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フルクトース-2,6-ビスリン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フルクトース-2,6-ビスリン酸
識別情報
CAS登録番号 79082-92-1
PubChem 105021
ChemSpider 21106440
日化辞番号 J672.820K
MeSH fructose+2,6-bisphosphate
特性
化学式 C6H14O12P2
モル質量 340.116 g/mol
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

フルクトース 2,6-ビスリン酸(フルクトース 2,6-ビスリンさん、Fructose 2,6-bisphosphate、略称: Fru-2,6-P2)は、酵素ホスホフルクトキナーゼ1英語版(PFK-1) およびフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ (FBPase-1) の活性にアロステリックに影響し、解糖系および糖新生を制御する代謝物である[1]。Fru-2,6-P2は、二元機能酵素であるホスホフルクトキナーゼ2/フルクトース-2,6-ビスホスファターゼ (PFK-2/FBPase-2) によって合成および分解される[2]

Fru-2,6-P2の合成は、酵素のPFK-2部分によってATPを用いたフルクトース-6-リン酸リン酸化を通じて行われる。Fru-2,6-P2の分解はFBPase-2による脱リン酸化によって触媒され、フルクトース-6-リン酸とPiが生成する[3]

グルコース代謝への影響

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Fru-2,6-P2は、ホスホフルクトキナーゼ1のアロステリック制御を通じて解糖系におけるグルコース分解を強力に活性化する。生理的濃度ではPFK1はほぼ完全に不活性であるが、Fru-2,6-P2との相互作用は酵素を活性化させ、解糖系を刺激し、グルコースの分解を増強する[1]

生成の調節

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細胞におけるFru-2,6-P2の濃度は、PFK-2/FBPase-2による合成および分解の調節によって制御されている。これの主な調節因子は、ホルモンインスリングルカゴンアドレナリンであり、これらはリン酸化/脱リン酸化反応を通じて酵素に影響を与える。グルカゴンの放出は環状アデノシン一リン酸 (cAMP) の生成を開始し、cAMPはcAMP依存的プロテインキナーゼを活性化する。この酵素がPFK-2/FBPase-2のNH2-末端のセリン残基をリン酸化し、FBPase-2活性は活性化され、PFK-2活性が阻害される。これにより細胞内のFru-2,6-P2の量が減少する。Fru-2,6-P2の量が減少すると、解糖系が阻害され、糖新生が活性化される。インスリンは逆の応答を開始する。ホスホプロテインホスファターゼとして、インスリンは酵素を脱リン酸化し、その結果PFK-2は活性化、FBPase-2は阻害される。追加のFru-2,6-P2が存在すると、PFK-1の活性化が起こり、解糖系が刺激されるが、一方糖新生は阻害される[3][4]

ショ糖生成の調節

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Fru-2,6-P2は、カルビン回路の最終産物であるトリオースリン酸の調節において重要な役割を果たしている。カルビン回路では、6分の5のトリオースリン酸がリブロース-1,5-ビスリン酸を作るためにリサイクルされる。残りの6分の1はスクロースへと変換されるか、でん粉として貯蔵される。Fru-2,6-P2は、スクロース合成に必須であるフルクトース-6-リン酸の生成を阻害する。光反応における光合成の速度が速い時、トリオースリン酸類は常に生産され、Fru-2,6-P2の生産は阻害され、その結果スクロースが生成する。Fru-2,6-P2の生成は、植物が暗条件の時に活性化される[5]

脚注

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  1. ^ a b Lange AJ. “fructose-2,6-bisphosphate”. University of Minnesota. 2012年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月20日閲覧。
  2. ^ Wu C, Khan SA, Peng LJ, Lange AJ (2006). “Roles for fructose-2,6-bisphosphate in the control of fuel metabolism: beyond its allosteric effects on glycolytic and gluconeogenic enzymes”. Adv. Enzyme Regul. 46 (1): 72–88. doi:10.1016/j.advenzreg.2006.01.010. PMID 16860376. 
  3. ^ a b Kurland IJ, Pilkis SJ (June 1995). “Covalent control of 6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6-bisphosphatase: insights into autoregulation of a bifunctional enzyme”. Protein Sci. 4 (6): 1023–37. doi:10.1002/pro.5560040601. PMC 2143155. PMID 7549867. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2143155/. 
  4. ^ Smith WE, Langer S, Wu C, Baltrusch S, Okar DA (June 2007). “Molecular coordination of hepatic glucose metabolism by the 6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6- bisphosphatase:glucokinase complex”. Mol. Endocrinol. 21 (6): 1478–87. doi:10.1210/me.2006-0356. PMID 17374851. 
  5. ^ Nielsen TH, Rung JH, Villadsen D (November 2004). “Fructose-2,6-bisphosphate: a traffic signal in plant metabolism”. Trends Plant Sci. 9 (11): 556–63. doi:10.1016/j.tplants.2004.09.004. PMID 15501181. 

関連項目

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