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ビニロン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ビナロンから転送)

ビニロン(vinylon)は、ポリビニルアルコールアセタール化して得られる合成繊維の総称である。別名ビナロン

概要

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北朝鮮・興南の2.8ビナロン連合企業所(2010年8月撮影)。北朝鮮はビニロン生産に力を入れている

京都帝国大学桜田一郎および共同研究者の李升基、大日本紡績(現:ユニチカ)の川上博らによって1939年に初めて合成された。ナイロンに2年遅れで続き世界で2番目に作られた合成繊維であり、日本初の合成繊維である。当初は「合成一号」や「カネビアン」と呼ばれていたが、1948年に「ビニロン」と改称された。工業化の研究は戦争のため遅れたほか、 戦後は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による人造繊維生産能力制限により大量生産ができない状態が続いた[1]。 桜田と友成九十九、川上らの研究によって倉敷レイヨン(現:クラレ)、大日本紡績(現:ユニチカ)で工業生産が開始されたのはGHQによる制限が撤廃された1950年のことであった。

戦後に李升基を受け入れた北朝鮮では、ビニロンは同国の発明品とされ、同国主席の金日成が命名したビナロン비날론、Vinalon)という名称で呼ばれる。北朝鮮では、「主体科学」の先駆けとしてビナロン繊維産業に力を入れており、同国で生産される軍用を含んだ被服類に多く使われているといわれている。

性質

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合成繊維中、唯一親水性で吸湿性であるという特徴を持っており、綿に似た風合いの繊維である。また化学変化や熱に強く、強度・弾性率、耐候性、耐薬品性に優れる。反面、染色しにくい、しなやかさに欠ける(ごわごわする)という短所があり、衣料用の繊維としては使用しづらい。ゆえに、産業用資材として用いられることが多い。主な用途としては、ロープ海苔網、ゴムプラスチックの補強繊維、石綿に代わるセメント板の補強材などが挙げられる。

また、フィルム状にした場合の平面性や光学的透過性を生かして液晶表示装置の偏光板や、衣類(ワイシャツポロシャツなど)や寝装品(布団シーツ、カバーなど)など各種繊維製品の外装フィルムなど、繊維以外の使用法も開発されている。

湿った状態からアイロン等の熱源で加熱加圧することにより糊付けしたような肌触りを持つことから業務用シーツの素材に使用したり、熱に強い性質を利用して難燃素材として作業服等に使用されている。

焼却してもダイオキシン塩化水素などの有害ガスが発生しないので、前述のように包装材としてもよく利用されている。

合成法

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ビニロンの合成
ビニロンの合成

ポリビニルアルコールに酸触媒の存在下でホルムアルデヒドを反応させる。それにより、ポリビニルアルコールの1,3-ジオール部でホルマール化が起こり、環状の1,3-ジオキサン構造が導入される。なお、この際に確率的には13.5%のヒドロキシ基が未反応のまま残る。

用途

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2009年の日本におけるビニロン繊維の生産量は3万1千トンである[2]。なお、2010年以降、その生産量は個別の統計ではなく「その他」にまとめられている。学生服レインコートロープ漁網[3]繊維補強コンクリートの補強用繊維、外科用縫合糸などに、また非繊維用途として農業資材や水溶性樹脂素材、包装材や偏光板等にも用いられている。自衛隊、幕舎(テント)、作業服にもビニロンとの混紡製品がある。

出典

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  1. ^ 岩波書店編集部 編『近代日本総合年表 第四版』岩波書店、2001年11月26日、380頁。ISBN 4-00-022512-X 
  2. ^ 日本の化学繊維工業―化学繊維の生産”. 統計資料. 日本化学繊維協会. 2016年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月26日閲覧。
  3. ^ ソウル駐在特別記者・黒田勝弘 北核開発の父は京大OB”. 産経ニュース (2012年5月19日). 2013年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月19日閲覧。