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ハルカラマツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハルカラマツ
栃木県日光市 2022年6月中旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: キンポウゲ科 Ranunculaceae
: カラマツソウ属 Thalictrum
: ハルカラマツ T. baicalense
学名
Thalictrum baicalense Turcz. ex Ledeb. (1838)[1]
和名
ハルカラマツ(春唐松)[2]

ハルカラマツ(春唐松、学名:Thalictrum baicalense)は、キンポウゲ科カラマツソウ属多年草[2][3][4][5][6]。別名、ニッコウカラマツ[1][4]

特徴

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は肥厚しない。は直立し、高さ50-100cm、上部で2-3回まばらに分枝する。茎やは無毛で、腺毛もない。花期には根出葉は生存しない。茎葉は互生し、葉身は2-3回3出複葉で、小葉は広くさび状倒卵形からくさび形になり、長さ1.5-5.5cm、先は切形から円形で浅く3裂し、基部はくさび形になり、縁に粗い鋸歯がある。葉柄の基部に托葉があり、暗褐色の膜質で、縁は不規則に切れ込み、小葉柄の基部に小托葉はない。上部の茎葉は小型になり、ときに無柄になる。小葉の葉質は草質で、裏面の葉脈が隆起する[2][3][4][5][6]

花期は6-7月。花序は散房状につき、は径8-10mm、白色でわずかに黄色または緑色を帯び、花柄は長さ0.5-1.5cm。やや花弁状の片は長さ3mm、楕円形で黄白色、早落性で花期には落ちる。花弁はない。雄蕊は多数あり長さ5mm、葯は黄白色で長さ1mm、花糸は棍棒状で葯より幅が広く、葯隔は突出しない。雌蕊は雄蕊群の中央に4-8個あり、柱頭は円盤状になる。果実は長さ約3mmの球状楕円形の痩果になり、4-8個つき、縦に8本の稜があり、基部に長さ0.3mmの短い果柄がある。痩果の花柱は短いが残存し、柱頭はわずかに内曲する。染色体数2n=14[2][3][4][5][6]

分布と生育環境

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日本では、北海道、本州の福島県栃木県群馬県埼玉県に分布し、山地帯の湿り気のある草地や林縁に生育する[2][3][4][5]。世界では、朝鮮半島北部、中国大陸東北部、シベリア東部に分布する[3][4]

名前の由来

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和名ハルカラマツは、「春唐松」の意であるが、春に花が咲くわけではなく、花期が7-9月であるアキカラマツ(秋唐松)T. minus var. hypoleucum より早く咲くことによる[5]。植物学者松村任三 (1889) による命名である[7]

種小名(種形容語)baicalense は、「バイカル湖地方の」の意味[8]

種の保全状況評価

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都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[9]。福島県-情報不足(DD)、栃木県-要注目、群馬県-準絶滅危惧(NT)。

ギャラリー

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下位分類

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マルミノハルカラマツ(学名:Thalictrum baicalense Turcz. ex Ledeb. f. levicarpum Tamura (1953)[10])- 痩果にある稜が目立たず、表面が平滑なものを品種として区別する[4]。栃木県日光市がタイプ標本の採集地[10]

分類

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同属のなかに、似た種にカラマツソウ T. aquilegiifolium var. intermedium がある。同種と本種の日本における分布は、北海道、本州であるが、カラマツソウの本州での分布域は広く、西日本にまで及ぶ。一方、本種の本州における分布域は福島県・栃木県・群馬県・埼玉県の各一部と狭い。栃木県日光市では、両種が同地域にみられるが、花期は本種の方がやや早い。同種の茎葉の基部にある托葉は膜質で全縁となるが、本種の托葉は縁が不規則に切れ込む。また、両種の雄蕊の葯と花糸はほぼ同じ色で見分けがつきにくいが、カラマツソウの花の方が大きい。決定的な違いは痩果で、カラマツソウは7-15個あって楕円状になり、長い果柄があって垂れ下がるが、本種のそれは4-8個あって球状楕円形になり、短い果柄があって直立または斜上し、垂れ下がることはない[4][5][11][12]

脚注

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  1. ^ a b ハルカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.230
  3. ^ a b c d e 清水建美 (1982)『日本の野生植物 草本II離弁花類』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p.85
  4. ^ a b c d e f g h 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.164-165
  5. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.478
  6. ^ a b c 大場秀章 (2015)「ハルカラマツ」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.388
  7. ^ 松村任三、日本植物新稱, The botanical magazine,『植物学雑誌』,Vol.3, No.29, p.248, (1889).
  8. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1485
  9. ^ ハルカラマツ、日本のレッドデータ検索システム、2022年11月12日閲覧
  10. ^ a b マルミノハルカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  11. ^ 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.163-164
  12. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.476

参考文献

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  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II離弁花類』、1982年、平凡社
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム
  • 松村任三、日本植物新稱, The botanical magazine,『植物学雑誌』,Vol.3, No.29, p.248, (1889).