コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

パドロン (トウガラシ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
生のパドロン
揚げたパドロン

パドロンまたはピメントス・デ・ パドロン西: Pimentos de Padron、「パドロンのトウガラシ」の意)は、トウガラシの辛味種の一つであるが、辛味を呈する前の未成熟果を食すのが一般的である。スペインガリシア州ア・コルーニャ県パドロンに由来[1]し、同地のほか日本でも僅かに栽培されている[2]

特徴

[編集]

実の大きさは、条件が良ければ一般的なピーマンよりも大きくなるが、野菜として主に利用するのは約5 cm程の生長途上の若い果実である。色は明るい緑色から黄緑色で、成熟すると赤色になる。出荷されている物のほとんどは辛味の少ない味であるが、10–25%のものは非常に辛い。辛くなるかどうかは、成長中の水分及び日光、さらに温度による。土壌のみに水をかけた場合は刺激の少ない味になり、を含む植物全体に水をかけた場合は辛くなると言われている[3]。油で揚げ、タパスとして食べる[4]

ウーリャ川英語版及びその支流サル川の土手に沿って生育し、特に名前の由来となったパドロンの町の温室に多い。スペイン南部、アメリカ合衆国メキシコモロッコ等でも育つ。5月中旬以降の小さいうちに収穫され、5月末から10月末まで、時に11月に入っても販売することがあった。しかし、温室での栽培が行われるようになり、年中入手できるようになった。

形は細長い円錐形である。味はマイルドだが非常に辛いものもあり、この性質がガリシアの有名な格言"Os pementos de Padron, uns pican e outros non"(パドロン唐辛子は、いくつかは辛く、いくつかはそうではない)の元になった[5]

利用

[編集]

野菜として食用にするのは主に若い果実である。種子も未成熟で柔らかいので、種子やワタを取らずにそのまま調理するのが一般的である。食味はほのかな甘みがあり、えぐみや青臭さはピーマンよりも少ない。一般的なピーマンやししとうより未成熟な状態で収穫しているため、それらより実が柔らかく、幾分ジューシーである。これらの特徴により、ピーマンやししとうが苦手な子供でも食べやすいと言われるが、たまに強い辛味を呈しているものもあるので注意が必要である。

クセがないので和洋中、エスニックなど何にでも合う。油と相性が良く、本場スペインでは素揚げして塩を振っただけのシンプル料理がビールのお供の定番となっている。スペインバルなどでは、たまにある辛味果はアタリと呼ばれ、ロシアンルーレット感覚で楽しまれている。

生果は日本国内での生産量は少なく、輸入もない為、入手困難なレア野菜の一つとなっている。冷凍フリッターなどの加工品は輸入もされている。

赤く成熟した果実は、初めはパプリカのように甘く、後味は激辛という個性を持っている。その強烈な辛味の為、野菜としての利用よりも香辛料としての利用に向いていて、日本国内でも、チョリソー唐辛子味噌柿の種などに利用する事業者があった。

栽培

[編集]

一般的な露地栽培では春に播種し、5月から10月頃まで収穫できる。基本的にはピーマンやししとうに準じた方法で栽培できる。

食味には定評があるが、日本国内での栽培はあまり拡がっておらず、マイナー野菜の為、国内の生産量など統計データは存在しない。栽培が拡がっていない理由については、下記の要因が考えられる。

  1. 国内の種苗メーカーが種子販売を行っていない為、種子や苗自体の入手が困難。
  2. 大きくなったり、ストレスがかかると、辛味を呈する果実の割合や、辛味の程度が増してしまうので、デリケートな管理が求められる。近年の夏場の強烈な暑さは栽培をより難しくしていて、条件が悪ければ、ほぼ全て辛味果になることもある。
  3. 辛いか辛くないかを非破壊で正しく選別するには、ある程度の熟練を要する。選別能力が拙いと、商品の辛味果の比率が高かったり、強過ぎる辛味のものが含まれてしまって、クレームを受ける原因になる。

脚注

[編集]
  1. ^ Gourmetour: Food, Wine & Travel Quarterly Magazine. INFE. (2000). p. 89. https://books.google.com/books?id=zz8sAQAAMAAJ 
  2. ^ 【食材ノート】スペインのシシトウ「パドロン」素揚げ・串焼き、つまみに新顔『日経MJ』2020年6月1日(フード面)
  3. ^ Galician Grocer
  4. ^ DK Publishing (15 February 2010). Back Roads Spain. DK Publishing. pp. 34. ISBN 978-0-7566-7181-5. https://books.google.com/books?id=7LkM8Q7-MtUC&pg=PA34 
  5. ^ Robert Fedorchek (21 September 2010). The Translators. iUniverse. pp. 258. ISBN 978-1-4502-4944-7. https://books.google.com/books?id=7c5GP4DqDvUC&pg=PA258 

関連項目

[編集]