ハリエニシダ

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ハリエニシダ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: エニシダ連 Genisteae
: ハリエニシダ属 Ulex
: ハリエニシダ U. europaeus
学名
Ulex europaeus
L.
英名
Common gorse
ハリエニシダ Ulex europaeus

ハリエニシダ(針金雀児; Ulex europaeus)は、マメ科マメ亜科に分類される植物の一種。西ヨーロッパイタリア原産であるが、広く移入され、日本にも外来種として定着している。


リンネの『植物の種』(1753年) で記載された植物の一つである[1]

名称[編集]

ハリエニシダという和名は、比較的近縁といわれる[2]エニシダに似ており、針のような棘があることから名付けられている。英語の一般名はゴース (gorse) であるが、ファーズ (furze) とも呼ばれる[3]

属名の Ulex は、ラテン語の古名「ulex(棘のある常緑の低木)」により、種小名の europaeus は「ヨーロッパの」の意である。

分布[編集]

西ヨーロッパからイタリアが原産地となる[4]

また、スペインポーランドオーストラリアニュージーランドアメリカカナダコスタリカペルーウルグアイ、日本、中国インドネシアスリランカなど世界各地に移入分布している[4]

特徴[編集]

枝先につく黄色い花
(ニュージーランド)

高さ1.0-2.5mほどの常緑低木[5]。枝には緑色のするどい刺があり、幼時には3-5小葉を持つが、生長により葉も刺と化している。花期は初春と秋で、2.0-2.5cmの蝶形となる黄色い花を咲かせる[4]。種子はアリによって運ばれる。

牧草地、低木林、樹園地、海岸、荒地、水路、湿地などの日当たりのよい場所に生育する[4]

外来種[編集]

繁殖力の強さと駆除の難しさから、2000年に IUCN (国際自然保護連合)種の保存委員会 (Species Survival Commission: SSC) [6]世界の侵略的外来種ワースト100に選定している。また、日本では外来生物法によって要注意外来生物に指定されている。

牧草地に侵入すると長い刺によって家畜が傷つけられてしまう[5]。刺があるため手作業で抜き取るのは困難である。こうした刺の存在が、本種が侵略的な外来種といわれる理由のひとつでもある。火入れや除草剤による駆除も試行されているが、埋土種子や根からの繁殖力が非常に高いため、簡単には根絶できない[7]ヤギを用いた天敵導入が有効であるが、ヤギ自体が侵略的な外来種ともなりうるため、扱いには注意を要する[7]

オーストラリア[編集]

オーストラリアでは、放牧用の垣根に利用する目的で導入したものが野生化した[7]

日本[編集]

日本では観賞用に導入され、1886年に東京の小石川植物園で栽培されていた記録がある[4]。最初の野外への定着は、1950年の横浜市に認められ、今では本州神奈川県和歌山県島根県)や四国に拡大している[4][5]

文化[編集]

ハリエニシダは、イギリスの昔話の『三匹の子豚The Three Little Pigs に描写されており、二番目の子豚が建てた家はハリエニシダ (furze) で作られている(木の家〈wood house〉とするものもある)。また、児童文学の『クマのプーさんWinnie-the-Pooh (1926) では、蜂蜜を取ろうと登った木の枝が折れ、ハリエニシダの灌木 (gorse-bush) に落ちて棘だらけになる場面が描かれている[3]

脚注[編集]

  1. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 741. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358762 
  2. ^ スコットランドのハリエニシダ”. 岡山理科大学 植物生態研究室. 2015年6月20日閲覧。
  3. ^ a b 梶原裕二「ヒースやゴース; イギリスの荒れ地を被う植物」(PDF)『フォーラム理科教育』第4号、京都教育大学理学科、2002年、36-39頁。 
  4. ^ a b c d e f ハリエニシダ”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2015年6月20日閲覧。
  5. ^ a b c ハリエニシダ”. 外来植物図鑑. 農業環境技術研究所. 2015年6月20日閲覧。
  6. ^ 種の保存委員会(Species Survival Commission:SSC)”. IUCNとは. IUCN日本委員会. 2015年6月20日閲覧。
  7. ^ a b c 自然環境研究センター編著 著、多紀保彦監修 編『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7 

外部リンク[編集]