フェネチリン
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
Drugs.com |
国別販売名(英語) International Drug Names |
法的規制 |
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データベースID | |
CAS番号 | 3736-08-1 |
ATCコード | N06BA10 (WHO) |
PubChem | CID: 19527 |
DrugBank | DB01482 |
ChemSpider | 18398 |
UNII | YZ0N7VL5R3 |
KEGG | D07944 |
化学的データ | |
化学式 | C18H23N5O2 |
分子量 | 341.408 g/mol |
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フェネチリン(USANとBAN:Fenethylline, INN:fenetylline)は、アンフェタミノエチルテオフィリン(amphetaminoethyltheophylline)やアンフェチリン(amfetyline)とも呼ばれ、アンフェタミンとテオフィリンのプロドラッグとして振る舞う、両薬物のコドラッグである[1][2]。精神刺激薬として、カプタゴン(Captagon)、Biocapton、Fittonの商品名で販売されている[1][2]。
歴史
[編集]フェネチリンは、ドイツのデグサ社によって1961年に初めて合成された[3]。約25年に渡り、アンフェタミン類の軽い代替薬として利用された。フェネチリンにはFDAに承認された適応はないが、現在ならば注意欠陥・多動性障害と呼ばれるであろう多動児の治療や、それほど一般的ではないがナルコレプシーやうつ病にも用いられた。フェネチリンの主な利点として、アンフェタミンほど血圧を上げず、したがって心血管疾患の患者にも利用できたことがある。
フェネチリンはアンフェタミンよりも副作用が少なく、乱用の可能性も低いと考えられていた[3]。しかし、フェネチリンは、1981年にアメリカの規制物質法のスケジュールI薬物に指定され、また1986年には世界保健機関が向精神薬に関する条約にて国際的に指定に追加したため、多くの国では違法である。とはいえ、フェネチリン乱用の発生率はかなり低い。
薬理
[編集]フェネチリンは身体によって、アンフェタミン(経口投与量の24.5%)とテオフィリン(同13.7%)へと代謝され、どちらも精神刺激薬として活性作用がある[4]。フェネチリンの生理的作用は、この2つの化合物の併用によって生じる[5]。
乱用と違法取引
[編集]商品名カプタゴンとしてのフェネチリンの乱用はアラブ諸国では一般的であり、その偽造薬は違法であるにもかかわらず入手可能である[6][7]。
フェネチリンは西アジアでは、よく知られた薬物であり、シリアの武装勢力によって利用されていると伝えられている[8]。現地で安価に簡単な処理で製造でき、5ドルから20ドルの間で販売されている[9]。流出情報によれば、武装勢力は、武器や現金に交換するためにこの薬物を輸出している[10][11]。
2015年10月26日には、サウジアラビアの王子を含む5人が、ベイルートの空港にて2トンのカプタゴンを自家用飛行機に積んでいたために拘束された[12]。11月には、シリア国境付近で、1100万錠のカプタゴンが押収された[13]。
この薬物は、シリア内戦の中心となる役割を演じた[14][15]ほか、2023年パレスチナ・イスラエル戦争の際にハマースの戦闘員も使用していたことが判明している[16]。フェネチリンの生産と販売は、武器への資金とするための大きな収益を生み、また戦闘員を好戦的にするために用いられている[15][17][18]。
出典
[編集]- ^ a b Dictionary of Organic Compounds. CRC Press. pp. 3140–. ISBN 978-0-412-54090-5
- ^ a b Index Nominum 2000: International Drug Directory. Taylor & Francis. (January 2000). pp. 431–. ISBN 978-3-88763-075-1
- ^ a b Kristen, G; Schaefer, A; von Schlichtegroll, A (1986). “Fenetylline: Therapeutic use, misuse and/or abuse”. Drug and alcohol dependence 17 (2–3): 259–71. PMID 3743408.
- ^ Ellison T, Levy L, Bolger JW, Okun R. The metabolic fate of 3H-fenethylline in man. European Journal of Pharmacology 13:123, 1970.
- ^ Alabdalla, M. A. (2005). “Chemical characterization of counterfeit captagon tablets seized in Jordan”. Forensic Science International 152 (2–3): 185–8. doi:10.1016/j.forsciint.2004.08.004. PMID 15978343.
- ^ “2011 Global Assessment of Amphetamine-Type Stimulants”. United Nations Office on Drugs and Crime. 2015年2月21日閲覧。
- ^ “Le Captagon®, arme principale des jihadistes”. Reseau Voltaire. 2015年2月21日閲覧。
- ^ Todd, Brian; McConnell, Dugald (21 November 2015). “Syria fighters may be fueled by amphetamines”. CNN 22 November 2015閲覧。
- ^ Holley, Peter (19 November 2015). “The tiny pill fueling Syria's war and turning fighters into superhuman soldiers”. The Washington Post 20 November 2015閲覧。
- ^ Colin Freeman (12 January 2014). “Syria's civil war being fought with fighters high on drugs”. The Telegraph 13 January 2014閲覧。
- ^ Stephen Kalin (12 January 2014). “Insight: War turns Syria into major amphetamines producer, consumer”. Reuters 21 April 2014閲覧。
- ^ “サウジ王子ら5人、薬物の密輸容疑で拘束 レバノン空港”. CNN. (2015年10月28日) 2016年2月21日閲覧。
- ^ “動画:1100万錠の「カプタゴン」押収、トルコ”. AFPBB News. (2015年11月21日) 2016年2月21日閲覧。
- ^ German Lopez (2015年12月21日). “Captagon, ISIS's favorite amphetamine, explained”. Vox 2016年2月21日閲覧。
- ^ a b Henley, Jon (13 January 2014). “Captagon: the amphetamine fuelling Syria's civil war”. The Guardian 31 December 2015閲覧。
- ^ “ハマス戦闘員の遺体から〝戦闘麻薬〟カプタゴンを検出 恐怖心を抑え無敵感生む”. 東スポWEB (2023年10月20日). 2023年10月20日閲覧。
- ^ “Insight - War turns Syria into major amphetamines producer, consumer” (英語). Reuters UK. 2016年2月3日閲覧。
- ^ Baker, Aryn. “Syria’s Breaking Bad: Are Amphetamines Funding the War?”. Time. ISSN 0040-781X 2016年2月3日閲覧。