ブロモ酢酸エチル
ブロモ酢酸エチル | |
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ethyl 2-bromoacetate | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 105-36-2 |
PubChem | 7748 |
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特性 | |
化学式 | C4H7BrO2 |
モル質量 | 167 g mol−1 |
外観 | 無色から黄色の液体[1] |
密度 | 1.51 g/cm3 |
融点 |
−38 °C |
沸点 |
158 °C |
水への溶解度 | 不溶 |
危険性 | |
NFPA 704 | |
Rフレーズ | R26 R27 R28 |
Sフレーズ | S1 S2 S7 S9 S26 S45 |
引火点 | 47 °C |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ブロモ酢酸エチル (Ethyl bromoacetate) は、示性式 CH2BrCO2C2H5で表わされる化合物であり、ブロモ酢酸のエステルである。酢酸から 2ステップで合成される[2]。催涙性があり、フルーツ様の刺激臭がある[3]。強い毒性を持つアルキル化剤で、吸入すると致命的である。
応用
[編集]ブロモ酢酸エチルは、世界保健機構 (World Health Organization) により、暴動鎮圧剤としてリストされている。1912年、フランス警察によってこの目的で採用された[4]。フランス軍は1914年8月からドイツ軍に対してこのガスで満たされたライフル手榴弾 (grenades lacrymogènes) を使用したが[5]、ブロモ酢酸エチルは塩素の2倍の毒性があるにもかかわらず、ほとんど効果がなかった[5]。 戦争の初期には、イギリス軍は催涙ガス剤や二酸化硫黄を含むより有毒なガスを武器として使用していた[6]。その後、ドイツ軍はこれらの攻撃を利用して、1915年にドイツのコードWeisskreuz(White Cross)(注:毒ガス兵器の規格) の下で無臭の有毒ガスおよび化学兵器の着臭剤または警告剤としてのその後の使用を正当化した[7]。
有機合成においては、用途の広いアルキル化剤である。 その主な用途は、亜鉛と反応して亜鉛エノラートを形成するレフォルマトスキー反応である。 得られたBrZnCH2CO2Etは、カルボニル化合物と縮合してβ-ヒドロキシエステルを生成する。
また、他のいくつかの試薬を調製するための出発点でもある。 たとえば、関連するウィッティヒ試薬 (トリフェニルホスフィンとの反応によって調製) は、ベンズアルデヒドなどのカルボニル化合物からα,β-不飽和エステルを調製するために一般的に使用される[8] 。
出典
[編集]- ^ Chemicalland properties database (dead link 13 September 2018)
- ^ Natelson, S.; Gottfried, S. (1955). "Ethyl Bromoacetate". Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 3, p. 381
- ^ Criswell, DW; McClure, FL; Schaefer, R; Brower, KR (1980). “War gases as olfactory probes”. Science 210 (4468): 425–6. doi:10.1126/science.6968976. PMID 6968976.
- ^ Public health response to biological and chemical weapons, Chapter 3, Biological and Chemical agents, WHO Guidance]
- ^ a b Plaidoyer pour la guerre des gaz
- ^ Poison Gas and World War One
- ^ Heller, Charles E. (September 1984). “Chemical Warfare in World War I: The American Experience, 1917-1918”. Combat Studies Institute. 2007年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年8月2日閲覧。
- ^ A student lab procedure for the Wittig sequence shown, only using the related methyl ester.
関連項目
[編集]- ヨード酢酸エチル - 臭素の代わりに、臭素よりも脱離し易いヨウ素を持つ物質で、似た性質を示す。