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パイソン (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
前方にあるのがパイソン5

パイソンは、イスラエルラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ社で開発された短距離空対空ミサイル。前作のシャフリル1および2の経験を生かして開発された。初期型はパイソン3であり、発展型のパイソン4および5がある。

概要

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来歴

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第四次中東戦争までに、イスラエルAIM-9Bを改良したシャフリル2を開発・生産・運用していた。1970年代前半よりシャフリル2の後継のミサイルとして、パイソン3の開発が開始された。シャフリルが2まであったために、パイソンは3からの名称となっている。

パイソン3

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F-15D アケフに装備されたパイソン3

パイソン3は、シャフリル2よりも射程が延長され、全方位能力を有するようになった。前部に4枚のカナードを持ち、後部に4枚の安定翼を持つ。1982年レバノン侵攻で実戦使用もなされている。中国でもパイソン3をライセンス生産し、PL-8として制式化されている。射程は15km。

PL-8

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PL-8を装備したJ-11B

霹靂-8は中国の西安東機械工場によるライセンス生産型。1982年にライセンス契約が結ばれ、八号工程の計画名で1983年9月15日から技術移転を開始、1989年4月には技術移転を完了し、運用に入った。
以下の型式がある。

PL-8
イスラエルより輸入したもの。
PL-8A
イスラエルより輸入した部品でノックダウン生産したもの。
PL-8B
完全なライセンス生産型で、すべての部品を国内製造している。また、改良も加えられており、シーカーPL-9Cen)のものに変更し、ヘルメット装着目標指示システムと連動できるようにしている[1]
PL-8H
弾頭を10kgに軽量化した地対空ミサイル型。中国航空輸出入公司(CATIC)によって開発された。

パイソン4

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F-15D アケフの翼下に装備されたパイソン4

1990年代より配備開始。前部に4枚ずつ2組のカナードを持ち、後部に4枚の安定翼を持つ。センサー赤外線紫外線のデュアル・バンドに対応し、対妨害能力を向上、HMSによるヘルメット・サイト照準にも対応する。撃墜率を上げるためレーザー信管と着発信管の2つの近接信管を搭載している。

パイソン5

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パイソン5

2000年代より配備開始。前部に4枚ずつ2組のカナードを持ち、後部に4枚の安定翼を持つ。慣性航法装置を内蔵し、発射後ロックオン(LOAL)能力を備え、全方位能力のほか、自機後方象限を含む全方位への発射能力を有する。誘導方式はデュアル・バンドに対応した赤外線画像誘導。オフ・ボアサイト能力も優れており、センサー角は100°を有する。射程は20km。ボーイング社のUCAVに搭載される空対空兵器の候補に挙がっており、少数がサンプルとしてアメリカに輸出されている。また、SPYDER-MR用としてブースターを装備し射程を延ばしたパイソンMRと呼ばれるモデルがある[2]

派生型

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スパイダー・システムの内、ミサイル発射機

ミサイルの派生型としてSPYDER = Surface-to-air PYthon and DERby 地対空ミサイルシステムがあり、ダービーおよびパイソン5が地対空ミサイルとして用いられる。

採用国

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2本のパイソン3を装備した中国海軍所属のJ-8戦闘機

諸元表

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上よりシャフリル1、シャフリル2、パイソン3、パイソン4、パイソン5
パイソン3 パイソン4 パイソン5
直径 15cm 16cm
全長 295cm 310cm
全幅 80cm 50cm 64cm
重量 120kg 103.6kg
弾頭重量 11kg
推進方式 固体燃料ロケット
誘導方式 赤外線ホーミング(IRH) 二波長光波ホーミング(IR/UVH) 赤外線画像(IIR)
射程 15km 20km以上
飛翔速度 M3.5 M4以上

参考文献・脚注

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  1. ^ 軍事研究2015年2月号P.40-41
  2. ^ Python-MR
  3. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 288. ISBN 978-1-032-50895-5 

関連項目

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外部リンク

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