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ハインケル・ツーリスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハインケル・ツーリスト 103 A1

ハインケル・ツーリストHeinkel Tourist )は、1953年から1965年にかけてハインケル航空機で製造されたスクーターである。

概要

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ハインケルの最初のスクーターの試作車は1949年に製造され、ツーリストの生産は1953年に始まった[1]

ツーリストはビッグスクーターとして販売され、ベスパランブレッタLambretta)よりも高価格で一般的に重量があり乗心地もよく安定していた[1][2]。ツーリストは、速度計、ステアリング・ロック、時計、荷台やスペアタイヤを装着することができた[1]イギリスでは「スクーターのロールス・ロイス」と呼ばれ[1]アメリカ合衆国マサチューセッツ州のディーラーでは「スクーターのキャデラック」と宣伝された[3]

ボディは、プレス鋼板製のボディ・パネルが鋼管フレームに取り付けられ、フレーム上に載ったエンジンがスイングアームに囲われたチェーンを介して後輪を駆動していた[4]。そのためチェーンは密閉されたオイル・バス内で保護されて動くことで長寿命となり、他のスクーターや2輪車のような油汚れとは無縁であった[1]1960年代のハインケル・150小型スクーターを含めて当時のほとんどのスクーターは2ストローク・エンジンを搭載していたが、ハインケル・ツーリストは4ストローク・エンジンを搭載していた[要出典]

101 A0(1953年 – 1954年)、102 A1(1954年 – 1955年)、103 A0(1955年 – 1957年)、103 A1(1957年 – 1960年)、103 A2(1960年 – 1965年)といった5つのシリーズで生産され[1][5]、累計で10万台以上が生産、販売された[4][6]

モデル一覧

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101 A0

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ツーリスト 101 A0はハインケル・ツーリストの最初のシリーズで149 ccエンジンを搭載する唯一のシリーズであり、キックスターターを持つのもこのシリーズのみであった。鋼管製ハンドルバーのツイスト・グリップで3段変速機の変速を行った。生産は1953年4月に始まった。

1954年6月に追加のセルモーターを装備するために電装系が6ボルトから12ボルトへ変更された。101 A0の生産は2カ月後に終了し、合計6,500台の101 A0が製造された[1]

102 A1

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102 A1シリーズの生産は1954年7月に始まった。101 A0からの主な変更点は、ボアとストロークが各々拡大され174 ccとなったエンジン、キックスターターの廃止や最終の101 A0と同様に12ボルト電装系、電動スターターを採用していた[1]。グローブボックスはレッグシールドの裏側に組み込まれており、速度計がその上に取り付けてあった[7]

1万7,500台のツーリスト 102 A1が1955年8月までに生産された[7]

103 A0

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ツーリスト 103 A0シリーズの生産は1955年8月に始まった[8]。それ以前のシリーズが3速の変速機と8インチのタイヤだったのに対し、103 シリーズのツーリストは4速の変速機と10インチのタイヤを使用していた[1]。この結果、一方でより大型で重量級の渇望されたスクーターとなったが、他方ではより高速の洗練されたスクーターとなった[7][8]

1957年9月までに3万4,060台のツーリスト 103 A0が生産された[8]が、この生産数には議論がある[1]

1956年 ハインケル・ツーリスト 103 A0
鋼管製ハンドルバーとフェアリングに付けられた計器盤
ハインケル・ツーリスト 103 A0の後部

103 A1

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ツーリスト 103 A1の生産は1957年9月に始まった[9]。前シリーズまでの鋼管製ハンドルバーは、計器盤付の鋳造製ハンドルバーへ変更された[1]。エンジンは、排気量は同一であったが2ベアリングのクランクシャフトに改良され[1]、ゴム製台座を介してフレームに取り付けられたことにより乗心地が改善された[1][9]

1960年6月までに5万50台のツーリスト 103 A1が生産された[9]

ハインケル・ツーリスト 103 A1
速度計が組み込まれた鋳造製ハンドルバー

103 A2

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ハインケル・ツーリストの最後のシリーズである103 A2の生産は1960年8月に始まった[10]。前シリーズまでのテレスコピック式フォークは、片持ち式のトレーリング=リンク・フォークに変更された。後部のボディパネルは形状が変更され、それ以前のシリーズとは互換性が無かった[10]

合計5万5,000台のツーリスト 103 A2がハインケル・ツーリスト生産終了の1965年12月31日のまで生産された[10]

