フライブルク市電GT8形電車
フライブルク市電GT8形電車(フライブルクしでんGT8がたでんしゃ)は、ドイツの都市であるフライブルク・イム・ブライスガウの路面電車のフライブルク市電に導入された車両。フライブルク市電の線形条件に適した特殊な連接構造を有しており、フライブルク形(Typ Freiburg)とも呼ばれる[1][2][3]。
概要
[編集]8軸の車軸を有する3車体連接車であるGT8形は、他都市で導入された3車体連接車とは異なる連接構造を有しているのが特徴である。他都市の3車体連接車は2つの車体の中間、幌やジョイントが存在する箇所の下部に連接構造を有する台車が設置されているのが主流である一方、フライブルク市電のGT8形は前後車体の台枠が台車がない中間車体の下部に伸びており、中間車体の両端にあたる部分に動力台車が設置されている。これにより、フライブルク市電に多い急曲線に対応しながらも従来の車両からの輸送力増強が図られている他、全ての台車に主電動機を設置する事が容易となり、同じくフライブルク市電に多数存在する勾配区間にも対応している[4][5][2][3]。
デュッセルドルフ車両製造(→デュワグ)が製造を担当し、車体については1次車が導入された1970年代初頭に同社が開発した当時の最新鋭車両・マンハイム形に基づいた形状が採用されている。全車とも右側通行に適した片運転台で、乗降扉は車体右側に合計5箇所設置されている[1][3]。
1次車
[編集]1971年から1972年にかけて4両(201 - 204)が導入された車種。制御装置は旧来の抵抗制御方式に対応した機器が採用された一方、「Geamatic」と呼ばれる、抵抗値の進段を自動で制御するシステムが搭載された。幾つかの改造を経て2005年までフライブルク市電に在籍し、その後は全車ともポーランド・ウッチのウッチ市電へ譲渡されたが、2012年に営業運転を離脱し、以降は順次解体された[5][3][6][7]。
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改造後のGT8形(1次車)(1990年撮影)
2次車
[編集]フライブルク市電GT8K形電車 フライブルク市電GT8形電車(2次車) | |
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GT8K形(2013年撮影) | |
基本情報 | |
製造所 | デュッセルドルフ車両製造 |
製造年 | 1981年 - 1983年 |
製造数 | 10両(205 - 214) |
投入先 | フライブルク市電 |
主要諸元 | |
編成 | 3車体連接車、片運転台 |
軸配置 | B'B'B'B' |
軌間 | 1,000 mm |
電気方式 |
直流750 V (架空電車線方式) |
車両定員 | 294人(着席89人) |
車両重量 | 38.2 t |
全長 | 32,845 mm |
全幅 | 2,325 mm |
全高 | 3,210 mm |
主電動機出力 | 95 kw |
出力 | 380 kw |
備考 | 主要数値は[8][9][10][11]に基づく。 |
1981年から1983年にかけて10両(205 - 214)が製造された車種で、「GT8K形」とも呼ばれる。車体や台車などの基本的な構造は1次車に準拠したものだったが、制御方式が電機子チョッパ制御方式に変更され、従来の車種と比べてスムーズな加減速が可能となった。また、塗装も従来のものから変更され赤色と白色を基調とするものとなった他、前照灯の位置も変わった[10][12][13][5]。
フライブルク市電の輸送力増強に貢献し、長期に渡って使用されたが、後継車両の導入に伴い2007年から廃車が始まった。2010年代以降はフライブルク市電で最後のバリアフリーに適さない高床式車両となった事もあり朝夕のラッシュ時や臨時運用の使用が主体となり、2023年現在は2両(212、214)のみが残存する。一方、2021年時点で残存していた4両についてはドイツ各地での保存が決定している他[注釈 1]、2両(207、208)については2008年にドイツ・ウルムのウルム市電に譲渡され、双方の車体や機器を用いた両運転台の事業用車両が同市電の工場で作られている[5][13][14][15][16][17]。
3次車
[編集]フライブルク市電GT8N形電車 フライブルク市電GT8形電車(3次車) | |
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GT8N(222)(2013年撮影) | |
基本情報 | |
製造所 | デュワグ |
製造年 | 1990年 - 1991年 |
製造数 | 11両(221 - 231) |
投入先 | フライブルク市電 |
主要諸元 | |
編成 | 3車体連接車、片運転台 |
軸配置 | B'B'B'B' |
軌間 | 1,000 mm |
電気方式 |
直流750 V (架空電車線方式) |
設計最高速度 | 70 km/h |
車両定員 | 313人(着席84人) |
車両重量 | 38.5 t |
全長 | 32,840 mm |
全幅 | 2,300 mm |
床面高さ |
910 mm(高床部分) 270 mm(低床部分) (低床率9 %) |
車輪径 | 690 mm |
主電動機出力 | 150 kw |
出力 | 600 kw |
備考 | 主要数値は[4][8][9][12][18]に基づく。 |
1990年から1991年にかけて11両(221 - 231)が導入された車種で、「GT8N形」とも呼ばれる。1次車・2次車との違いは主に中間車体で、乗降扉付近、車内全体の9 %が床上高さを抑えた低床構造になっているのが特徴であり、フライブルク市電における初の超低床電車(部分超低床電車)となった[4][9][12][5][18]。
営業運転開始後、2001年から2011年にかけてはメンテナンスの簡素化や延命を目的に、制御装置をチェコのセゲレツ(Cegelec)が開発したVVVFインバータ制御方式のものへと変更された。2023年現在は事故廃車となった1両を除いた10両が在籍するが、超低床電車である「ウルボス」の増備車への置き換えにより2024年までに営業運転から撤退する予定となっている[8][12][5][19][20]。
関連項目
[編集]- GT8Z形 - 1993年から1994年にかけて導入された電車。GT8形と同様の構造を有する3車体連接車だが、車体のデザインや両運転台構造の採用、低床部分の拡大など多くの相違点が存在する[9][21][22]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 各都市に譲渡された4両の中には、フライブルク路面電車友の会(Freunde der Freiburger Straßenbahn e.V.)によって動態保存されながらも機器の故障により運用を離脱していた1両(205)も含まれる。
出典
[編集]- ^ a b “Mit dem Zeigeist”. Strassenbahn Magazin (GeraMond Verlag GmbH): 46. (2021-4).
