ビリー・ミリガン
この記事は英語版の対応するページを翻訳することにより充実させることができます。(2021年8月) 翻訳前に重要な指示を読むには右にある[表示]をクリックしてください。
|
ビリー・ミリガン Billy Milligan | |
---|---|
生誕 |
William Stanley Morrison(ウィリアム・スタンリー・モリスン) 1955年2月14日 アメリカ合衆国 マイアミビーチ |
死没 |
2014年12月12日(59歳没) アメリカ合衆国オハイオ州コロンバス |
国籍 | アメリカ合衆国 |
別名 | William Stanley Milligan(ウィリアム・スタンリー・ミリガン) |
親 |
父:ジョニー・モリスン 母:ドロシー・ミリガン 義父:チャーマー・ミリガン |
ビリー・ミリガン (Billy Milligan, William Stanley Milligan, 1955年2月14日 - 2014年12月12日) は、アメリカ合衆国生まれの男性。強盗強姦事件で逮捕・起訴されたが、彼は解離性同一性障害(解離性同一症)を患っていると主張、裁判で解離性同一症と事件の関わりにおいて注目され、有名になった。日本でもダニエル・キイスの著作『24人のビリー・ミリガン』によりその名を広く知られた。
事件の概要
[編集]以下の内容は関連書籍のダニエル・キイスの書籍による。
ビリーは、1977年に、オハイオ州立大学キャンパス内にて、3人の女性に対する連続強姦および、強盗の容疑で逮捕された。裁判の計画を進める中、弁護士との打ち合わせの際に自分はビリーではなく、ビリーは今眠っていると証言する。ビリーの担当弁護士となったジュディ・スティーヴンスンは不信を持ち、接見を通して彼の異常性に気付く。裁判を受けられる能力に疑問を持ったジュディは、検事や精神科医などを呼ぶ。その後の調査により彼は、ビリー(基本的人格)、デイヴィッド、ダニー、トミー、アレン、同性愛者のアダラナ(女性人格)、イギリス訛りのアーサー、レイゲンなど、合計 23 人の人格を持っていることが明らかとなった。
元々の人格であるビリーは、小さい頃、実の父親(ジョニー・モリスン)が自殺し、その後義父(チャーマー・ミリガン)に縄で縛られ吊るされるなどの身体的虐待や挿入を含む性的虐待を受けており、その影響で人格が複数生まれることになる。自分の与り知らぬところで時間が進んでいることにわけの分からなくなったビリーの人格は、17歳の時にビルの屋上から飛び降り自殺を図る。しかし、飛び降りる直前にレイゲンが彼を止め自殺は失敗し、長い間眠らされる事となった。
その後、犯罪を好むケヴィンの人格が薬局強盗事件を起こして逮捕され、約1年半刑務所に服役する。刑務所のような場所では強いレイゲンがスポット(脳内の場所の名前。その場所に立った人格が意識を持つ)を支配するようになる。仮釈放になった後は複数の人格が入れ替わる状態が続いていたため、定職について生活を営むことができなかった。まずアダラナが花屋でアルバイトを始めるが、客の目の前で突然他の人格と入れ替わり、客に迷惑をかけたため解雇されてしまう。その後、トミーが工事現場でアルバイトを始めるが、そこでもまた突然他の人格と入れ替わって仕事を嫌がり、解雇されてしまう。そしてキャンパス婦女強姦強盗事件の前にトミーが機械の補修員の仕事に就くが、勤め先の上司と折り合いが悪くなり解雇されてしまう。勤め先の住居にも居られなくなった後、ある時レイゲンが目を覚ますと大量の請求書(車や家具などの)を見つける。その支払いをするためにレイゲンが強盗を計画し、オハイオ州立大学に到着する。しかし薬の影響のために他の人格にスポットを与えてしまい、キャンパスにて人格が突然入れ替わり、強姦強盗を合計3件犯してしまう(まずアダラナとなって女性に近寄り、その後フィリップが現れてその女性を車で人気のない林へ連れ去って乱暴し、その後ケヴィンがその女性を脅して銀行へ連れて行き、小切手を現金化させ奪った)。レイゲンの人格に戻ると、手元に札束があったため、誰かが上手くやったと思った。しかしまた他の人格が別のこと(請求書の支払いや画材購入など)に使ってしまい、この繰り返しとなる。警察に逮捕された彼は、検事署内で解離性同一症だと知られる。