ハインケル・ツーリスト 103 A2
新しく長くなった車体後部の103 A2
103 A2の後部

諸元

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シリーズ毎のハインケル・ツーリストの諸元[5]
シリーズ 製造年 エンジン排気量 (cc) ボア & ストローク (mm) ホイールベース (mm) 全長 (mm) 全幅 (mm) 全高 (mm) 総重量 (kg) タイヤ
101 A0 1953年 - 1954年 149 59.0 & 54.5 1330 1980 710 980 285 4.00 & 8"
102 A1 1954年 - 1955年 174 60.0 & 61.5
103 A0 1955年 - 1957年 1370 2060 1000 350 4.00 & 10"
103 A1 1957年 - 1960年 1375 2085
103 A2 1960年 - 1965年 1380 2020

全てのツーリストはOHV4ストローク単気筒エンジンを搭載していた[1]

輸出

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イギリス

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コヴェントリーを拠点とするオートバイ製造会社のエクセルシオール1955年遅くからハインケル・ツーリストのイギリスへの輸入を始めた。1956年遅くにピカデリー(Piccadilly)のノーベル・モータース(Nobel Motors)がハインケル製スクーターとバブルカーの新しい正規輸入代理店となった[1]

1957年末にハインケル製スクーターのイギリスでの輸入代理店はインターナショナル・セールス・オブ・ダブリン(International Sales of Dublin)になった。これはアイルランドのダンドーク・エンジニアリング社(Dundalk Engineering Company)が始めたハインケル・カビーネライセンス生産事業の一部であったらしい[1]

1962年2月にロンドンのハンス・モータース(Hans Motors)が103 A2の輸入を始めたが、これは全てドイツ人が運営していた。当時カビーネのライセンス生産をしていたトロージャン社(Trojan Cars Ltd.)は既にランブレッタ製スクーターの販売を行っており、ハインケル・ツーリストの輸入代理権を取得しなかった[1]

アメリカ

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ハインケル・ツーリストのアメリカ合衆国への輸入は認定代理店により行われた。

  • ノーベル・モータース(Nobel Motors、イギリス ロンドン、1956 - 57年):ノーベル・モータースは北米には如何なるスクーターやバブルカーも輸入しなかった。
  • イーストランド・モータース(ニューヨーク ブルックリン、1957年)
  • インターナショナル・スクーターズ・コーポレーション(ニューヨーク ロングアイランド、1959 - 63年):2次代理店契約を結んだのは以下
  • スクータラマ(Scooterama、 カリフォルニア州 サンフランシスコ、1963 - 64年)
  • シュライヒラー・モータース(Schleichler Motors、カリフォルニア州 オークランド、1964 - 65年)

おおよそ350台のハインケル・ツーリストがアメリカ合衆国で販売された[3]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Henikel Trojan Club — Scooters
  2. ^ 1955 Vespa GS150 VS1 versus 1957 Heinkel Tourist 175
  3. ^ a b A History of Heinkel in the U.S.
  4. ^ a b The Encyclopedia of the Motorcycle: Heinkel Tourist
  5. ^ a b Tourist Spotter's Guide
  6. ^ The Ultimate Motorcycle Book: Scooters — Heinkel Tourist
  7. ^ a b c Tourist Spotter's Guide — 102 A1
  8. ^ a b c Tourist Spotter's Guide — 103 A0
  9. ^ a b c Tourist Spotter's Guide — 103 A1
  10. ^ a b c Tourist Spotter's Guide — 103 A2

出典

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  • Wilson, Hugo (UK English). The Encyclopedia of the Motorcycle. London: Dorling Kindersley. pp. 77. ISBN 0751302066 
  • Wilson, Hugo. “Scooters” (UK English). The Ultimate Motorcycle Book. London: Dorling Kindersley. pp. 99. ISBN 0751300438 
  • Heinkel Trojan Club — Scooters”. http://www.heinkel-trojan-club.co.uk/. 2008年9月24日閲覧。
  • 1955 Vespa GS150 VS1 versus 1957 Heinkel Tourist 175”. http://piston-ported.netfirms.com/index.html. 2001年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年9月24日閲覧。
  • Heinkel Tourist dot Com Tourist Spotter's Guide”. http://www.heinkeltourist.com/index.htm. 2008年9月24日閲覧。
  • Gerber, John (2001年). “"Rare As Kangaroos": A History of Heinkel in the U.S.”. http://www.heinkeltourist.com/index.htm. 2008年9月25日閲覧。