使用する[注釈 2]

九州電力の八丁原発電所には日本国内初のバイナリー発電施設があり、2006年からペンタンを利用したバイナリー発電を実施している。

有機溶媒

[編集]

室温で液体として存在する直鎖状アルカンの中では、ペンタンが最も揮発性が高いため、実験室では蒸発させ易い溶媒として利用される場合がある。液相クロマトグラフィーの溶媒としても使われる場合がある。

ペンタンは多くの非極性溶媒(有機塩素化合物芳香族エーテルなど)と自由に混和する。しかし、ペンタンは非極性で官能基が無いため、非極性でアルキル鎖に富んだ化合物しか溶かせない。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 参考までに、1気圧において、融点が25 ℃を上回る最短の炭素鎖の直鎖状アルカンは、オクタデカンである。つまり、オクタデカンよりも炭素鎖の長い直鎖状アルカンは、常温常圧で固体として存在する。逆に、本文から論理的に自明なように、ブタンよりも炭素鎖の短い直鎖状アルカンは、常温常圧で気体として存在する。
  2. ^ 熱媒体として使い方が行われ得るのは、ペンタンだけではない事を、念のために断っておく。例えば、アルカンであれば、プロパンが冷凍庫での熱媒体として用いられる場合がある。また、蒸気タービンを回す熱媒体としては、他に、アンモニアなども利用され得る。

出典

[編集]
  1. ^ International Union of Pure and Applied Chemistry (2014). Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013. The Royal Society of Chemistry. p. 59. doi:10.1039/9781849733069. ISBN 978-0-85404-182-4 
  2. ^ Hofmann, August Wilhelm Von (1 January 1867). “I. On the action of trichloride of phosphorus on the salts of the aromatic monamines”. Proceedings of the Royal Society of London 15: 54–62. doi:10.1098/rspl.1866.0018. 
  3. ^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0486
  4. ^ n-Pentane”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2024年11月20日閲覧。
  5. ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.40、p.42 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  6. ^ a b Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.50 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2
  7. ^ T.W.Graham Solomons、Craig B. Fryhle 著、花房 昭静、池田 正澄、上西 潤一 監訳 『ソロモンの新有機化学 (上巻) (第7版)』 p.149 廣川書店 2002年10月5日発行 ISBN 4-567-23500-2
  8. ^ Harold Hart(著)、秋葉 欣哉・奥 彬(訳)『ハート基礎有機化学(改訂版)』 p.58、p.59 培風館 1994年3月20日発行 ISBN 4-563-04532-2

外部リンク

[編集]