フィブリン分解産物
フィブリン分解産物(ふぃぶりんぶんかいさんぶつ、Fibrin degradation products: FDP)は、血栓(clot)の変性によって生じる血液中の成分である[1]。あらゆる血栓症のマーカーとして臨床血液検査で測定される[2]。フィブリノゲンからも生成されることからフィブリン/フィブリノゲン分解産物(Fibrin/fibrinogen degradation products)とも、フィブリン分裂物(fibrin split products)とも呼ばれることがある。
概要
[編集]傷口での血栓形成は、凝固(coagulation)とも呼ばれ、フィブリン網と呼ばれるフィブリン糸の塊を作り出し、傷が治るまでその場にとどまる。傷が治るにつれて、凝固は緩やかになる。やがて血栓はプラスミンによって分解され、溶解される。血栓とフィブリン網が溶けると、タンパク質の断片が体内に放出される。この断片がフィブリン分解産物、FDPである。血栓を溶かすことができない場合、FDPの血中濃度が異常に高くなっている可能性がある。FDPの最も有名な亜型はDダイマーである。
これらFDPの血中濃度は、あらゆる血栓イベント(脳梗塞、心筋梗塞など)の後に上昇する[3]。
フィブリン/フィブリノゲン分解産物の検査は、播種性血管内凝固の診断に一般的に用いられている[4]。
FDPは大部分がフィブリノゲンよりもフィブリンから生成される[5]。
腫瘍マーカー
[編集]AMDL-ELISA DR-70(FDP)と呼ばれる腫瘍マーカーは、現在商品名Onko-Sureとして、2008年7月1日に米国食品医薬品局により体外診断用としてのみ承認され、癌胎児性抗原(CEA)値が低い場合には、CEAよりも50%有効な大腸がんのモニタリング用の定期検査が可能となった。Onko-Sureは、肺がん、乳がん、胃がん、肝臓がん、直腸がん、卵巣がん、食道がん、子宮頸がん、絨毛がん、甲状腺がん、悪性リンパ腫、膵臓がんなども検出することができる[6][7][注釈 1]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 検出可能な癌種が多いということは、追加検査を行わねば、癌の特定が困難であるということでもある。
出典
[編集]- ^ “Fibrin degradation product (FnDP) assays: analysis of standardization issues and target antigens in plasma”. Br. J. Haematol. 90 (1): 187–94. (1995). doi:10.1111/j.1365-2141.1995.tb03399.x. PMID 7786784.
- ^ 窓岩清治「線溶系マーカー」『日本血栓止血学会誌』第34巻第3号、日本血栓止血学会、2023年、317-324頁、CRID 1390577906499956608、doi:10.2491/jjsth.34.317、ISSN 0915-7441。
- ^ 「血液凝固系検査」『広島市医師会だより(第570号 付録)平成25年10月』(PDF)、第570巻、2013年10月15日。
- ^ “Fibrin/Fibrinogen Degradation Products”. 2008年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年10月28日閲覧。
- ^ “FDP定量 | SRL総合検査案内”. test-guide.srl.info. 2023年3月27日閲覧。
- ^ “510(k) summary: AMDL-ELISA DR-70® (FDP)”. January 4, 2014閲覧。
- ^ “Cancer Diagnostics”. January 4, 2014閲覧。