安全フィルム
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(ビネガーシンドロームから転送)
安全フィルム(英語: safety film、セーフティーフィルムとも)は、写真フィルムの一種。映画フィルム上に映像を記録する感光乳剤をアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、あるいはポリエステル[1]に接着したフィルム・ストックのこと。これらは、すべて可燃性が低く、もし着火したとしてもゆっくり燃える。
1940年代までに映画用あるいは写真用に使われていたナイトレートフィルムは、ベースにニトロセルロースを使っていたため、常温でも非常に燃えやすく不安定であった。そのため、初期の映画の多くは、燃えたり腐食したりして永久に失われた。日本でも1984年のフィルムセンター火災により映像ライブラリが痛手を負っている。
TACフィルム
[編集]トリアセチルセルロース(TAC)をベース素材としたフィルム。1950年代から長らく主流だったが、TACフィルムを日本のような高温多湿の場所で長期保存した場合、徐々に加水分解・劣化することが判明した。これは劣化したフィルムから酢酸臭がすることからビネガー・シンドローム(Vinegar syndrome)と呼ばれている[2]。公文書の保管に使われるマイクロフィルムもTACフィルムを利用しており、このビネガーシンドロームに対する対処法の研究が急がれている。
ポリエステルフィルム
[編集]1990年代から市場導入された、アセテートフィルムよりも劣化が少ないとされる写真フィルム。アドバンストフォトシステムではPEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂がベース素材として採用された[3][4]。現在では、より強く長持ちするPET(ポリエチレンテレフタレート。通称「ESTERベース」)も使われている。
関連項目
[編集]- フィルム・アーカイヴ
- 失われた映画
- 1937年フォックス保管庫火災 ‐映像制作会社フォックス映画フィルム保管庫におけるフィルム成分分解発火による火災
- 1965年MGM保管庫火災 ‐ 映像制作会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤーの保管庫で起きた電気ショートからナイトレートフィルムに燃え広がった火災
脚注
[編集]- ^ 近年増加傾向にある
- ^ Adelstein, P.Z.; Reilly, J.M.; Nishimura, D.W. & Erbland, C.J. (May 1992). “Stability of Cellulose Ester Base Photographic Film: Part I-Laboratory Testing Procedures”. SMPTE Motion Imaging Journal 101 (5): 336. doi:10.5594/J02284. ISSN 1545-0279.
- ^ APSの市場導入は1996年
- ^ 出典:"須藤正夫、新しいポリエステル樹脂と包装材料"
外部リンク
[編集]- “映画用フィルムの劣化”. 金澤勇二. 2013年6月3日閲覧。