ピンハネ
ピンハネ(ぴんはね、ピン撥ね)とは、他人に取り次ぐ資金や代金の一部を、不正に掠め取ること[1]。「上前を撥ねる」とも表現される[1]。
「中抜き」がピンハネの同義語として用いられることがある[2]が、これは明らかな誤用なので、注意されたい。「中抜き」は、むしろ「商品の流通経路で、卸売など中間業者を抜かして生産者と小売業または消費者が直接に取引すること。[3]」という真逆の意味をもつ言葉である。
天下り団体、暴力団、建設業、人材派遣、芸能事務所、公共団体、民間団体などの「中間」的な組織が介入することで、労使の力関係によって否応なく生じる理不尽な慣行として広く行われてきた。
ピンハネの定義・解説
[編集]他人の稼ぎをはねるという意味からは、広く手数料や税金などもこれに当たるとする見解も存在する。またこの語は、自らは何も苦労せずに他人の利益を横取りする、暴利をむさぼるといった悪いイメージや、阿漕なイメージを伴って使われることが多い。
老人ホームや障害者施設などでも親族からの仕送りなどを施設関係者が入居者からピンハネするケースは一定数あるとされる。
一方、その利ざやが売上の数パーセント程度と小さい場合、かつ契約書などで事前に搾取する金額や割合を明記したうえで行われる場合、「ピンハネ」とはされない。
語源
[編集]「ピン」の語源を、1割の上前を意味するポルトガル語の「pinta」だとする説がある。ピンをはねる、すなわち搾取するために「ピンハネ」と呼ばれる。賭博用語でも「1」を「ピン」と呼ぶ。
エピソード
[編集]古来、搾取する「中間」の側がやくざなどの非合法組織または公務員、企業、団体の場合が多く、また、一般にそれを悪とする風潮が最近に至るまでなかったこと、取り締まる法律が整備されていなかったことなどがあいまり、一切改善されないまま現在まで続いてきたた。
利ざやの搾取、および搾取できる金額や割合は法的に制限されていないため、搾取する側の都合によって大きく異なるが、50%を超えることも珍しくない。また、建設業においては古くから元請けが下請けに丸投げし、監理もせず利益のみを得る手法が伝統的に行われてきた[4]。暴力団では上部組織が下部組織より上納金を徴収することによってピラミッド型の組織が維持される。一般には「上納金」と呼ばれるが、表向きでは「会費」「交際費」などの名目で徴収される。通常は幹部、平組員、舎弟など格付により月額が決められ毎月、「寄り合い」と呼ばれる定例会の際に徴収される。
中国では、5次下請けの殺し屋の男が割に合わない(元は200万人民元だったが5次では10万元に)と標的の男に死んだふりをさせ逮捕され6人が実刑判決を受けた[5]。依頼者と下請けに出した殺し屋は2020年のイグノーベル経営者賞を受賞した。
脚注
[編集]- ^ a b “ピン撥ね(ピンはね)の意味 - goo国語辞書”. goo辞書. 2022年5月15日閲覧。
- ^ IT業界の摘発強化へ動く公取委、根深い中抜き・買いたたき生む多重下請けにメス 玄 忠雄 日経クロステック/日経コンピュータ 2022年7月12日
- ^ コトバンク『中抜き』
- ^ こうした手法は一括下請負と呼ばれ、建設業法制定当初から禁止されている。建設業法の制定は1949年(昭和24年)であり、遅くともこの時点で、同種手法は立法措置を必要とするほどの問題となっていた。
- ^ 京都新聞2019年11月14日