ビショップ・フィッシュ
ビショップ・フィッシュ(「海の司教」の意)またはシー・モンク(「海の修道士」の意)とは、中世ヨーロッパの民話に登場する伝説の海洋生物。
特徴
[編集]巨大な魚の姿をしているが、尾鰭が脚、胸鰭が鉤爪のついた腕のように発達しており、頭は円錐形。人間のように直立歩行で移動する。
記録・目撃談
[編集]ノルウェーなどでビショップ・フィッシュが浜に打ち上げられた、もしくは網にかかったと記録されている[1]。
スイスの博物学者コンラート・ゲスナーの著書『動物誌』には、1531年にポーランドからドイツにかけての海域でビショップ・フィッシュが捕獲されたという記録がある[1][2]。捕獲されたビショップ・フィッシュは司祭達の元へと連れてこられたが、手のような胸鰭で合図をして逃がして欲しいと訴えた。懇願を承諾して司祭達が海へ逃がしてやると、ビショップ・フィッシュは十字を切って礼をして海原へ消えて言ったという。
ゲスナーの『動物誌』には、ビショップ・フィッシュがイラスト付きで紹介、掲載されている[3]。『動物誌』に掲載されたイラストは多くの書籍で流用され、アンブロワーズ・パレの『怪物と驚異』、ギヨーム・ロンドレの『海の魚類について』、ウリッセ・アルドロヴァンディの『怪物誌』で確認できる[1]。
正体
[編集]ビショップ・フィッシュの正体については諸説あり、カスザメ、セイウチ、ズキンアザラシなどの候補が挙げられている。デンマークの動物学者、ヤペトス・ステーンストルプは、ドイツ-ポーランド海域で捕獲されたビショップ・フィッシュは巨大なイカであったという説を提唱し、両者を比較したイラストを発表した。
地上と同じように、海中にも聖職者が存在するキリスト教的な世界観が、ビショップ・フィッシュの創造に影響を与えたと言われている[4]。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 松平俊久『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』蔵持不三也監修、原書房、2005年3月。ISBN 978-4-562-03870-1。
- ド・ドンデ, ヴィック『人魚伝説』荒俣宏監修、富樫瓔子訳、創元社〈「知の再発見」双書 32〉、1993年11月。ISBN 978-4-422-21082-7。
- ローゼン, ブレンダ『妖怪バイブル - 幻想の生きものについて知りたかった事の全てが解る』中谷友紀子訳、ガイアブックス、2009年8月、143頁。ISBN 978-4-88282-702-3。