フィリポによる福音書
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『フィリポによる福音書』(―ふくいんしょ)または『ピリポによる福音書』は、1945年にエジプトで見つかったナグ・ハマディ写本に含まれていた初期キリスト教のグノーシス主義的な文書で、正典に取り入れられなかった外典の一つ。
概要
[編集]ナグ・ハマディ写本はコプト語で書かれている[1]。もとは2世紀後半に東シリアで成立したと考えられている。 『フィリポによる福音書』と呼ばれているが、本文中に使徒の名前はフィリポしか登場しないので、そう呼ばれているだけである。 福音書とは言いながら、イエスの言行の記録は他のものに比べて少なく、話の一貫性もあまり備えない。初期キリスト教のグノーシス主義的な思想にもとづき箴言や戒め、論考などを記した抜粋集のような形式である。
マグダラのマリアに関して、イエスの伴侶と紹介され、イエスが彼女をすべての弟子たちよりも愛していたとの記述が話題を呼んでいる。 マグダラのマリアは2カ所で触れられている。([]で囲んだところは欠損部を推定復元した部分)
[主は]マ[リヤ]を[すべての]弟[子]たちよりも[愛して]いた。[そして彼(主)は]彼女の[口にしばしば]接吻した。他の[弟子たちは] 主が[マリ]ヤ[を愛しているのを見た。]彼らは主に言った。「あなたはなぜ、私たちすべてよりも[彼女を愛]されるのですか?」救い主は答えた。「なぜ、私は君たちを彼女のように愛せないのだろうか」 — §55b、[3]
脚注
[編集]- ^ 小説『ダ・ヴィンチ・コード』では、アラム語の文献とされているが、これは誤りであることが多く指摘されている。
- ^ 「伴侶」と訳されている部分の原語は koinônos (κοινωνός)で、「連れ」「仲間」の意。英訳 companion、独訳 Gefährtin、仏訳 compagne。訳語である漢語「伴侶」には「配偶者(夫または妻)」の意味はない。日本語においても「生涯の伴侶」「一生の伴侶」などといった時に、初めて比喩的に「配偶者」を意味する。
- ^ a b 大貫、1998
参考文献
[編集]- 荒井献、大貫隆ら 『ナグ・ハマディ文書II 福音書』 岩波書店、1998年 ISBN 4000261088