ハマースタン
ハマースタンは、パレスチナの政治・軍事組織であるハマース支配下のガザ地区を指す言葉。ハマース国とも訳されるほか、ハマスタンとも音写される。
ハマースタンという言葉は、ハマースがガザ地区の実効支配を開始した2007年以降にジャーナリズムにおいて用いられるようになった。また、この言葉はハマースの幹部やイスラエルの首相など政治家によっても用いられている。
語義
[編集]ハマースタンは、パレスチナの政治・軍事組織である「ハマース」(Hamas) と、土地を意味する「スタン」(-stan) を掛け合わせた言葉である[1]。
使用
[編集]ハマースタンという言葉は、ハマースがガザ政府を樹立し、ガザ地区の実効支配を開始した2007年以降にジャーナリズムにおいて用いられるようになった[2]。ハマースタンという言葉は、ファタハが統治するヨルダン川西岸地区を指す「ファタハランド」と合わせて、パレスチナにおけるファタハとハマースの党派的対立と地理的分裂を揶揄する言葉として用いられた[3]。
パレスチナ側による使用
[編集]ハマースの幹部であるマフムード・ザハルは、Newsweekにおけるインタビューで、イスラエルのガザ地区等撤退によってガザ地区がハマースタンになってしまうというイスラエル側からの懸念について尋ねられた際に、ガザ地区はハマースタンであるべきであり、ハマースは自分たちの土地を守っていると発言した[4]。
イスラエル側による使用
[編集]イスラエルにおいては、ハマースタンという言葉はハマース支配下のガザ地区を指して一部の政治家によって用いられている[5]。2015年にはリクードの党首でイスラエル首相のベンヤミン・ネタニヤフは同年に行われた総選挙の選挙演説で、野党に投票すると新たなハマースタンが誕生すると発言した[6]。
2023年パレスチナ・イスラエル戦争が始まり、イスラエルとハマースとの間で戦闘が激化するなか、ネタニヤフ首相は、2024年5月にガザ地区の戦後計画にあたり「ハマスタンをファタハスタンに換える用意はない」と発言した[7]。
脚注
[編集]- ^ “世界を読む(3)ガザ「2国家共存」へ壁高く”. 日経新聞 (2024年1月4日). 2024年10月7日閲覧。
- ^ 若林 2024, p. 5.
- ^ 池田 2011, p. 105.
- ^ “Mahmoud Zahar”. Newsweek (2005年3月13日). 2024年10月7日閲覧。
- ^ “Netanyahu: No Palestinian state on my watch”. The Time of Israel (2015年3月16日). 2024年10月17日閲覧。
- ^ “Israel’s PM Netanyahu: No Palestinian state on my watch”. CNN (2015年3月16日). 2024年10月7日閲覧。
- ^ “ネタニヤフ首相に反発、イスラエル国防相 ガザ地区の戦後計画めぐり”. BBC News Japan. BBC (2024年5月16日). 2024年10月7日閲覧。
参考文献
[編集]- 池田明史「中東和平プロセス:展開と展望」『中東和平の現状―各アクターの動向と今後の展望―』、日本国際問題研究所、2011年3月、105-116頁。
- 若林啓史「ガザで終わらぬパレスティナ紛争」『中東協力センターニュース』第49巻第2号、中東協力センター、2024年5月、1-8頁。