真似できないようなイギリス訛りの人格(アーサー)や、煙草を吸う愛想の良い人格(アレン)などそれぞれの人格に入れ替わり、でまかせとは思えないものだったため検事官や弁護士、精神医学者には演技ではないと信じられた。
人格アレンの証言によると、脳内のスポットと呼ばれる一点を中心として各人格が立っており、スポットに立つ人格が意識を持つ。比較的安全である場所ではアーサー、刑務所内や検事署内などビリーにとって危険である場所では、レイゲンがどの人格をスポットに立たせるかを決めるという。なお、このとき基本人格ビリーは、目を覚ますと自殺をする恐れがあるため寝かせたままだという。
1978年3月からハーディング病院にてビリーの精神治療が開始された。何とか法廷で証言できる程度に人格を安定したビリーは1978年12月に裁判で無罪を言い渡された。 その後、アセンズ精神衛生センターの精神医学者による本格的な治療が行われ、24人目の人格、「Teacher(教師)」と名乗る統合人格が生まれた。精神医学者は、彼が最も本来の人格に適していると結論づけ、彼を本来の人格とした。ただし、この時点でTeacherが完全に意識を支配したわけではなく、ビリーの精神が完全に安定するまで他の人格と意識の交代を繰り返すことになる。
しかし、彼を危険視する政治的圧力によって、1979年10月に環境劣悪な州立ライマ病院へ移転させられ、そこでビリーは病院による虐待を受けることとなる。 ライマ病院から移動した後も環境の劣悪な病院を転々とさせられ、周囲の反対を押し切って結婚した女性との破局や、彼の身を自由にすることに対してのマスコミの非難によって彼の人格は分裂と統合を繰り返す。 彼がアセンズ精神衛生センターに戻ったのは1982年4月であった。
1985年2月にビリーを危険視する勢力が無実の罪を口実にして警察にビリーを逮捕させる。ビリーはアセンズ精神衛生センターからモリッツ司法ユニットに移され、適切な治療を受けられずに精神が分裂し始める。それを悲観したビリーはそこから脱走したが、結局逮捕される。絶望したビリーは断食による自殺を試みたが、それに慌てふためいたモリッツ司法ユニットは彼の待遇を改善したので、ビリーは断食をやめた。
彼の人格は長い年月をかけ安定し、裁判所は1991年8月に彼の精神が安定したとし、彼を解放した。
彼の人格達
[編集]以下の内容は関連書籍のダニエル・キイスの書籍による。
名前 | 英名 | 年齢 | 性別 |
---|---|---|---|
ビリー・ミリガン / ウィリアム・スタンリー・ミリガン | Billy Milligan / William Stanley Milligan | 26歳 | 男 |
:核となる主人格。
Teacher 誕生後は「ビリーU」(分裂したビリー)と呼ばれることになる。 | |||
アーサー | Arthur | 22歳 | 男 |
:上流階級のイギリス人。本人によると金縁眼鏡をかけている。
| |||
レイゲン・ヴァダスコヴィニチ | Ragen Vadascovinich | 23歳 | 男 |
:憎悪の管理者。
| |||
アレン | Allen | 18歳 | 男 |
:愛想が良い性格で、口先がうまく外部の人間との交渉を担当する。
| |||
トミー | Tommy | 16歳 | 男 |
:とても短気で喧嘩っ早い縄抜けの名人。
| |||
ダニー | Danny | 14歳 | 男 |
:いつも怯えている内気な少年。
| |||
デイヴィッド | David | 8歳 | 男 |
:苦痛の管理者。
| |||
クリスティーン | Christene | 3歳 | 女 |
:イギリス人の少女。
| |||
クリストファー | Christopher | 13歳 | 男 |
:クリスティーンの兄。 | |||
アダラナ | Adalana | 19歳 | 女 |
:孤独で内向的。
| |||
教師 | Teacher | 26歳 | 男 |
裁判で無罪が確定した後、アセンズ精神衛生センターの治療によって誕生した統合人格。
| |||
以下、13人の『好ましくない者たち』。普段はアーサーによって押さえ込まれているためほとんど出て来る事はないが、不安定な時期があった際だけはアーサーやレイゲンから逃れて人格として表に出てしまい、事件を起こした。アセンズ精神衛生センタ ーで、ドクター・デイヴィッド・コールの前で初めて姿をあらわした。 | |||
