ノート:異教
シュンクレティズムとは
[編集]シュンクレティズムって何語の発音なんでしょうか。syncretismならシンクレティズムですが、英語からじゃなさそうですね。--Afaz 2006年11月8日 (水) 06:08 (UTC)
- こんにちは。「シュンクレティスム」または「シュンクレティズム」は日本語です。シンクレティズムが一般的だと思いますが、宗教学関係の学術書で、こういう表現があるので、語源からいうと「シュンクレティスム」などの方が確かに自然なので、この言葉を使っています。英語の syncretism は、元々はギリシア語の sygkretismos(シュンクレーティスモス)、そこから来たラテン語の syncretismus(シュンクレティスムス)から派生したもので、元々が「シュン」という語頭だったことを知っている者からは、シュンクレティスムが自然に思えるので、こういう表記があるのだと思います。また、英語の syncretism は英語の発音に似させて音写すると、多分「スィンクルティズム」「スィンクリティズム」になるはずで、シンクレティズムというのは、英語の単語の一つの日本語式の読み方で、これも日本語です。また日本語の「シンクレティズム」はローマ字で書くと、shinkuretizumu になる訳で、音からすると、syncretism と全然異なる発音です。--Maris stella 2006年11月8日 (水) 14:45 (UTC)
- なるほどラテン語からですか。納得です。転写方法については議論する気はありません。--Afaz 2006年11月12日 (日) 09:46 (UTC)
ペイガニズムと異教
[編集]もう一つ、別の話ですが、記事の冒頭に書いておく方がよいと思っていることに、「異教」というのは普通、paganism の訳語として使われているというのがあります。「ペイガニズムと異教」の節で、少しそのことに触れていますが、Google で検索しても、アマゾンで「異教」で調べて出てくる本のタイトルなどでも、その用法では、ペイガニズムの訳語として使っているのが普通です。しかし、ペイガニズムの記事に書かれていますが、ペイガニズムには厳密な定義が無く、学術用語ではなく、実際、手元にある宗教学辞典で見ても、「ペイガニズム」も「異教」も項目にはありません(東京大学出版会の少し古い辞典と、ジョン・ヒネルズとミルチア・エリアーデの三種類の事典で、そういう項目はありません)。「異教」というのは、簡単に云えば、「正統キリスト教(または正統なアブラハムの宗教)」以外のあらゆる宗教や信仰などを指す言葉で、しかも侮蔑的に使用する言葉です。「異教的」というのは、下等な、原始的な宗教・亜宗教と云っているので、こういう言葉では、学術的に意味を為さないのです。キリスト教の立場から見た極端に偏った言葉・概念が「ペイガニズム」です。
しかし、アマゾンで「異教」で検索すると分かりますが、松原 秀一 著:「異教としてのキリスト教」という書籍があります。これは、キリスト教が広まって行った西欧社会にとって、先在の諸宗教、古代ギリシア、古代ローマ、ゲルマン、ケルト、北欧などの宗教の立場からは、キリスト教こそ「異教」であるということが前提となっている本です。この本での「異教」は、ペイガニズムではない訳です。「異なる宗教」という意味です。あるいはキリスト教こそ、ペイガニズム(野蛮人の宗教)だという皮肉なのかも知れませんが、いずれにしても、この本の異教は、ペイガニズムとは違うのです。松原秀一という人は、西洋中世文学の研究者で、西欧文化の研究家として典拠たるべき人です。また荒井献氏ですが、「グノーシス主義はキリスト教の異端ではなく、異教であることが確認された」という趣旨のことを学術論文で幾度も書いている例があります。この場合の「異教」も、従来の無反省なペイガニズムの訳語としての異教の概念とは合わないのです。これは「キリスト教とは異なる、別の宗教だと確認された」という意味にしか読めません。また荒井氏の研究は、グノーシス主義について、明確にそのように主張していますし、グノーシス主義の研究者のあいだでは、「異教」であるというのは前提になっています(それとは違う意見も、研究者においてなおありますが。例えば、筒井 賢治の「グノーシス―古代キリスト教の“異端思想”」では、グノーシス主義のキリスト教異端的な面を説明しているので、異教であるということがぼやけています。しかし、異教であることを否定していません)。
paganism の訳語の「異教」や、pagan の訳語の「異教徒」がいかに意味が曖昧で恣意的主観的な言葉かというのは、例えば、十字軍は、「異教徒イスラム教徒に奪われた聖地を奪回する運動」であったという風にしばしば説明されます。ここでは「イスラム教徒=異教徒」です。ところが、ペイガニズムの記事には、「アッラーを信仰しない者」を意味するアラビア語を英語に訳すとき、pagan の言葉が使われているという説明があります。イスラム教の立場では、キリスト教の神は、すなわちアッラーなので、キリスト教徒は異教徒ではないことになります(当然ながら、イスラム教徒自身も、彼らの概念では異教徒ではありません)。しかし、キリスト教の側からは、キリスト教徒は「神」を信仰しているので、アッラーを信仰しているのではないはずです。それでは、キリスト教徒は pagan つまり異教徒かというと、そんなことはありえないでしょう。
「ペイガニズムとしての異教」の概念は恣意的主観的で、侮蔑語・俗語の類であり、概念内容が矛盾して来るというか、多数の使用例を吟味すると、概念が自己撞着してくるが、これに対し、記事で記したような「異教」概念の用法が、少数ではあっても学術的に存在し、この概念には恣意性や矛盾はないということです。--Maris stella 2006年11月8日 (水) 14:45 (UTC)