- ^ a b Łukasz Stefańczyk 2007, p. 55.
- ^ a b c d Łukasz Stefańczyk 2007, p. 56.
- ^ a b c Norman Kampmann; Christian Wolf (2013-1-1). Die Freiburger Straßenbahn heute: Mit der Freiburger Verkehrs AG durch die Breisgaumetropole. EK-Verlag ein Imprint von VMM Verlag + Medien Management Gruppe GmbH. pp. 10-13. ISBN 978-3882554991
- ^ a b c d e f 鹿島雅美「ドイツの路面電車全都市を巡る 16」『鉄道ファン』第46巻第9号、交友社、2006年9月1日、142-144頁。
- ^ Łukasz Stefańczyk 2007, p. 57.
- ^ Kasper Fiszer (2015年4月5日). “Łódź: Najdłuższy tramwaj, najkrótsza eksploatacja”. TransportPubliczny. 2023年4月2日閲覧。
- ^ a b c “Vehicle Statistics Freiburg im Breisgau, Tramway”. Urban Electric Transit. 2023年4月2日閲覧。
- ^ a b c d Harry Hondius (2002-7/8). “Rozwój tramwajów i kolejek miejskich (2)”. TTS Technika Transportu Szynowego (Instytut Naukowo-Wydawniczy „SPATIUM” sp. z o.o): 34 2023年4月2日閲覧。.
- ^ a b “GT8 E 205”. Freunde der Freiburger Straßenbahn e.V.. 2023年4月2日閲覧。
- ^ “BILDER- Straßenbahnen - GT8 K”. Nahverkehr-Breisgau. 2010年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月2日閲覧。
- ^ a b c d “BILDER- Straßenbahnen - GT8N Niederflurmittelteil”. Nahverkehr-Breisgau. 2010年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月2日閲覧。
- ^ a b “Freiburg vor dem Generationswechsel - Gnadenfrist für die letzten sechs GT8K bis 2017”. Strassenbahn Magazin. GeraMond Verlag GmbH. 2023年4月2日閲覧。
- ^ “Geisterbahn – Eine Fotostrecke”. Freiburger Verkehrs AG (2018年4月12日). 2023年4月2日閲覧。
- ^ “Warum sind Straßenbahnen ohne Niederflur unterwegs?”. Freiburger Verkehrs AG (2016年3月31日). 2023年4月2日閲覧。
- ^ “Alte Bahnen aus Freiburg finden neue Heimat - Neue Verwendung für vier Stadtbahnwagen vom Typ GT8 K der Freiburger Verkehrs AG”. REGIOTREND (2021年10月13日). 2023年4月2日閲覧。
- ^ Gunter Mackinger (2017年8月7日). “Baden-Württemberg/Bayern: Straßenbahn Ulm - vom Aschenputtel zum Vorzeigebetrieb”. LOK Report. 2023年4月4日閲覧。
- ^ a b TRB 1995, p. 86.
- ^ “VAG bestellt acht weitere Urbos 100”. Freiburger Verkehrs AG (2021年5月28日). 2023年4月2日閲覧。
- ^ “Two new tram contracts for CAF in Germany”. Vía Libre. Spanish Railway Foundation (2021年7月14日). 2023年4月2日閲覧。
- ^ TRB 1995, p. 85.
- ^ “BILDER- Straßenbahnen - GT8Z Zweirichtungswagen”. Nahverkehr-Breisgau. 2010年1月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月2日閲覧。
参考資料
[編集]- Łukasz Stefańczyk (2007年9月). "Nowe tramwaje na linii z Łodzi do Ozorkowa" (PDF). TTS Technika Transportu Szynowego. Instytut Naukowo-Wydawniczy "TTS" Sp. z o.o: 55–62. 2023年4月2日閲覧。
- Transportation Research Board (1995年). TCRP Report 2: Applicability of Low-Floor Light Rail Vehicles in North America (PDF) (Report) (英語). 2009年3月18日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ。2023年4月2日閲覧。