フィル / フィリップ | Phil / Philip | 20歳 | 男 |
:乱暴者。
| |||
ケヴィン | Kevin | 20歳 | 男 |
立案者。
| |||
ウォルター | Walter | 22歳 | 男 |
:オーストラリア人。
| |||
エイプリル | April | 19歳 | 女 |
:あばずれ。
| |||
サミュエル | Samuel | 18歳 | 男 |
:彷徨えるユダヤ人。
| |||
マーク | Mark | 16歳 | 男 |
:働き者だが自主性がない。
| |||
スティーヴ | Steve | 21歳 | 男 |
:極端に自己中心的。
| |||
リー | Lee | 20歳 | 男 |
:悪ふざけを好む。
| |||
ジェイスン(ジェイソン) | Jason | 13歳 | 男 |
:“安全弁”。
| |||
ボビー / ロバート | Bobby / Robert | 17歳 | 男 |
:夢想家。
| |||
ショーン | Shawn | 4歳 | 男 |
:耳が不自由。
| |||
マーティン | Martin | 19歳 | 男 |
:自慢屋で気取り屋で見栄っ張り。
| |||
ティモシー / ティミー | Timothy / Timmy | 15歳 | 男 |
花屋につとめた。だがゲイの店長に関係を迫られ心を閉ざしてしまった。 |
解放後 - 晩年
[編集]精神病院に収容されてから10年後の1988年、ビリーは退院し、1991年、オハイオの精神衛生制度と法廷から解放された。1996年に自身の所有する映画会社 "Stormy Life Productions" のあるカリフォルニアに居住しショートフィルムを制作する予定だった(が、明らかに製作されてはいなかった)。その後の彼の所在地は長い間不明であり、かつての知人たちは彼と連絡が取れなくなっていた[1]。
2014年12月12日、癌のためオハイオ州コロンバスの病院で死去[2]。59歳没。
関連書籍
[編集]- ダニエル・キイス著 『24人のビリー・ミリガン』 The Minds of Billy Milligan 、上巻 ISBN 4-15-110104-7 下巻 ISBN 4-15-110105-5 - 本人へのインタビューや関係者の証言、裁判記録などの資料に基づくビリー・ミリガンの前半生のノンフィクション。裁判の判決、アセンズ精神衛生センターでの治療、政治的圧力による州立ライマ病院への移転が決まるところまで。
- ダニエル・キイス著 『ビリー・ミリガンと23の棺』 The Milligan Wars - 上巻 ISBN 4-15-110106-3 下巻 ISBN 4-15-110107-1 - 前著の後、ライマ病院での死闘、批判勢力との戦い、長年の治療による精神の安定が語られる。1994年に日本、2000年に台湾、2009年にフランス、2018年にウクライナで出版されたが、オハイオの施設でビリーが受けた不適切と考えられる治療に対する訴訟と、映画がリリースされた際にはタイアップして出版したいという要望から、アメリカ本国では未だに出版されていない。
関連番組
[編集]- 2021年、Netflixによってドキュメンタリー番組『ビリー・ミリガン: 24の人格を持つ男』(Monsters Inside: The 24 Faces of Billy Milligan)が配信された。
このドキュメンタリーの中で、ビリーが脱走中に2件の殺人事件に関与してることに言及している。
- 2023年、Apple TV+にて上記の『24人のビリー・ミリガン』を原案としたドラマ『クラウデッド・ルーム』 (The Crowded Room) が配信された。
脚注
[編集]- ^ "30 years later, multiple-personality case still fascinates", The Columbus Dispatch, 28 October 2007
- ^ Billy Milligan dies at 59; first to use multiple personality defense Los Angeles Times 2014年12月17日