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ヒシカラスザメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヒシカラスザメ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
: ツノザメ目 Squaliformes
: カラスザメ科 Etmopteridae
: カラスザメ属 Etmopterus
: ヒシカラスザメ E. virens
学名
Etmopterus virens
Bigelow, Schroeder & S. Springer, 1953
英名
Green lanternshark
分布

ヒシカラスザメ Etmopterus virensカラスザメ科に属する深海性のサメの一種。西部大西洋の上部大陸斜面に分布する。全長26cm。細長い体と尾を持ち、皮歯は円錐形。背面は暗褐色、腹面は黒。発光器を持ち、カウンターイルミネーションやコミュニケーションに用いる。群れで頭足類を捕食する。無胎盤性胎生で産仔数1-3。IUCNは保全状況を軽度懸念としている。

分類

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1953年、Henry B. Bigelow・William C. Schroeder・Stewart SpringerによってBulletin of the Museum of Comparative Zoology at Harvard Universityにおいて記載された。タイプ標本はメキシコ湾北部の深度403mから得られた20.3cmの雄である。種小名virensラテン語で"緑"を意味する[2][3]

分布

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西部大西洋の上部大陸斜面にのみ生息する。メキシコ湾ではテキサスからフロリダキューバユカタン半島。カリブ海ではホンジュラスニカラグアパナマベネズエラ、おそらくブラジルまで分布する[1]底生で深度196-915mから記録があるが、一般には350m以深である[4][5]

形態

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黒い模様に発光器を含む

体は細く、丸く短い吻と細長い尾がある。最大で全長26cmの個体が知られる[5]。眼は楕円形で非常に大きい。鼻孔には短い前鼻弁がある。上顎歯列は29-34、個々の歯の尖頭は細く、3対以下の小尖頭に取り巻かれる。下顎歯列は24-32、 個々の歯は倒れた細い尖頭を持ち、基部で結合して全体で一枚の刃となる[4]。5対の鰓裂は非常に短く、噴水孔と同じくらいの長さである[2]

胸鰭は幅広く丸い。第一背鰭は胸鰭の後端から始まり、前方に棘がある。第二背鰭の棘はその2倍程度の長さで、背鰭間の距離は吻から第一鰓裂までの距離と同じくらいである。臀鰭はない。尾鰭は低くて細く、下葉は目立たない。上葉は頭部と同じくらいの長さである。体側の皮歯は棘状で頑丈、隙間を開けて不規則に配列する。吻はほぼ皮歯で覆われる[2][4]。背面は暗褐色から灰色、腹面と吻は黒。腹鰭の上部から後方にかけて黒い模様があり、尾にも薄い黒の模様がある[4]。これらの黒い模様の中には、多数の発光器がある[5]

生態

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成体と仔魚

腹面の発光器を上からの光強度に同調させ、捕食者に対するカウンターイルミネーションに用いる。他の深海鮫のように、松果体上部にある黄色い点で光の強さを感じ取ることができる[6]。散発的にしか漁獲されないが、獲れるときは大量に取れるため群れで移動すると考えられる[2]。発光器は群れを維持するためのコミュニケーションに利用されている可能性もある[6]

餌は主にイカタコ[4]、胃内からかなり大きな眼や嘴が発見されるため、顎はかなり広げることができると考えられる[6]。自身より大きな獲物をどのように捕食するのかは不明だが、Stewart Springerは群れで狩りをする可能性を指摘している[1][6]。他のカラスザメ類のように無胎盤性胎生で、産仔数は1-3[4]。出生時は全長9cm[5]、雄は18.3-23.6 cm、雌は22.0-25.7cmで性成熟する[1]

人との関連

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深海漁業で比較的多く混獲されるが、小さいため価値はない。現在は特に大きな脅威はないためIUCNは保全状況を軽度懸念としている。だが他の深海鮫と同じように情報が不足しているため、漁業の拡大には警戒する必要がある[1]

出典

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  1. ^ a b c d e Horodysky, A.Z. and G.H. Burgess (2006). "Etmopterus virens". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2008. International Union for Conservation of Nature. 2009年9月26日閲覧
  2. ^ a b c d Compagno, L.J.V. (1984). Sharks of the World: An Annotated and Illustrated Catalogue of Shark Species Known to Date. Rome: Food and Agricultural Organization. p. 88. ISBN 9251013845 
  3. ^ Bigelow, H.B., W.C. Schroeder, and S. Springer (July 1953). “New and little known sharks from the Atlantic and from the Gulf of Mexico”. Bulletin of the Museum of Comparative Zoology at Harvard University 109 (3): 213–276. 
  4. ^ a b c d e f McEachran, J.D. and J.D. Fechhelm (1998). Fishes of the Gulf of Mexico: Myxiniformes to Gasterosteiformes. University of Texas Press. p. 119. ISBN 0292752067 
  5. ^ a b c d Compagno, L.J.V., M. Dando and S. Fowler (2005). Sharks of the World. Princeton University Press. p. 110. ISBN 9780691120720 
  6. ^ a b c d Ellis, R. (1996). Deep Atlantic: Life, Death, and Exploration in the Abyss. Alfred A. Knopf. pp. 195–197. ISBN 1558216634