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フロネシス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

フロネシス: φρόνησις, phronesis, プロネーシス)とは、古代ギリシア哲学、特にプラトンアリストテレスによる哲学的な概念であり、知的・賢明に思考・判断・実践できる能力を指す。知慮思慮、賢慮、知恵などと訳される。

概説

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プラトンは『国家』第4巻において、このプロネーシス(知慮)を、アンドレイア勇気)、ソープロシュネー節制)、ディカイオシュネー正義)と共に、国家にも個人にも共通して求められる徳性として言及しており、これが後世において枢要徳四元徳)と呼ばれるようになった。

アリストテレスは『ニコマコス倫理学』第6巻[1]の「知的な徳性(卓越性)」の説明の第7章において、「学知(エピステーメー)と直知(ヌース)を備えた根源的・相対的な知」である「Σοφια ソフィア(智慧)」と対比させる形で、「実践的・相対的・個別的な知」である「Φρόνησις フロネシス(知慮)」を説明している。

アリストテレスは、「倫理的(実践的)な徳性(卓越性)」に関して、「中庸」(メソテース[2])を守ることが大事であると説く。中庸とは、実践的・相対的な徳性に関して、極端に走らず「適度」を維持する態度のことであり、勇敢(臆病と蛮勇)、節制(快楽苦痛)、寛厚と豪華(財貨について)、矜持名誉について)、温和(怒りについて)、親愛真実(正直)機知交際について)等を指している。そして中庸を守る徳性をプロネシスであるとする。

日本

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2006年頃から野中郁次郎がフロネシスの重要性を提唱し続けている。科学的知識と実践的知識を融合して、創造的な行動をする能力を指している。「個別具体的な場面のなかで、全体の善のために、意思決定し行動すべき最善の振る舞い方を見出す能力」[3]である。深い倫理[注 1]歴史観、社会観、政治観、的感覚に基づく判断・行動である。そのため個人と社会の成熟が必要とされている。

野中郁次郎は、2011-2012年に福島原発事故独立検証委員会委員として活動したときに、首相官邸[注 2]東京電力福島原発事故への対応を検証し、「失敗の本質」で28年前に指摘した日本軍の失敗の原因である「フロネシスの欠如」を目の当たりにしたとしている。2006年12月に黒川清[注 3]が首相官邸[注 4]で野中の論文[4]を引用したにもかかわらず、そのまま引きずっているからである。
  1. イデオロギーに縛られ、現実的な対処ができなかった。
  2. 同質的メンバーで独善的に対処した。
  3. 官僚制を生かす統合・統制能力の欠如。
野中は、「フロネティック・リーダー」が日本を再生させると考えている。
彼らの持つべき能力として、野中は次の6点を挙げる。
  1. 善い目的を作る
  2. 場をタイムリーに作る
  3. ありのままの現実を直観する
  4. 直観の本質を物語る
  5. 物語を実現する政治力
  6. 実践知を組織化する

脚注・出典

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脚注

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  1. ^ 全体の善のための倫理があってこその実践的な知であると考える。
  2. ^ 菅直人首相、枝野幸男官房長官
  3. ^ 当時内閣特別顧問。2011-12年に国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長
  4. ^ 首相は安倍晋三。話をした場である「イノベーション25」プロジェクト担当大臣は高市早苗

出典

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  1. ^ 高田三郎訳『ニコマコス倫理学』(岩波書店、1971年)
  2. ^ Mesotes,英語ではGolden Mean。
  3. ^ 黒川顧問からのメッセージ・第4回「イノベーティブな人」の条件、「フロネシス(Phronesis)」とはなにか?2006/12/11 首相官邸・イノベーション25
  4. ^ イノベーター育成- 知識創造人材を育てる-

参考文献

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