ハルカラマツ
ハルカラマツ | |||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Thalictrum baicalense Turcz. ex Ledeb. (1838)[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ハルカラマツ(春唐松)[2] |
ハルカラマツ(春唐松、学名:Thalictrum baicalense)は、キンポウゲ科カラマツソウ属の多年草[2][3][4][5][6]。別名、ニッコウカラマツ[1][4]。
特徴
[編集]根は肥厚しない。茎は直立し、高さ50-100cm、上部で2-3回まばらに分枝する。茎や葉は無毛で、腺毛もない。花期には根出葉は生存しない。茎葉は互生し、葉身は2-3回3出複葉で、小葉は広くさび状倒卵形からくさび形になり、長さ1.5-5.5cm、先は切形から円形で浅く3裂し、基部はくさび形になり、縁に粗い鋸歯がある。葉柄の基部に托葉があり、暗褐色の膜質で、縁は不規則に切れ込み、小葉柄の基部に小托葉はない。上部の茎葉は小型になり、ときに無柄になる。小葉の葉質は草質で、裏面の葉脈が隆起する[2][3][4][5][6]。
花期は6-7月。花序は散房状につき、花は径8-10mm、白色でわずかに黄色または緑色を帯び、花柄は長さ0.5-1.5cm。やや花弁状の萼片は長さ3mm、楕円形で黄白色、早落性で花期には落ちる。花弁はない。雄蕊は多数あり長さ5mm、葯は黄白色で長さ1mm、花糸は棍棒状で葯より幅が広く、葯隔は突出しない。雌蕊は雄蕊群の中央に4-8個あり、柱頭は円盤状になる。果実は長さ約3mmの球状楕円形の痩果になり、4-8個つき、縦に8本の稜があり、基部に長さ0.3mmの短い果柄がある。痩果の花柱は短いが残存し、柱頭はわずかに内曲する。染色体数2n=14[2][3][4][5][6]。
分布と生育環境
[編集]日本では、北海道、本州の福島県・栃木県・群馬県・埼玉県に分布し、山地帯の湿り気のある草地や林縁に生育する[2][3][4][5]。世界では、朝鮮半島北部、中国大陸東北部、シベリア東部に分布する[3][4]。
名前の由来
[編集]和名ハルカラマツは、「春唐松」の意であるが、春に花が咲くわけではなく、花期が7-9月であるアキカラマツ(秋唐松)T. minus var. hypoleucum より早く咲くことによる[5]。植物学者松村任三 (1889) による命名である[7]。
種小名(種形容語)baicalense は、「バイカル湖地方の」の意味[8]。
種の保全状況評価
[編集]- 絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[9]。福島県-情報不足(DD)、栃木県-要注目、群馬県-準絶滅危惧(NT)。
ギャラリー
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雄蕊は多数、葯は黄白色、花糸は棍棒状で葯より幅が広い。雌蕊は雄蕊群の中央に4-8個あり、柱頭は円盤状になる。
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果実は球状楕円形の痩果になり、4-8個つき、縦に8本の稜がある。
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葉柄の基部に托葉がある。○印。
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托葉は暗褐色の膜質で、縁は不規則に切れ込む。
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葉の裏面。裏面の葉脈が隆起する。
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生育環境。林縁で群落になっている。
下位分類
[編集]マルミノハルカラマツ(学名:Thalictrum baicalense Turcz. ex Ledeb. f. levicarpum Tamura (1953)[10])- 痩果にある稜が目立たず、表面が平滑なものを品種として区別する[4]。栃木県日光市がタイプ標本の採集地[10]。
分類
[編集]同属のなかに、似た種にカラマツソウ T. aquilegiifolium var. intermedium がある。同種と本種の日本における分布は、北海道、本州であるが、カラマツソウの本州での分布域は広く、西日本にまで及ぶ。一方、本種の本州における分布域は福島県・栃木県・群馬県・埼玉県の各一部と狭い。栃木県日光市では、両種が同地域にみられるが、花期は本種の方がやや早い。同種の茎葉の基部にある托葉は膜質で全縁となるが、本種の托葉は縁が不規則に切れ込む。また、両種の雄蕊の葯と花糸はほぼ同じ色で見分けがつきにくいが、カラマツソウの花の方が大きい。決定的な違いは痩果で、カラマツソウは7-15個あって楕円状になり、長い果柄があって垂れ下がるが、本種のそれは4-8個あって球状楕円形になり、短い果柄があって直立または斜上し、垂れ下がることはない[4][5][11][12]。
脚注
[編集]- ^ a b ハルカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.230
- ^ a b c d e 清水建美 (1982)『日本の野生植物 草本II離弁花類』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p.85
- ^ a b c d e f g h 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.164-165
- ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.478
- ^ a b c 大場秀章 (2015)「ハルカラマツ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.388
- ^ 松村任三、日本植物新稱, The botanical magazine,『植物学雑誌』,Vol.3, No.29, p.248, (1889).
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1485
- ^ ハルカラマツ、日本のレッドデータ検索システム、2022年11月12日閲覧
- ^ a b マルミノハルカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.163-164
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.476
参考文献
[編集]- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II離弁花類』、1982年、平凡社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 松村任三、日本植物新稱, The botanical magazine,『植物学雑誌』,Vol.3, No.29, p.248, (1889).